「女王は、愛を知らず。」罪と女王 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
女王は、愛を知らず。
『罪と女王』
邦題の勝利ですね。インパクトがあります。
デンマークの題名はただの『女王』
インテリ女性弁護士の身勝手に戦慄する映画でした。
2019年。デンマーク映画。
監督も女性で、メイ・エル・トーキー。
デンマーク国内の賞を総なめ。
サンダンス映画祭の観客賞及びアカデミー賞外国語映画賞デンマーク代表に選出された。
(近年は日本でも、女性監督の方が、性描写が過激になる傾向があります)
(それは自我を解放して、欲望を隠さなくなった女達の姿と重なるのです)
(でも、私は、甘くても、ロマンスドールや、REDの世界が好き)
ともかく主人公のアンネには全くの共感を感じない映画だった。
デンマークに住む弁護士のアンネ(トリーヌ・ディルホム)と医師のペーター(マグヌス・クレッペル)は、瀟洒な邸宅に双子の可愛い娘と暮らしていた。
ある日、ペーターの先妻の息子グスタフ(グスタフ・リン)をスウェーデンから引き取り、
同居することになる。
グスタフは17歳で、素行不良で退校になったのだった。
不機嫌で反抗的で家庭に馴染まないグスタフだったが、ある日、盗難事件が起こる。
その事件をキッカケにアンネとグスタフは親密になるのだ。
女も40代後半にもなると、容色が衰える。
アンネがグスタフのガールフレンドとの情事に興奮して、
垂れた乳房の裸身を鏡で確認するシーンは、「まだまだ捨てたもんじゃない」
「もう、ひと花咲かすわ!!」なのかしら?
唐突にアンネはグスタフを誘惑するのだ。
アンネの大胆な欲望。
カメラはモザイクを入れながらも、かなりの衝撃度。
トリーヌ・ディルホムの女優根性に恐れ入る。
夫の留守。娘の寝込んだ深夜。自宅で関係を持つアンヌには道徳心のカケラもない。
あるのは欲望・・・北欧の夏を惜しむように激しく燃えるアンネ。
ふたりの関係を妹のリナに気付かれたアンネは一転して、グスタフへの裏切りとも言えるある選択をする。
アンネの仕事は虐待やレイプ、暴力を受けた少年・少女を守る弁護士です。
仕事では人権を守る熱心な弁護士のアンネが、現実の生活では少年の人権を守っているでしょうか?
人間の二面性に驚きます。
非道とエゴ、非情が浮かび上がります。
収入の良い医師の夫。パートナー弁護士と事務所を経営する知的な才媛。
可愛いふたりの娘。
完璧な生活。完璧な幸せ。完璧な女性。
足りないのは「若さ」
そして欲望を満足させる、有り余る精力を持つ若者とのセックス。
自由奔放なセックスを愉しみ、少年の心と身体を弄んだ代償。
アンヌは生涯向き合うことでしょう。
人間の心の心奥に迫る大人な映画でした。
最初のシーン。
白樺の林を犬と散歩するアンネ。
家に帰ると不機嫌な夫は仕事でスウェーデンへ向かうと言う。
何か不吉な予感がする。
そのシーンを、もう一度ラストに持ってくる。
不穏な空気の意味が最後に解けます。