「隙を与えない、高い完成度を持った作品」クワイエット・プレイス 破られた沈黙 nazionaleさんの映画レビュー(感想・評価)
隙を与えない、高い完成度を持った作品
脚本、構成、演出、演技とどれをとっても隙がない
まずこの世界の1日目をプロローグとして描くことで序盤から観客の目をグッと引き付けつつ、今作で主軸となるキリアン・マーフィとの関係性をそれとなく盛り込む
街全体がパニックに陥ったところから、緊迫感を引き立たせた状態で前作のラストシーンへと場面が転換し、今作がスタート
ここまででも非常にテンポ良くガッチリと掴まれたが、更にここから
息子の叫び声によって引き寄せてしまったクリーチャーを前作で明らかになった弱点を利用し、撃退するまでをスピーディに描いていくことで今作から見る人々にもどう対抗しするのかを提示している
分かりやすくかつ全体をシームレスに描いていることで観客は釘付けになったまま心が休まる瞬間がない
演出でいえばやはりこの作品のおいて最も重要な要素である音
この緩急の付け方が絶妙。耳の不自由な娘の視点になる途端に一切の音がなくなり無音となることで没入感と同時に緊張感を高め、正に自らがそこに投げ込まれるかのような感覚を味わわせる
前作では登場人物がほぼ台詞なし、ジェスチャーのみでやり取りすることで作品全体の緊迫感へ繋げていたが、今作はこの没入感をもって別のベクトルからスリルを体感させてくれた
とにかくモンスターパニック映画としては非常に完成度が高く、尚且父の思いを、託された補聴器を持って体現する娘や家族を守ろうと立ち上がる息子の成長というものもしっかりと描いており、感情移入という点でも余念がない
少し物足りないとするならラストでもう少し人間が逆襲していく様を見せても良かったのかなと
ただこれは受け手の想像に委ねる猶予ともとれ、それはそれで丁寧な作りとも言える
総じて続編としても単一の映画としても見て損のない作品
是非劇場で鑑賞して欲しいし、更に言えば是非IMAXで体感してもらいたい