TENET テネットのレビュー・感想・評価
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ノーラン監督 初めての失敗作
結論から申し上げると、「複数回観ないと分からない映画は失敗作」に尽きます。
天才が「俺って天才でしょ?」と繰り広げる映像の連鎖ですが、そのアイデアに「脚本」と「編集」が追いついていません。
冒頭からの伏線が回収されないストレスに多くの観客が襲われることでしょう。
映画と言う媒体は、上映する時間軸で監督が撮影するわけではないので、フィルムを切ったり繋いだりする「編集」作業が発生します。しかし、この際に「画角」や「フォーカスエリア」が異なるコマを繋げると観客は付いて来れません。非常にストレスを感じてしまうのです。
後半に繋がるネタも散りばめられているのですが、いかんせん各ショットの登場が一瞬であり、セリフも次々と流れて行くため、それを回収することが困難なんです。
傑作「カメラを止めるな」が伏線の回収を全て映像で行った素晴らしさを忘れてはいけません。
2度観劇したり、パンフレットを読んだり、解説サイトを閲覧しないと分からない映画は、独りよがりの作品なのです。
果たして、黒澤明が一度観るだけでは、分からない映画を作ったでしょうか?小津安二郎が画角が異なり、不快感を呼ぶ作品を作ったでしょうか?
ドストエフスキーや、村上春樹の難解とされる作品でも、一読して分からない作品は有りません。
名作とは一見、もしくは一読で感激し、再見、もしくは再読でさらにその感激が増すものです。
売れ始めた監督に予算を与えると、こうなるのでしょう。ドゥニ・ヴィルヌーブ監督でさえ、大傑作「メッセージ」の後、「ブレードランナー2049」でズッコケました。
しかし、ノーラン監督はまた戻って来てくれるでしょう。井上ひさしさんの言葉を彼に送りたいとおもいます。
「むずかしいものを、やさしく。それが私のテーマ」
TENET
このタイトルに尽きる。
一度は観賞された人ならある種どれだけ難解な映画だと感じても
この感覚は共有できるであろう。
私はこの映画の完成度の高さに、驚き、畏れ、観賞後の時間がだいぶ経った今でも涙が出る。
いまだ心の整理と内容の理解が追いついていない気もするが、鉄は熱いうちに。
まず、自分個人の率直な感想はさておき、映画自体のストーリーに目を向け書く。
TENET 回文だ。
逆行する時間という題材を手に、始まりと終わりが絶妙につながる。
不思議、わからない、いわゆる伏線を全て回収するようなストーリーだと思う。
回転する扉で、正の時間と負の時間を行き来できるというのが視覚的にわかりやすく、
近未来感を感じさせるようで、その上で飽きさせない。
印象となるカットを重要なところで散りばめ、見る側に飽きさせもしない。
(難しい題材の証拠だからこそだ。)
またCノーランだからこそできる映像表現も巧みなのは間違いない。
逆行する時間を意識することを作中ではっきりと見せ、見せ場となる最後の戦闘シーンをどちらの側か、見せようとする独りよがりでは無い作り方、本当に素晴らしい。
映画を見終わったあと、友情という部分で感動した人もいたかもしれない。
そういったところも独りよがりにならない、人に見せるものとして、エンターテイメントの範疇で作られている気がする。
作品で涙を誘ったのは、ここのシーンではあるのだが、それはそのシーンに対するものではなかった。
ここからが僕の感想。個人の独我的なものだ。
まずこの映画を見ていて感じていたのが、ニール(ロバート・パティンソン)と”男”(ジョン・デヴィッド・ワシントン)の妙な近さだ。
「初めて会った気がしない」感覚。なぜニールがこの”男”にTENETのことを簡単に漏らすことができる関係性なのか、バックボーンが全く説明されないまま話は進む。
そもそもこの”男”はCIAなのか?それともなんなのか。そもそも冒頭のシーンの「テスト」とは何のテストなのか。
