「思い出の数だけ人は大きくなる」恐竜が教えてくれたこと KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
思い出の数だけ人は大きくなる
とてもハートフルな作品だった。児童文学作品なだけあって子供から大人まで幅広い年齢の人の心を掴む作品ではないかと感じた。
主人公の少年サムは家族とバカンスでオランダの島で過ごす事になった。
そこでサムは島に住むテスに恋をする。テスは生き別れた父を、自分の存在を隠し島に迎える。そこでテスは父との関係修復の為に動き出す。サムもまた彼女のために協力する。
サムもテスも家庭環境は違えど日頃は人との関わりから離れて孤立した生活を送っていた。
その事もあってか中々テスと父との修復にうまくいかない。深く関わろうと積極的に働きかければ返って自分が傷ついてしまう結果となってしまう。
サムもテスも一人で過ごす事こそが幸せなんだと諦めかけた時サムは海で命を落とす事故に遭遇しかけるも、島に住む老人に助けて貰う。
そしてサムは彼から大切な思い出こそ一生の幸せなんだと学ぶ。
最後はテスも父との関係が修復し、サムもまた家族との愛を理解し、みんなの思い出が一つとなる形で終わった。
シンプルな描写が続くがシンプルだからこそ見やすく心打たれる作品は過去にたくさんある。この作品もまたそのような作品の一つだったと思う。
現代社会は便利が故に人と関わりがなく孤立した生活を送っていても欲求を満たされることは大いにあると思う。
誰もが人との関わりは幸せな事だと分かっていても誤った人や誤った関わり方をすれば相手を傷つけ、それ以上に自分が傷つく事もある。
またこの先、形とならない関係は無駄と決め付け関わりを絶ってしまう選択をする事もあるのではないか。
この作品を見ていると、傷つくことを恐れて幸福を逃すのはとても不幸な事なんだ。
たとえこの先、交じり合う相手じゃなかったにしても、その時の思い出は頭に、心に一生残り人を大きくしてくれる大切なアイテムなんだと改めて感じさせてくれる。
サムもテスも父との関係を修復した事によって大きく成長し、一生の思い出となりこれからの彼らの人生を豊かにする一つの要素となったに違いない。
同時にもしも彼らが最後テスの父との関係修復から逃げた選択をすれば、逆にこれからの彼らの人生のトラウマとなり、大事な選択を迫られた際に臆病となり貧しい人生を送る悪い要素になりかねていたかもしれない。
一つの出来事が選択によって真逆の結果になりかねない。だからこそ失敗を恐れるのではなく幸せを掴みにいくことが大切なんだと強いメッセージを受け取ることができた。
自分に置き換えても孤独を感じる事はまだそこまで多くはないが、年々人との交友関係は狭くなってはいる。
そこにはなるべく有益な、そしてこの先形に残る相手としか関わろうとしなくなってきてるのであろう。
上にも書いた通り目先の事に捉われず、今を、そして一瞬一瞬を大切にし、沢山の大切な思い出を残す事が人を成長させてくれるんだと。その思い出の数だけ人は大きくなっていくんだ。そんな事を感じながら温かい気持ちで劇場を後にする事ができた。