「【”権力を持つ女性が犯した過ち” その背景には、北欧の天候、風土が深く関与していると思われた作品。年上の女性の欲望に巻き込まれた、ある若き青年の悲劇を描き出した作品でもある。】」罪と女王 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”権力を持つ女性が犯した過ち” その背景には、北欧の天候、風土が深く関与していると思われた作品。年上の女性の欲望に巻き込まれた、ある若き青年の悲劇を描き出した作品でもある。】
ー北欧の夏が短い事、日照時間の短さに起因する問題が多い事は、良く知られている所である。そのために彼らは、夏になると、年齢に関係なく、水着になり(場合によっては全裸)、日光を全身に浴びるのである。-
・アンネは児童保護の弁護士と思われる。夫ペーターもインテリの様に見える。双子の娘と4人で瀟洒な建物で優雅な生活を営んでいる。
ある日、ペーターと前妻リナとの間に生れたグスタフが学校で問題を起こしたために、彼らと同居することに・・。
アンネは始め、否定的な態度を取っていたが・・。
■印象的なシーン
1.グスタフが連れてきたGirl friendと会ったアンネ。そして、彼らの喘ぎ声が聞こえてくる中、彼女は衣服を脱ぎ、鏡に自らの肢体をいくつものポーズを取って”女としての魅力”を確認するシーン。
-空きあらば・・・感が満々である・・。怖いなあ・・。-
2.短い夏を謳歌するアンネ達の燥いだ姿。
友人たちとテラスでバーベキューをして寛いでいたが、ワインが回ったのか、アンネは音楽のボリュームを上げ、舞い踊る。そして、客と夫を置いてグスタフとバーに出かけてしまう・・。
ーこのテラスのシーンで流れるのが、「SOFT CELL」のファーストアルバム”Non-Stop Erotic Cabaret"に収められている”Tainted Love"である。
デンマーク&スウェーデン映画でこの曲が聞けるとは思わなかったし、マッチング度合いに驚いた・・。
酔ったアンネの中の規律、規範の”箍”が外れた瞬間が良く分かるシーンである。-
<だが、北欧では”エレクトロ・ポップ”が人気である事を思い出す。解散してしまったが、「Gangway」は好んで聞いていた・・。特に、ファーストアルバム”Sitting in the Park"は名盤である。>
3.驚いたシーン
・アンネを演じた”あのデンマークが誇る”トリーヌ・ディルホムとグスタフとの数々の情交シーン。
あんなに激しいシーンをデンマークの女優さんは演じるんだ・・。
お国柄かもしれないが、日本では考えられない。
(否定しているわけでは、勿論ない。凄い女優魂であるという事が言いたいのである。)
4.アンネが頑なにグスタフとの関係を否定する数々のシーン
・夏はあっという間に過ぎる。
そして、グスタフはアンネにまとわりつくが(そして、そのシーンをグスタフの母リナに目撃される・・。)、”盛り”の時期を過ぎたアンナはあの夏の出来事を全否定する。
ーグスタフの困惑がよく分かる。
アンネも悲愴な顔をして後悔しているふりをするが・・。
”真実を言え!”というグスタフに対し、余りに酷い仕打ちをするアンネ・・。
そして・・冬が来て、悲劇は起きた・・。-
<アンネの夫、ペーターはアンネの口を激しく塞ぐシーンを観ると、途中から全て見通していたのであろう。
冒頭の、北欧の曇り空の下の針葉樹林を逆さに撮影したシーンで、今作品の暗い行く末を暗示させ、ラストで同じシーンを繰り返すなど、今作でのメイ・エル・トーキー監督の手腕には驚く。
ある女性が、”短き一夏の禁断の恋を愉しみ”、季節が過ぎれば、自分の家庭、社会的地位を守るために、欲望を満たさせた少年に、死の苦しみを与えることも厭わない姿に戦慄した作品。>
■蛇足
私が勤める会社でも、北欧の会社には、基本的には日本人は出向させない。
表向きの理由は現地の方を主要ポストにつけ、自立させる・・、となっているが、本当は違う。
日本人は彼の地の、余りの日照時間の短さのため、精神に異常を来す者が多いからである・・。
<2020年9月5日 刈谷日劇にて鑑賞>