頭から見ていると「スパイ映画」の相棒という感覚で、なぜか見れてしまう。
しかし、引っかかる。
そのまま作品は進み、時間の逆行する”システム”がわかり、印象的なカットとストーリーとともに
回文のごとく裏返しに見返すことができる。
まさにこのニールとの関係性の引っ掛かりは最後に回収される。
そして最後のシーン。最後のセリフ。
これが全てなのではないかと感じてしまった。
クリストファー・ノーランが何を考えているかはわからないが、この作品において「主役」は間違いなく”男”だ。
冒頭のテストも、全て男の中の世界だ。
だからこそ「起きてしまったことは仕方ない」という言葉の重みがわかる。
全て正対象に、美しく成り立っているのだ。
前から見ても、後ろから見ても、これは立派なストーリーとなる。
さらに言うなれば、映画というメディアは、大概のものが余韻を作るために
後半、特にラストシーンに考えさせる「何か」を用意する。
この映画で感じたのは、それが前にも後ろにもあるということだ。
後ろで考えるとするならば、正義的価値観で見れる。
しかし、前で考えるとすれば、畏怖だ。
男が主役の世界であるとするならば、もし最後に自分の命を守るために銃弾を当たらないようにした
つまり、自分の思うがままに世界を作り替えていたのならば、それは神の仕業だ。
この男一人が世界を作っているかのようにも見える。
これが「起きてしまったことは仕方ない」という言葉が違和感を感じる使い形で最後に出てくる要因ではないかと思ってしまった。
TENET この言葉には神話的要素もからむ言葉だ。
読み方を変えれば、神の名前とも読むことができるという回文。
つまり世界は見方を変えれば、何にでも変わる。
そういう世界もあるということなのか…
肩書が無い”男”が主役という部分が大きなミソだ。
どういう見方も客に提示させる。
ここが美しい。
人間の思考力の美しさを体現した映画だ。
これも個人的感覚だが、映画は全て個人的感覚をどう揺さぶるかが
その映画のある種「価値」でもあると思う。
映画に監督が長い年月をかけ、今の時期に放ったこの作品の意味。
考えるべきだ。これは全ての映像制作に関わる者が考えるべきだ。
考えなくてはいけないのだ。
さらに映画館という閉鎖的空間で見るという行為にも大事な部分があると思う。
もちろん、この映画はIMAX、少なくとも大きいスクリーンでないとその意味をなさない。
監督の本当の力が発揮されるのはスクリーンでだろう。
さらに閉鎖的空間で、時間も閉鎖し作品と向き合わさせるということも意味を持つ。
制作物である以上、個人の主観があるのはそうだ。事実と虚構、そのどちらのジャンルもそうだ。
しかし、やはり人は考える生き物。これを楽しむという時間を強いられるのも映画の良さではないのか。
ヒストリーという言葉の中にはストーリーという文字が入っている通り、全ての事実に対しても
振り返り、”お話”として楽しまれることがある。(これは悲惨な出来事であっても、語弊があるかもしれないが、時間を消化するものとして楽しまれていると考える。)
人間一人にも生から死までストーリーがある。そうも捉えられる。
このTENETという映画はそこも見据えて作られているのではないか。
「起こってしまったことは仕方がない」という言葉には負の感情も、その逆も感じる。
今の世の中だからこそだ。
全てはその人の捉え方次第。映画もそうだ。
最後に、涙が止まらなかった理由について。
正直、どうにも敵わないと思った。
美しすぎるし、これ以上のものは書けない。
(一応)脚本や台本を書く身としては、この上ない悔しさがあるとともに、
新しい、誰にも作れない、しかも圧倒的な力で見せきられたことに対して
心の中から涙が出た。映画ってこういうもん。そう自分は感じる。
僕は映画って「人生」だと思うんで。
音楽が…
早くまた見たい!
