シェイクスピアの庭のレビュー・感想・評価
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フィクションを交えつつ、ありえたかもしれない文豪の「心の内側」を雑味なく描ききった名作
ロンドンのグローヴ座消失後、故郷のストラットフォード・アポン・エイヴォンへと帰ってその後は一本も戯曲を書かなかったシェイクスピアの余生を描いた物語。謎に包まれた彼の人生ゆえ当然ながらフィクションも混ざっているが、他でもない英国を代表するシェイクスピア表現者であるケネス・ブラナーが主演、監督を務めているので、この「フィクション」にもある種の説得力というか、ありえたかもしれない文豪の心の内側をよくぞこれほど雑味なく描いたなという旨さがある。とりわけ興味深いのは、これまでありったけの情熱と創造性を「筆と紙」にぶつけてきた主人公が、故郷では「庭づくり」へと情熱を移行させる様だ。そこには内面世界がこれまでの戯曲とは全く違う形で投影され、表現者を突き動かす原動力の正体を静かに浮かび上がらせていく。静かだが、力強い。従来の人物像から一歩踏み出した人間性を描こうとする作り手の心意気を感じさせられる一本だ。
シェイクスピアの妻はアン・ハサウェイ
どこまでが実話なのかとわからないほどシリアス。さっそく調べてみると、次女ジュディスに関するスキャンダルは実話のようだし、家族のことはほぼ本当の話なのでしょう。最も疑わしいのがシェイクスピアが故郷に戻ったという点・・・いや、これを疑ったらストーリーが成り立たないじゃん。
そんなわけで晩年には家族と過ごすことになったウィリアム。独身のジュディスに対しても寛容だったし、遺産相続に関してもある程度均等に分割するみたいな話題で持ち切り。一見平和そうに見えたりもするが、早世した息子ハムネットの葬儀にも戻らなかったウィリアムに対する非難や葛藤が渦巻いていたのだ。
疫病で亡くなったとされていたハムネット。彼が作った詩にも将来性があると見込んでいたのに、ジュディスによる告白には驚かされるウィリアム。そのままシェイクスピア劇に使えそうな展開でもあり、見抜けなかった自分を恥じるのだ・・・しかし、驚きの展開はさらに続く。疫病なのに死者数が少なすぎる!
驚愕の事実に打ちのめされるウィリアムの心がひしひしと伝わってくる。僕の物語を完成させてね・・・とは、このことだったのか!All is true 奥が深い。さらに息子の亡霊なんてのも『ハムレット』を彷彿させる見事な設定でした。
ジュディ・デンチの安定の演技力。イアン・マッケランのガンダルフみたいな登場。ベン・ジョンソンとの会話など、興味深いシーンも盛りだくさん。Thouとか古英語を使ったりしたけど、仕掛けがいっぱいあった気がします。TV放送されたら、また見たい。
真実は一つじゃない。
子供を喪った哀しさは、男系が途絶える辛さと混濁しシェイクスピアを襲う。真実を知らされたシェイクスピアは娘たちと向き合い、妻と向き合い、己の葛藤に終止符を打つ。
Second-Best Bed はアンと一緒に眠ったベッド。Best-Bedは"This field-bed is too cold for me to sleep"なんでしょ?そんなベッドでアンに眠って欲しくない。取り戻した絆を象徴するSecond-Best Bedを相続すると言う、可愛らしいジョークの意図は「死んでも心は君と共にある」。
ケネス・ブラナー、ジュディ・デンチ、イアン・マッケランの演技が素晴らしかったのと、ザック・ニコルソンの撮影!「スターリンの葬送協奏曲」「ガーンジー島の読書会の秘密」に続いて三作目ですが(俺調べ)、良いですね。大好きです。
燃え盛る劇場に重なるシェイクスピアの影。1本の蝋燭の灯りだけで暗い食卓を囲むスザンナ一家。暖炉と多くの蝋燭で照らされるシェイクスピアの夕食の場面。昼間で灯りもとらず薄暗い部屋で抱き合う男女。真っ暗になるまでサウサンプトン伯爵の帰りを待つ家族たち。日没後に別れを告げるハムネット。明暗を用いた表現のテーマ性。
離れ離れに座る三人を捉える壁際からの構図をはじめとし、画面を横方向に走る線を強調する静的表現。視点の高さに合わせる動的表現。庭は、おそらく息子(ハムネット)の視点の高さ。馬上から見下ろす高さ。等々。
もうね、この画だけでも大好き、って言いたくなります。
ストーリー的には、現代にも通じるところがあり。
全般的には、期待値通りで良かったです。
シェイクスピアが身近な存在となる良作
