「過去作観てない人は観てはダメ」PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
過去作観てない人は観てはダメ
まず最初に書かなければいけないことは、この作品は過去のサイコパスシリーズを全部観ていないと楽しめないだろうことだ。少なくともテレビ版の1期と3期だけは観ていないと意味不明だと思う。
基本的に低評価の人は過去作を観ていないか、観ていても理解できていない人だ。知っておかなければならない基本情報は異様に多い。
そういった意味で映画としてはちょっとあれだけど、マーベルシネマテイックユニバースのアベンジャーズも似たようなものなので、過去作品が配信などで観やすくなった今の時代には、個人的に不満ではあるけれどアリなのかなとも思う。
内容は、テレビ版3期の完全な続き。
副題にもなっている、ファーストインスペクターことアズサワコウイチとの攻防がメインだ。
まだ二人残っているコングレスマンやビフロストまで届きそうにない雰囲気で進むが、そこまでちゃんとたどり着く。これはちょっと驚いたね。まあサイコパスらしいといえばらしい。
サイコパスという作品は、表面的にやっていることは別にして、基本的には物語の核となるシビュラシステムがより良く進化していく過程の物語だ。
この「より良く」というのが本当にいいのかどうか、そして、シビュラの構造からくるただのAIとは違う人間臭さ、つまり理論的でありながら感情的でもある、その辺の危うさが最大の魅力だ。
人間たちがわちゃわちゃやっている裏で、シビュラが信じるより良い社会のためと、シビュラ自身が安泰となるため、外堀を埋めていく。
シビュラの是非を決めるのは結局人間だ。この世界でも民主主義は生きているからね。
元々のサイコパス世界は徹底管理されたある種のディストピアであるわけだから、この世界がユートピアに見えるようにするのがシビュラの目的でもある。
なんだかシビュラが悪いことしている印象を受けるが、良いか悪いか判断しかねるところも面白さの理由だろう。
そもそも本当は、シビュラシステム導入の際に徹底管理社会に対する抵抗があり、導入見送りとなるはずなんだが、作品内ではもう導入されてしまっているからね。
こういうあり得ない設定をさも当たり前のようにやれちゃうところがSFアニメのいいところだ。
テレビ版3期からの総括として、今回のストーリーは、誤用ではない確信犯的行動は色相が濁らないというものだった。平たく言えばアズサワが言う「目的が手段を正当化する」ってやつだね。
軍人や警察官の色相が濁らないことや、クニヅカのように色相が回復する者など、ひいてはシビュラ管理社会での人間の生き方についてだった。
つまりこれはシビュラがあってもなくても現実の今と変わらないんじゃないか?という話でもある。
明らかにまだ続きがあるようだ。シビュラの行く末がこれから楽しみ。