見終わってすぐに、もう一度頭から見直して答え合わせがしたいと思いました。
しかし、こんな事よく考えつきますね!
これからは、誰か逆動作してないか良く目を凝らして生活したいと思いました。(笑)
これ・・・まじか・・・
上映中もずっと頭を使う作品
難解さはインセプションやインターステラーなど比ではなく
「これは逆行だから、こうなるんだっけ?」
と、上映中もずっと考えておかなければ流れについていけない。
順行と逆行の交差に慣れ始めたところで、今度は主人公たちが過去に遡り始め、さらに難解さは増す。ここでも考えながら流れについていこうと試みるが、正直クライマックスの戦闘シーンはまだよく理解できていない。あと、なんであのインド人の女性は殺される必要があったんだっけな?「黒幕は俺だ」ってのも、たぶんこういうことかな?程度にしか理解してない
いろいろと考えた上でもう一度見直したいが、正直に言ってノーラン自身もこの映画を観た客の半分も内容を理解できると思ってないんじゃないだろうか。
1010
TENETって
前から読んでも後ろから読んでも「TEN=10」
と友人が言っていたのだけど、
10は特に意味が無いですかね。内容的には。
映画を見ながら、起こっている事象自体は分かるけれど、
このシーンは何の意味を持つのか判らなくてなくて、
???の連続で、
私ってそんなに頭が悪かっただろうか、と不安になりながら見る。
唯一、感情移入出来るのは、夫の支配から逃れて息子と安穏に暮らしたいキャットに、のみ。
主演の名のない男もニールも、今いち、言動理由が分からない。
唯一、受け取ったメッセージが序盤に出てくる白衣の科学者の
大切なのは、何をするのか、ではなく、
どうやるのかと話していた事。
何が行われているかじゃなく、どう、やっているのか観るって事なんでしょうか。
とりあえず、例に漏れず
ポカーン状態で終わってしまったけど、
解説サイトを読んだので、もう一度は見たいです。
やはりIMAXで。
なんとなくは理解できるがスッキリはしない
最後がオシャレ!!!???(笑)(笑)
ストーリーが良くわからない。(笑)(笑)
なんかあんまり映画に集中できなくて。(笑)
カーアクションシーンが多くて。(笑)(笑)
ロケ地が海外。(笑)
ノルウェーとかイタリアとか、デンマークとかおしゃれ。
最後の終わり方がおしゃれ。(笑)(笑)
なんか逆まわしが個人的には印象的で。(笑)
なんかとりあえず、かけておく感じで。(笑)(笑)
面白くなかった
逆回転!!!???
逆回転で。
なんか、ストーリーについていけませんでしたが。(笑)(笑)
とりあえず。
なんか、深夜のプールバーで流れてそうな。今後流れてそうな。(笑)(笑)
けっこうおしゃれな感じの。
ストーリーはわかりにくい、映画でした。
なんかおしゃれだったので。(笑)(笑)
快感の悪夢の世界へようこそ
2度観て、理解できたような
一度観ただけで理解できる人は少ないのではないかな。
最初は、色んなロケ地で撮影した上質なスパイ映画で始まるのですが、中盤以降、今作の肝である壮大な仕掛けが明らかにされると頭が混乱してくるのです。
「インセプション」を観たときに、こんなにややこしい映画がヒットするとは意外だなぁと思ったものですが、今作の難易度は数段上といった感じ。
とりあえずの感想としては、セリフと比べてBGMの音量が大き過ぎ。マイケル・ケインが痩せてさらに歳取ったなぁ。エリザベス・デビッキの役回りが「ナイト・マネージャー」そっくり(今作で彼女のファンになった方は、ナイト~と「コードネーム U.N.C.L.E.」をお勧め)。衣装がイイ。格闘シーンの動きがよく判らんといったところ。
明かな駄作であれば二度と観ないのですが、断片的に強い印象を残した場面が脳裏に浮かび、謎で頭がモヤモヤするので、再度、映画館へ。
時制の逆転が始まる辺りから頭が混乱し始めて、特に、理解できなかったクライマックスのアクションシーンも含めて、2回目だと大体理解できた気がします。
もう少し分かりやすくできなかったのかと思いつつも、ノーラン作品ファンであれば楽しめる作品かな。個人的には、ダンケルクよりは上だけど、インターステラーとインセプションの方が好きといったところです。
単純に楽しかった!!
