配信開始日 2020年1月17日

「派手な見栄えと奇抜さだけで黒人市場に売込みを図った退屈な作品」グレイス 消えゆく幸せ 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0派手な見栄えと奇抜さだけで黒人市場に売込みを図った退屈な作品

2023年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

本作に登場するのは、被告人の中年女性もその夫も友人も、公選弁護人の若い女性もその夫の警官も職場の上司も、主要キャストは全員黒人であり、黒人マーケットを狙いに来ているものと想像する。

マーケット戦略性の強い作品は、えてして派手な見栄えとか奇抜さで勝負に来ることが多い。本作もそれが露骨で、被告人女性と若い男性との出会いから結婚までの甘い関係を延々とウンザリするくらい描いて、女性の幸福が頂点に達した後、突然、そこから真っ逆さまに突き落とす。まさに<派手な見栄え>を狙っているのだ。

ところが、弁護人女性が事件をきちんとフォローしてみると、意外にも死体のないことがわかる。そして、さらに訴訟に入って審理が進められていくと、意外や意外などんでん返しが…という<奇抜さ>が待っている。

この辺はヒッチコックじみていて悪くないのだが、いかんせん裁判シーンがチープでバカバカしい。前半で退屈なラブシーンに延々と費やした時間に比して、こんな重要な箇所を端折った監督の能力に疑問符が付く。
さらに最後のどんでん返しも、全然盛り上がらないで、「は、そう来たか」というだけの話に止まる。この辺は、見栄えと奇抜さを優先させ作品の良し悪しを後回しにしたんじゃないか、と勘繰りたくなる。

徒然草枕