「随分と手の込んだ意外性も有るストーリー展開で感心させられるが、感動には結びつかない」TENET テネット Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
随分と手の込んだ意外性も有るストーリー展開で感心させられるが、感動には結びつかない
ノーラン監督による2020年製作のアメリカ映画、原題:Tenet、配給:ワーナー・ブラザース映画。
過去と未来の同一人物が一映像内に共存し、何が起きているか理解するのが非常に難しかった。結局3回目鑑賞でようやく、主人公(ジョン・デビッド・ワシントン)やニールの生き方が何ともカッコ良い映画との印象を覚えた。ただインターステラーの様な「愛」が登場しなかったせいか感心はさせられたが、残念ながら感動は全ての視聴であまり覚えなかった。
とは言え、済んでしまったことは仕方がないと割り切るが、自らの死をおそらく知りながら、未来の主人公と出会い暗い未来を変えようと今を懸命に闘うニール(ロバート・パティンソンが好演)の姿には、ノーランの主張したい様に思える、一人一人のこの世界の主人公としての人類の未来への真摯な今の対応、と絡んでくるせいか、ぐっとくるものがあった。
007映画の方向性での迫力を追求してか、本物のジェット戦闘機まで登場させ建物にぶつけて炎上させる演出には驚かされたが、スピード感に乏しいせいか自分の感性的にはあまり迫力がある映像にはなっておらず、勿体ないと思ってしまった。また悪役セイター(ケネス・ブラナー)を妻(エリザベス・デビッキ)が撃ち殺し海へ投げ込むシーンでの海へ落ちていく人間の人形感もいただけなかった。
過去の自分との格闘や、逆走車とのカーチェイス、逆向きに進む戦争破壊シーン、実はこういった映像を見せたいがための映画だった気もするが、見ている方は目新しいアイデアと感心はするものの、従来のノーラン監督らしい映像の美しさには欠け、あまり心は動かされなかった。随分と手の込んだ脚本で、謎解きの魅力は確かにあり(ただ見逃しがあるかもしれないが、セイターを殺しても世界が破滅にならなかった理由付けがクリアとなっていない気がしている)、イントロ映像のスピード感、主人公を助ける謎の人物提示とそのソリューション、及びヒロイン(デビッキ)による夫殺しや主人公によるヒロインの命救済物語の意外性は見事ではあったが。
監督クリストファー・ノーラン、製作エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン、製作総指揮トーマス・ヘイスリップ、脚本クリストファー・ノーラン、撮影ホイテ・バン・ホイテマ、美術ネイサン・クロウリー、衣装ジェフリー・カーランド、編集ジェニファー・レイム、音楽ルドウィグ・ゴランソン、主題歌トラビス・スコット、視覚効果監修アンドリュー・ジャクソン。
出演ジョン・デビッド・ワシントン(名もなき男)、ロバート・パティンソン(ニール)、
エリザベス・デビッキ(キャット)、ケネス・ブラナー(セイター)、ディンプル・カパディア(プリヤ)、アーロン・テイラー=ジョンソン(アイヴス)、ヒメーシュ・パテル(マヒア)、クレマンス・ポエジー(バーバラ)、マイケル・ケイン(クロスビー)。