もう一度観るしかない
シンプルな物語!新しい映画体験!
第三次大戦を防ぐスパイの主人公の目的は物語的には物凄くベーシック。
主人公が突き動かされる「爆弾」となるファムファタール役キャットとの「分不相応」の恋心とミッションの狭間で揺れ動く主人公の姿もベーシックなスパイもののセオリーではあるが、
彼らのビジュアルが背の高いモデルのような美しい女と背の低い黒人のスパイとして、そのつり合いの取れなさがまた新鮮な主人公とヒロインの形に思えた。
とにかく、キャットの固い氷の心を溶かした者にのみ見せる人懐っこい笑顔に惹きつけられた。
あの笑顔が主人公の「爆弾」となったのには納得だった。
時間やタイムパラドクスの仕掛けは、かなり、難解。。
それを紐解こうとしても、自分にはとうてい無理だし、紐解く必要もないように感じた。
必死に頭を回転させ、眼をかっぴらいて、そこでこれから起きる出来事や、過去に起きていた出来事を、目撃し、体験していくうちに、あの世界に必死に食らいついている感覚が、名もなき主人公と同化して、ぐるぐると引き込まれていく感覚になっていった。
そして映画が終わる頃には、現実に引き戻される。
きっと監督は全ての時間軸や難解な部分を紐解き、解釈した上でのカタルシスや作品の評価を期待していなかったのではないか?
難解な事象、時間軸を、凄いスピードで展開して、観客が咀嚼する時間を与えないまま、作品に引き込む時に起こる作用を狙っていたのではないだろうか。
なんて、都合の良い事を考えつつも、たしかに、ある時間のパラドクスの世界から生還した気持ちで、満足しながら、劇場を出たのであった。
ノーランの難解な挑戦状!凄すぎて震えた…ここ数年で一番興奮した映画!また観たい!
これは視聴者に対するノーランの挑戦状かと思うくらい内容が難しすぎて、1回で到底理解できない。でも決してつまらないワケではなく、2~3回は観たいって思わせてくれる濃厚な内容でした。最近のヒット作はアメコミとかディズニーとか単純で万人受けするようなモノが多かったので、これぐらい難解な映画が出ると興奮してしまいます!
パラレルワールドネタの映画は過去にもけっこうあったが、それが同時に進行する映像を観たのは初でとても斬新だと思いました。伏線回収もエグいくらいにすごくて、BGMもかなり煽ってくるので手に汗握るシーンが多々ありました。
あと、絶対最後に裏切ると思ってたロバート・パティンソンだったが、『最後の最後までイケメンかよ!』って思った。ラストのシーンは特に最高で、確実にファンが増えたと思います。トワイライトとは違って泥臭い役でかっこよかったです!
エリザベス・デビッキもラストの復讐劇が最高でした!母強しですね!
劇中で車内に拘束されてバックで爆走するシーンはマジで心臓停まるかってぐらいヒヤヒヤしました(^^;)
飛行機を実際に暴走させて倉庫に突っ込むシーンも『どれだけ金かかってんねん!』って感じで最高でした!
今回から映画館内の人数制限もなくなって、隙間なく席が埋まっててエンドロール後、明るくなってからみんなザワザワ。。。『すごかったー』とか『おもしろすぎ』とかこんなにみんながザワついた作品ってホント久しぶりかも?
