劇場公開日 2020年3月6日

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「フィクションを交えつつ、ありえたかもしれない文豪の「心の内側」を雑味なく描ききった名作」シェイクスピアの庭 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0フィクションを交えつつ、ありえたかもしれない文豪の「心の内側」を雑味なく描ききった名作

2020年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ロンドンのグローヴ座消失後、故郷のストラットフォード・アポン・エイヴォンへと帰ってその後は一本も戯曲を書かなかったシェイクスピアの余生を描いた物語。謎に包まれた彼の人生ゆえ当然ながらフィクションも混ざっているが、他でもない英国を代表するシェイクスピア表現者であるケネス・ブラナーが主演、監督を務めているので、この「フィクション」にもある種の説得力というか、ありえたかもしれない文豪の心の内側をよくぞこれほど雑味なく描いたなという旨さがある。とりわけ興味深いのは、これまでありったけの情熱と創造性を「筆と紙」にぶつけてきた主人公が、故郷では「庭づくり」へと情熱を移行させる様だ。そこには内面世界がこれまでの戯曲とは全く違う形で投影され、表現者を突き動かす原動力の正体を静かに浮かび上がらせていく。静かだが、力強い。従来の人物像から一歩踏み出した人間性を描こうとする作り手の心意気を感じさせられる一本だ。

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牛津厚信