「観る人を選ぶ…」TENET テネット トーリさんの映画レビュー(感想・評価)
観る人を選ぶ…
予告編映像から時間移動アクションもの
であろうという認識のみの状態で視聴。
どういう作品歴のある監督か知ってて観れば
すごい作品だと評価するのだろうが、知らな
いで観た場合確かにすごいという感想は持つ
かも知れないが、やはり観る人を選ぶのでは
ないかと個人的には思う。
最後まで観てからもう一度観れば多分一回目
じゃ気づけなかった仕掛けが一杯なのではと
思うが、繰り返し観たいとまでは思わなかった。
こまかしい説明抜きで映像で表現しようとする
姿勢と完成度については評価するが、何らかの
カタルシスを求めて観る映画ではない。
前半は時間逆行する銃弾とか人物の描写がある
が恐らくいまいち腑に落ちないことだろう。
後半になってやっと意味がある程度わかるので、
早い段階で考えるな感じろに徹して観るように
するのが吉かと思う。
役者の演技、BGM(SE) 、アクション等は普通
に良演だったと思われる。
(以下ネタバレあり あまりレビューになって
ないと思うので、長文嫌いな方は読み飛ばし推奨)
主人公に余計な情報を与えないため組織に
ついてあまり語られないせいで、後半~終盤
に突入部隊が多数登場した時はこれは一体
どこの勢力だと思ってしまった。
ニールもただの主人公と親しい情報屋か何か
かと思っていたらミッションにずーっと一緒
に行動しているので、中盤までいってやっと
相棒ポジションなんだと気づいた。
プリヤもテイラー率いる部隊も全部TENET を
知る組織の者だという説明は都合上できなか
ったのはわかるが、そのせいで「何これ」感
が強かった。世界の危機だと言っていても
具体的に時間逆行する現象や武器のせいで
この時点の社会に混乱や被害が起きている
わけではないから、いかにもな連中がいかに
も思わせぶりな争いをやってる、という印象
を受けてしまった。
回転ドアと呼ばれる時間逆行装置であるが、
通常の時間が流れる世界に逆行中の存在を
重ねたらどういう絵面になるのかを見せたか
っただけとは思わないが、あとあと考えても
逆行モードの意味がいまいち解らない。
いや、単に過去改変によって未来をどうこう
ならわかり易いが、作中の説明によれば
過去を変えても未来に影響しないという説
である。しかしパラレルワールド化するの
かというとそこはあまり言及されておらず、
時間を逆転させる現象は世界全てを消滅さ
せることにつながる(装置を送りつけた未来
の何者かはそれが目的)、だからそれを回避
しなければならないという話だが、
逆再生や逆行演技によって新しい何かを見せ
てくれたような部分もあるが、酸素ボンベを
つけての逆行モードでしか過去にいけないの
かと思ったら普通に過去へのタイムトラベル
もしており(セイターの自殺を遅らせるキャ
ットやスタルスク12を襲撃する部隊など)、
なら、逆行モードってわざわざする意味は
どこにあったのだろうか。あとあと考えても
そこが一番腑に落ちなかった。
撃たれたキャットの致命傷を回復させる為に
逆行を使ったシーンもあったが、それで逆行
の定義が余計分からなくなった。逆行してる
人間は単にある時点の時間軸で逆送りの時間
の流れをするわけだが、その人間単体の時間
も過去の状態に流れるの?記憶とかはそのまま
なのに?
敵役であるセイターが未来から選ばれたと思
われる理由が想像できる描写はあるが、結局の
所個人的感情から世界を巻き添えにしようと
いうわけで、その点、急にスケールが小さく感
じた。
キャット役のエリザベス・デビッキさんの
長身をはじめて観たがインパクトがあった。
美しい。
主人公が世界の破滅を回避するための組織の
黒幕だったと明かされるが、作中の冒頭で
主人公はその時点ではそうとは知らないただの
組織構成員の一人であり、結末へ導くために
余計な情報を与えられず行動していった結果、
自身が黒幕になると気付き、そこからさらに
未来、再び過去へ指令を送る…で合っている
のだろうか。このループに入る前の最初は
どこにあったのだろうか。セイターに装置を
送ったであろう未来の何者かとは別にその事
を認知し破滅を防ぐために動いた「存在」が
なければこのシナリオは成立しないように思
うが、作中では語られていそうにないしそも
そもタイムパラドックスの部分は深読みしたら
負けなんだろうか・・・。