「信じる根拠の薄っぺらい物語世界」映画 えんとつ町のプペル パブローさんの映画レビュー(感想・評価)
信じる根拠の薄っぺらい物語世界
星ひとつあるのは、映像演出と展開の盛り込み方が隙なく飽きのこない作り込みになっていたところです。
冒頭の芦田愛菜さんのモノローグがとてもよい声で素晴らしく、4℃さんらしい趣向を凝らしたアニメーションが楽しかった。
ただ、そもそもの物語に違和感がいくつもあって、どうも隙や矛盾の穴がボコボコ空いている欠陥住宅のような居心地で、たいへんつまらなかった。
具体的いうと、
まず冒頭のルビッチがプペルに「友だちになって下さい」とお願いするところ。
いくら友だちがいないとはいえ、さきほどまで「くさい」「バケモノ」と吐き捨てていた相手に、友だちになってほしいという気持ちに急になるものだろうか?
また、
外が見えないこの世界において、「煙の向こうに外の世界がある」というブルーノの主張の根拠。
たまたま煙の合間に星が見えた経験と、場末のバーでベラベラとよくしゃべる胡散臭い男からあやしい黒歴史を聞いたというだけで、行動を起こせるだろうか?
裏付けを得るために調査をしたりとかも特になく、ただ紙芝居を繰り返している父親を見て、息子は外の世界を信じられるようになるだろうか??
母親は応援したくなるだろうか……?
そうやって無根拠で主張し闘う彼らを見て、街の人々は彼らを助けたい、いっしょに闘いたいと思うんだろうか???
そもそもの黒歴史もどうも妙だ。
強大な銀行組織が治める資本主義社会から逃げ出し、彼らと隔絶し、自国民に外を見せないために煙を焚き続けるえんとつの国らしいが、
煙を炊き続けなきゃいけないとんでもないコストがついているのに、おまけにどうやらろくに作物も育たない世界のようだが、喘息なりかけの国民をどうやって食わせているんだ?
渋谷をモチーフにしたらしいスクランブル交差点はあるのに、他の人々の仕事ぶり、生活程度、食文化がまったく見えてこない。
腐る通貨?それうまみあるの?
スタッフロールで暗示されているように、たとえそこから外の世界へ船出したとしよう。
でもそこは君たちの先祖が逃げ出してきた犯罪だらけのディストピアだろう?
そこへ向かうのが希望みたいな終わり方は、あまりに無防備で、無根拠なポジティブマインドだ。
国民全員がブルーノ化したらしい。
こんな、作者のメッセージに都合のよいところだけつくりあげた、ご都合主義の物語世界は、何とも薄っぺらい。
おまけに涙目たっぷりで子役が訴えれば観客が感動して泣いてくれると制作サイドが思ってたら、
それはあまりに俺らをバカにしているよ。
4℃さんが作っているからコロナでつまらん元旦に映画館へきたのに、
こんなもんじゃ、せいぜいレンタルDVDなってから家で寝ながら見ればよかったと、ガッカリです。
もうよっぽど興味が惹かれなければ、この制作編成では見ないよ!