とにもかくにもみなさんには観てほしい1作です。
追記----------------
誰かの考察読んだんですけど、ニールが実は未来から来たキャットの息子って説があったんですけど、マジですか?だとしたら2回目観る時に序盤から号泣しそうなんですけど😭
しかも、最後義理の父(未来では主人公とキャットが結婚してる?)の身代わりとなって頭撃ち抜かれるとか悲しすぎる。。。
たしかに、身内じゃないとあそこまで体張って自分を犠牲にはできなかったかも!?
物語はともかく、画から溢れ出るワクワクがすごい
本編を観終わった現時点で、おそらく私は物語の半分程度しか理解できていない。
しかし、映画開始から4分の3ほど終了した時点では8割〜9割は理解してなくて、「もういつ帰っても後悔しないぞ」って感じだった訳で、伏線回収と「お前だったのか!」の怒涛のラストのおかげで観終わった感じはそれほど悪くない。
ノーラン作品は個人的にあまり得意ではなく、今回も「まあ、気楽に眺めるくらいで丁度いいだろう」ってスタンスで臨んだのが正解だった様だ。
映画館で隣の男性客は、クライマックス前で帰っていった。
その時は「訳わかんないもんね。わかるよ、その気持ち」という感じだったが、おそらくあの人は多分2回目の観賞だったんだろう。伏線回収が始まるまでの流れを確認したんじゃないかな(ザックリ言って「折返して同じ道を帰ってくる映画」なので)。
私も気持ちは分かるし、これを2回以上観る価値を否定はしない。
ただまあ、少なくともこれだけ中身を理解できてない私が、それでも帰り道ではソコソコ満足している。
それだけで作品の意義は十分現れている。
内容はともかく、私に言わせると終始訳の分からないこの作戦、メインのキャラクターがお世辞にも「立ってる」と言い難いこの物語に対して、最後まで観客の興味を途切れさせかった『画』や『シーン』の視覚的な魅力。この凄さが際立っているなあ、と。
もちろん話題の「逆行」や「ジャンボジェット」もさることながら、冒頭のテロや、暗雲立ち込める中、無数の風車が突き出る海上での不穏なスタートなど、映像として「何かが始まるワクワク」に溢れていた。
そしてエリザベス・デビッキの美しさ。
観た人にはわかるはず。あの飛び込みのシーンだけで何杯でもご飯が食べられる。
ストーリーについて、いろいろ論じたい人はしてくれれば良い。
「面白いかどうかはよく分かんない。でも、最後までワクワクした」
私にとってはそういう作品だった。
難解な映画は何度も観る楽しみがある
とても主観的な解釈としての感想を綴っていきます。
◽️この映画の魅力の本質
ノーランの作品のほとんどにいえることだけど、「目眩のする悪夢」を生々しい迫力で具現化した映像がすばらしい。ときどき、ものすごい世界観の頭がぐしゃぐしゃになる混乱した夢を見るときがあるのだけど、これをそのまま映像化したら、とんでもなく面白いのに、と思うときがある。ノーランはまさにそれができる稀有な監督なのだと思う。
◽️この映画を理解するのに、物理学や論理的思考が必要か?
