「周りのプロがちゃんと指摘するべき」映画 えんとつ町のプペル chao2sukeさんの映画レビュー(感想・評価)
周りのプロがちゃんと指摘するべき
メッセージはくどいほど伝わったし、各シーンで何をやりたいかもわかる。でも全体通してのまとまりが余りにも無さすぎて大人は冷めてしまう、そんな映画でした。西野大先生が今まで見た映画やドラマの良かった所を集めました、そんな構成。
具体的にはラピュタ、ナウシカ、ムーラン、座頭市、モアナ、空飛ぶ家、陽気なギャング辺りの名シーンをオムニバスで繋いだような作品でした。
シーンによって作画のタッチやエフェクトにばらつきがあったり、MAが甘くて聴かせなきゃいけないセリフの音量が小さかったり、ストレートで寄らなきゃいけないカメラワークがぶれていたり、今まで3DCGで作っていた背景が突然美術絵になったり、細かい違和感はたくさんありましたが、致命的なのは芸人さんが仕切っているとは思えないほどテンポや間が悪いこと。冒頭のコメディシーンやセリフとカットのタイミングなど、畳み掛けないといけないシーンでこの間の悪さが足を引っ張ってしまった感じがしました。
また、劇中歌を挿入する時に効果音を全カットしたり、立川志の輔のナレーションが突然講談師風になったりと、各所に配慮した結果まとまりが無くなっている点も残念なところ。
恐らく監督や撮影などのアニメーション、映画のプロは解っていたのでは無いでしょうか。お互いに遠慮した結果、中途半端な作品になってしまったのは製作費を鑑みると惜しい事をしたな、と思います。
ストーリーにも穴が多く、西野先生の想いが薄いキャラや場面にそれが特に現れている印象です。
中央銀行から逃れる為に街を煙で覆ったのであれば、晴れれば当然見つかる危険が高まるわけで、そのリスクと星を見せるという主人公の純粋な想いを汲んで葛藤するのが異端審査会のトップ2人の役割であり、物語に深みを与える重要なパーツになるはずなのですが、革命家である西野先生は残念ながらその部分をまるっと無視して勧善懲悪のハッピーエンドにしてしまったので、大人が見るとご都合主義に見えてしまう。ここも脚本に指摘を入れるプロがいなかったのだろうな、と感じます。
全体的によく言えば惜しい、悪く言えば中途半端です。興行としてはスマッシュヒットしたそうなので、あと2作くらい撮れば良くなっていくのでは無いかと思います。