シェイクスピアといえばローレンス・オリヴィエ、そしてポランスキーの『マクベス』を思うが、現在ではケネス・ブラナーだろう。彼が監督・主演し、シェイクスピアの人生最後の3年間(1613年〜16年)を描いた。
筆を折りロンドンから故郷のストラットフォード・アポン・エイボンへ帰ったウィリアムは家族とゆったりとした時間を過ごし、初めて家族のことを知る。
僅か20年の間に人類が生存する限り語り継がれるであろう多くの傑作を残した孤高の天才ウィリアム・シェイクスピア。彼とて我々と同じ人間だった。
妻役のジュディ・デンチはさすがに『歳とりすぎだろう』と突っ込みたくなったが、重厚な演技は流石だ。
偉大な作家の家族物語
名前は、知ってましたが、
晩年、引退してから
家族と向き合うことになるとは。
夢にも思わなかった事でしょう。
真面目な、彼だからこそ
子孫を残すことができなかったのかなと。
家族の物語として、今でも起こり得る事盛り沢山
参考になりました。
穏やかなとてもいい映画。
イギリスの田舎の風景わかりました。
美しい
シェイクスピアのことは、作品も人物もほとんど知らないのだけれど、楽しく見れた。
映像が美しく、全体に暗いのでコレは映画館で見る作品だなあという感じ。
どのシーンもとても美しくて、いいなあと思った。
ジュディスが、最初はヒステリックで嫌な女だなあと思うんだけど、ストーリーが進むにつれ、彼女の傷が明らかになってくる。女が全く認められない時代や、父親への想いや、弟の秘密や、彼の死に対する自責の念。そりゃ自分のこと嫌いになるわっていう要素満載で、彼女に感情移入してしまう。跡取りを望む父親のために結婚するとか、彼女は父親に愛されたいだけなんだ。最後少しでも彼女が救われたのであれば、それでいい。
ウィリアム・シェイクスピアなんて、自分勝手なおじさんよりジュディスの魂の救済を望んでしまうのだ。
そこら辺を全部含みおいて、なおかつ静かに構えていられる奥さんのアンが素晴らしい人。一見穏やかなんだけど、芯はすごく強い。そんな彼女が文字を覚えて、結婚誓約書にサインする場面は、とても良かったなあ。
名優たちが、シェイクスピアの詩を詠唱する場面はどれも素晴らしく、やっぱり英国俳優はシェイクスピアやってなんぼなのねえ。でも、ジュディ・デンチとイアン・マッケランがあと5年若かったらもっと凄かったんじゃないだろうかと、少し思ってしまうのだった。
ところで、庭、完成したの?
わかる人にはわかる映画
この映画を家庭劇とみるか、文学の歴史の一片とみるか、で感想が違うでしょう。
シェイクスピアの生涯をちょっとでも学んだ人なら、引退したシェイクスピアを訪ねてくる人との会話が何を意味するか察して興味深いだろうけど、知らない人はキモイと感じるかも。私的に詩の字幕はこれで良かったのか?と一寸疑念が・・・
やはり当時のイギリスの文学、風俗、環境、シェイクスピアの業績(戯曲と詩)と晩年を知っている方が理解が深まるのは間違いないです。
映画では綺麗にまとめているけど、実際はどうなんだろう。
それは誰も知らないわけだから、こうした映画が作られるのでしょうね。
大学ではシェイクスピア演劇のゼミ生だったので、モヤッとするけどイギリスの秋の風景が美しかったので、☆+0.5。
にしても、今年はまだ3月だというのに、イアン・マッケランを3度、ジュディ・デンチを2度観てしまったわ。
他に居ないのか?と感じるほどだけど、イアン・マッケランは役を演じ分けられていて、素晴らしい役者だと思う。
シェイクスピア愛に溢れた監督による作品
シェイクスピアが断筆し故郷に戻ってから死ぬまでの時間軸を描いた作品。
その為シェイクスピアの生涯を描いたわけではなく、人生最後の一部を描いた作品となる。
同日公開されたジュディと似たような流れの作品だ。
多くの劇場で公開されるわけではないため、この作品に興味を持って劇場に足を運ぶ人はおそらくシェイクスピアのファンが多いと思うが、
シェイクスピアという人物、彼の歴史を一定以上知っていないと楽しめないなのかなと思ったりもした。その点はこの作品が気になってる人に薦めたい。
特にこの作品は大きなフィクション要素を入れる事もなく、伝記通りの内容といった印象。
インタビュー動画でも伝わる通り、監督のシェイクスピアに対する愛に溢れた作品でありとても見やすさはあった。
シェイクスピアという人物の歴史の最後のほんの一部を改めて感じて楽しむ事ができた。
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