劇場公開日 2020年9月18日

「「ジョーカー」の対極にある様な次世代の作品。」TENET テネット ムンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「ジョーカー」の対極にある様な次世代の作品。

2020年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「ジョーカー」と同じように、単純明快で観て直ぐ面白い!という様な作品ではない。
何度も観返して、発見や理解を深める作品としては共通している。
が、
「ジョーカー」は極めて哲学的で明確な答えが無く、視聴者にゆだねられる部分が大きいのに対し、
「TENET」は、ほぼすべてに明確な答えがあり、極めて数学的になっている。(ストーリー的にも)
ただし、その『問い』(或いは伏線と呼ぶ)の量が極めて膨大であり、
通常の映画であればほんの数点で解り易く強調されているものが、最初から最後まで通してほぼ全てのシーンにおいて張り巡らされている為、よほど頭のつくりが良くない限りは、
1回の視聴ではとても全て理解できないものとなっている。

出演者は全て、「華」は無いが「艶」があるという感じで、やり過ぎな部分も無く極めて自然であり、
そういった部分が作品のリアリティを高めている様に思える。
また、心理描写はあまり強くなく、そういった部分を求める人にとっては、楽しめる作品ではないだろう。

兎にも角にも、只々、情報量が多く、
作品の本質を楽しむ為には、あらゆるシーンを全て憶えておく必要があり、
単純に見た目で派手さを感じるアクション部分であっても、
並行して発生している事象を脳内で噛み砕きながら観る格好になる為、
「難しい事」を考えるのが嫌いな人間にとっては、史上最低の作品と言える。
逆に、『解』が得られること、脳をグルグルと廻す事に快感を覚える人間にとっては、
史上最高の作品である。

私はごく一般人なので、理解し納得するまで、
9/19~21日まで毎日1回ずつ、計3回映画館に足を運んだ。
この作品は一般人が観る場合、
シークバーのある動画にて、気になる部分を何度も観返すのが前提となっている、
映画としては「次世代」のモノだと思う。

もし、普通の方が、
この映画を1回の視聴で終わらせたいと思った場合、
ネタバレを気にせず先にパンフレットを購入し、
半ば暗記する程に読みこんだ後に観ることをオススメします。

ムン