劇場公開日 2020年3月14日

  • 予告編を見る

「何もかも奪われた後に」ひとくず R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何もかも奪われた後に

2024年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

物語上原因と結果に不釣り合いがあることはどうしても腑に落ちない感覚を覚えてしまう。
それをやりすぎると、今度はしつこさが否めない。
この作品において、このバランス調整が若干難しかったと思わざるを得ない点が惜しかったところだ。
児童虐待はなくなることがない社会問題だが、なぜ救われないのかという点にフォーカスした作品。
「それを救える人物はどんな人だろう?」
主人公マサオの過去と現在の空き巣仕事がきっかけでこの物語が紡ぎだされる。
マサオがなぜアイスを食べないのかも説明される前にわかってしまう。
アイスは「許し」の象徴だ。
マサオは面会に来た母の差し入れがうれしかったに違いない。彼の人に対する変な言葉と威嚇するような言葉遣いは、やさしさのようなものの裏返しだ。
マサオは母の男を刺し殺した現場で、母が最後に見せた母としての責任を見た。それで納得した。彼にとってすでに許したのだから、もうアイスを食べる必要はなくなったのだ。
母のことが本気で嫌いなら、マリやリンにも母から聞かされたあの言葉を遣ったりしないだろう。
リンは自分も優しくされなかったので子供の接し方がわからないと感情をぶちまけたが、マサオが服役中にマサオの本心を理解したのだろう。
彼の母を探して出所時に迎えに来たのだ。この演出が最後のどんでん返しとなり同時にオチになるが、畳みかけるしつこさが否めない。
ヒロくんを殺害した報いは設定上必要かもしれないが、少し前のドラマがすでにしている。
決してつまらなくはなく、不自然さもないが、プロット構成の型が古いのだ。少し間違えてしまえば感涙ポルノになってしまう。基本的に見飽きることのない面白い作品だったが、この境界線をどうしても考えてしまう点が惜しかったところだ。

R41