「これは悪の本質を表現した青春映画」ロード・オブ・カオス イルカ🐬【映画考察】さんの映画レビュー(感想・評価)
これは悪の本質を表現した青春映画
ヴァルグの「大義のためにやるのか、目立ちたいからやるのかどっちかにしろ」というセリフがこの映画のテーマだと思われますね。
有名になるために教会を燃やした主人公ユーロニモスと、自分は大義のためにやっていると「思いこんでる」ヴァルグ。
同じくヴァルグの「悪魔に魂を売るなと言ったろ?」というセリフ。
ヴァルグにとって悪魔に魂を売ることとは、有名になりたいという自分の欲求を、他人を犠牲にすることで満たすこと。一方ヴァルグは、世界を良い方向に変えるには、多少の犠牲はやむおえないという考えを持っています。ヴァルグが理解できていないのは、二つは実は同じだということ。
生きていれば、理由をつけて自分を正当化したい場面はありますが、それだと人に迷惑をかけてしまうこともある。しかし自分や家族を守るために、そうせざるを得ない場合もあります。
日常に落とし込むと、ファミレスからの帰り、傘立てに自分のビニール傘がなかったので他の人のビニール傘をさして帰った。みたいなことでしょうか?笑
自分を守るために小さな悪は必要なのかもしれません。この悪の肯定こそが、ブラックメタルという音楽の魅力とも言えるでしょう。
最後ヴァルグがユーロニモスを殺したのはおそらく単なる意地の張り合いですね。
自分のいないところで「殺してやる」と言われていたことを聞いて「もういいわあいつ(怒)」となってしまっただけだと思います。映画なので一線は超えているものの、喧嘩の発端はかなりどうでもいいこと。言った本人は本音ではないしあまり覚えてない。友達とか恋人との喧嘩ってこんな感じですよね笑
尖りたい若者たちの青春映画であると同時に、大義という「ハッタリ」に隠れた自我、悪の本質を見事に表現している作品です!