「巨大企業の卑劣な隠蔽に戦慄!権力や金の不文律に圧殺される市民は悲惨極める」ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 がんぴずりさんの映画レビュー(感想・評価)
巨大企業の卑劣な隠蔽に戦慄!権力や金の不文律に圧殺される市民は悲惨極める
骨太な社会派ドラマ。しかも40年前にこのウエストヴァージニア州・北部のこの問題の工場のあった近くに住んでいたことがあります。しかしこの州は米国の最貧州の一つで、我々がいた頃も石炭マイニングと森林伐採で段ボール製造がメインの産業でしたが、その後シェールガスでニュースに出る位です。このテフロン有害・発がん物質高濃度工場廃液垂れ流しのニュースは2019年にNHK「クロ現」でたまたま観た記憶がありましたので、まさかこの舞台がウエストヴァージニアだったのか!と頭を殴られるような気がしました。「クロ現」以後日本では全くこの手の報道がされてませんが、この映画は2019年に米国で公開されるも日本ではこのタイミングまで遅れたのは、環境条約のためだと思います。オハイオ州の境付近に確かにドイツ系移民が多い寒村がありました。(ワシントン工場はこの辺り)巨大な権力が温和しい住民を虫けらのように扱う、しかも健康被害のデータを密かに取りながら握りつぶす、これは東日本大震災、福島原発被害の我慢するしかない辛さに通じます。因みに私は福島県出身(元薬剤師)、成長した奇形の男性がガソリンスタンドで傷心の主人公と偶然出会うシーンでは涙が止まりませんでした。ウエストヴァージニアの風景の町並み、牧場などは我々の当時と何ら変わらない、まるで時間が止まったような何も変わらない映像でしたので、本当にこのエリアは置いてけぼりなんだ、何も産業がなくてヂュポンの工場が出来たことで一時は城下町化し住民も喜んだのかも。蔑称される無力な住民自身が”金”で右往左往させられるのも、米国の底辺をあぶり出した本質を見事に描いていたように思います。構図が明確で淡々と話が進められるので一気に鑑賞できましたが、持つ者と持たざる者の酷い仕打ちの恐怖、寂れるしかない打ち捨てられる田舎の惨状は、現在の我々への大きな警鐘を鳴らしていると思います。それにしても農場主の俳優さん、良かったです。