「説明不足を楽しむファンタジー映画(ハードSFではない)」TENET テネット LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
説明不足を楽しむファンタジー映画(ハードSFではない)
やっと時間がとれて、公開3週目に観ることができました。
間違いなく、観て損しない快作でした。
前評判で囁かれていた、小難しさも感じませんでした。
「時間を逆走できたらどうなる?」がテーマのワン・アイディアSF。
主人公(Protagonist)が、対消滅のリスクを伴いながら、過去の自分と格闘するシーンは、めっちゃハラハラしました。
キャット(Kat)が羨んできた女性の正体が明かされる終盤も、お洒落でした。
ただ、ミステリなら本格派、SFならハードな展開を期待しちゃう性としては、結構大事な設定の説明不足ぶりには、少し戸惑いました。
2点に分けて記載します。
1. 回転ドアの使用タイミング
世界観のルール説明がほぼない本作ですが、その詳細が次第に明かされていく(忖度していく?)過程もサスペンス感を高めることに貢献しています。
ただ、回転ドアを使って時間を逆行している最中は、外気で呼吸できず、動きも言葉も逆行してしまう事は明示されています。
ですが、1度回転ドアを通った主人公やキャットが、野外でマスクを付けず、過去の住人と普通の会話してるシーンがいきなり展開する。
どう考えても、再び回転ドアを使って、時の流れを戻しているんでしょうが、その説明が言葉としても画としても全く無い。
「分かるよね」ってことなんだろうけど、1度でいいから、その説明が欲しかったです。
そうとしか忖度しようがないので省略したのかもしれないけど、世界観の厳密なルールを知らないこちらとしては、今遡ってないの? それても会話してる相手も遡りちゅうなの? と困惑させられました。
2. 空気の供給源の謎
前述の通り、回転ドアを通り、時間を逆行してう最中は、外気で呼吸できないことは、明示されています。
これは、通常なら肺胞で血液に溶ける酸素が、分子運動が真逆の血液と酸素では噛み合わないからでしょう。
なので、マスクが必要。
あるいは、密閉された室内には、時間逆行してる空気が充満しているようで、マスク無しでも大丈夫?
ただ、その空気はどうやって供給されるの?
空気も回転ドアを通せば、呼吸につかえるでしょう。
ただ、何日も何週間も逆行しつづけるなら、相当量の酸素が必要。
それに最も胡散臭いのは、マスクこそつけるけど、大きな酸素ボンベを背負ってる気配がないこと。
ってことは、これまた都合よく忖度すると、おそらく空気や酸素だけは、回転ドアなしで時間を逆行させらるフィルターのようなものがあり、しかもその装置がめっちゃコンパクトだということ。
これも、できれば1カットでいいから説明が欲しかったです。
ちゃちいマスクつけときゃそれっぽいでしょという感じの処理が、若干情けなかったです。
と、杉下右京のように細かい事が気なる悪い癖がある自分は多少困惑しましたが、そこら辺は"Don't think! Feel."の精神で、充分愉しめます。
それ以上に問題だったのは、直前に「ナイル殺人事件」のテザーがながれたので、序盤 Kenneth Branagh がポワロにしか見えなかったことです。