結論から言うと、必要ないと思う。この映画は感性で見る映画だ。ストーリーと設定が極めて難しいのに、それを分かりやすくしようとはしていない。これは意図的なものだと思う。
なぜなら、この映画の世界観はもとから矛盾しており、論理的に理解しようとすればするほど、理解できないようになっているから。
話を分かりやすくしてしまうと、その矛盾性が露骨になってしまい、話に現実味がなくなってしまう。
その根本的な原因は、我々は因果律によって物事を理解しているが、この世界観では因果律が崩壊しているから。
その一つの証拠が、「回転ドア」の効果。回転ドアを使うと逆行した時間軸に入ることができるが、このとき、同じ時間の中に同時に同じものが二つ存在してしまうことになる(だから主人公は自分自身と戦うことが可能になった)。
また、回転ドアをくぐった瞬間、くぐった者は未来の時間には消滅してしまうことになる。
これは、科学の基本的な原理である質量保存の法則やエネルギー保存の法則に反する。
時間の矢やエントロピー云々の話以前に、最も基本的なところで科学的には矛盾した世界観である、ということだ。
◽️この映画のテーマ
ゴヤといえば、「我が子を喰らうサトゥルヌス」である。サトゥルヌスは時間の神であるクロノスのことだから、きっとゴヤを出したのは意図的なものだろう。
自分の子供を喰らうおぞましいサトゥルヌス(クロノス)が象徴しているのは、「現代人を犠牲にしても自分たちだけが生き残ればいい、と考える浅ましい未来人」だろう。
現代と未来の戦争といえば、ミヒャエル・エンデの言葉を思い出す。エンデは確か、こんなようなことを言っていた(うろ覚えです)。「第三次世界大戦はすでに始まっている。それは時間の戦争であり、戦っているのは、現代人と未来人だ。現代人は常に優先にある。なぜなら、現在人は環境破壊などの形で常に未来人に攻撃をしかけられるが、未来人(我々の子孫)はその攻撃を防ぐ手段が無いから」
この映画の「第三次世界大戦」は、エンデの言葉が由来である可能性があるように思う。
TENETの未来人は、現代人を全滅させても自分たちが助かればいい、と考えている、本当に最悪なヤツらだが、それは実は僕ら自身ではないだろうか?
未来人は単に現代人のツケを払わされているだけで、だからこそ、現代人を犠牲にして何が悪い、と考えるようになったのでは?
TENETのタイトルの通り、善悪がひっくりかえる。
◽️この映画の神話性(寓話的象徴性)
インセプションやインターステラー同様に、ノーランのストーリーはSFの体裁をしていながら、とても神話的だと思う。そこが、理屈を超えて無意識の肝にズシンと響いて、その神話的意味を探っていきたくなる。
・自分自身との格闘…
・セイターやキャットが、個人的な人間的な感情で世界の命運を左右するような行動をしてしまう愚かなところ(まるでギリシャ神話の神の振る舞いのよう)
・無知は武器。人間の最大の武器は、その不完全性、無知であることにある…。
・9つのパーツを集めると世界が滅びる…
・この映画全体がはじめから最後まで一枚の絵物語の巻物のように因果を越えた物語として描かれていること
・随所に言葉遊びの要素が隠れていること(TENET、オペラなどラテン語の回文が元ネタ)
◽️各キャラの象徴するもの
それぞれのキャラも深く掘り下げ甲斐がある深みがある。それぞれ、未来に対する考え方が異なる。
特にセイターとニールは、死の運命に対する受け止め方が対比されているように思う。
セイターは、自分が死の運命から逃れられないのなら、全てを道連れにしようと考えた。そこには、結果だけが意味を持つ、自分自身だけが意味をもつ、という考え方が底にある。
対してニールは、「起きたことは仕方がない」が口癖の、達観した死生観を持っている。自分が死ぬ運命を知っていながら、自分のやるべきことを果たそうとする。運命を受け入れ、全うすること、言い換えれば、生き方、プロセスに意味を見出している。そして、生きる意味の中心に、「崇高な義務感」がある。このような態度をもつ人間は、とても気高く、美しいように思う。
キャットも面白い。自由に生きる他人に憧れを持つが、実はそれは未来の自分自身だった、というオチ。自分とはまるで正反対で、憧れの対象になるような人は、実は自分の未来像である、というようなことは実際ありそうに思う。
未来人の考え方は、懐古主義的といえようか。未来を建設的に改善していこうとするのではなく。過去を美しいものとし、過去に限りなく戻っていきたい、という幼児的な幻想。
とりあえず1回目観た感想を書き散らしてみた。もう一度観てみようと思うので、またそのとき新しく発見できるものがあるかもしれない。難解な映画は何度も観る楽しみがある。
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