WAVES ウェイブスのレビュー・感想・評価
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【”人間なんて、馬鹿ばっかりだ。けれども、放っておけないんだ・・。”】
ーエミリー(テイラー・ラッセル)は兄のある過ちに起因する、誹謗中傷のSNSを名もない人々から浴びせられる。
どん底の心境の際に、ルーク(ルーカス・エッジズ)がエミリーを励ますために言った言葉は”人間なんて、馬鹿ばっかりだ。放っておけ!”である・・。ー
■前半
裕福な家庭に育ったと思われる高校生のタイラーは、周囲から期待されるレスリング選手だが、長年の古傷を抱える右肩の状態が悪化し、美しきガールフレンド、アレクシスの妊娠も喜べず、泥沼に陥っていく。
ータイラーが転落していく前半は、正直に言って観ていて精神的に辛い。こちらの予想通りに”悪い方向”に物語は進むし、(脚本が凡庸)、タイラーの父親の彼への態度も愛あるが故だろうが、”息子にプレッシャーをかけているだけだろう!成りは大きいが、まだ高校生だぞ!”と心中で激しく突っ込む。-
・早く出てきてくれい!ルーカス・ヘッジズ!この居心地悪い流れを変えてくれ!と真面目に彼のスクリーン登場を願う。
■後半
メインキャラクターはタイラーの妹エミリー(テイラー・ラッセル)に移り、エミリーは冒頭のルークの言葉や、彼の飄々とした言動に癒されていく。
ー普通のアメリカの青年を演じさせたら、抜群だなあ、ルーカス・ヘッジズ。ー
だが、ルークにも幼いころ、母と自らへのDVがきっかけで、縁が切れた父親がいた。
ある日、ルークのもとにその父親が末期の病を抱えていると連絡が入る。エミリーはルークを”今、会わないと絶対に後悔するから・・”と説得し、二人で二日間かけて父親に会いに行く・・。
◆印象的なシーン
1.タイラーの父親が、妻から”貴方がタイラーを追い詰めた”となじられ、目も合わせてもらえないところから、時間はかかったが、夫婦で静かに手を重ね合わせるシーン。
2.タイラーの父親がそれまでの傲岸ともとれる態度から、釣りに誘ったエミリーに涙ながらに自分の今までの行いを詫びるシーン。
3.ルークの父親が、且つて虐待した息子の訪問を喜ぶシーン
そして、最期はルークの傍、静かに息を引き取るシーン及び前半の悲しきシーンの心拍音が途切れた”ピー”という音の連動性。
<多くの楽曲がこの物語を彩るが、私は最終盤に流れる”レディオ・ヘッド”のトム・ヨークが清らかな声で歌う”True Love Waits" の”離れないで・・、離れないで・・、真の愛が待っているから・・のメロディと歌詞が染みた作品。
家族は一番身近な他人である、とは良く使われるフレーズである。
が、一度家族になったのであれば(深く愛したのであれば)、その人を簡単に手放してはいけないのかもなあ・・、と思った作品でもある。>
映画自体は素晴らしいんだと思う、たぶん
洋楽には疎くケンドリックラマーやカニエウエストくらいしかわからなかったが、ポスターの色彩と「一生に一度の傑作」の謳い文句とに惹かれて、事前情報ほぼナシで鑑賞。
個人的にはミッドサマーを上回る極悪な不快さだった。
加害者と被害者をメインに据えるポスターってなんやねん…
運転席と助手席の間でグルグル回るカメラ、いちいち長回しで揺れるので映像酔い。
パトカーの回転灯、ダンスパーティ、リムジン内を映して点滅しまくる画面、酒とドラッグ、嘔吐、弱い者への暴力、やたら不安を煽る音楽も相まって途中からサイコスリラーかな?と思った。またはドラッグムービーかな?バッド入ってる時の世界ってあんな感じなんだろうね。
暴力自体悪いことだけれど、特に自分より力のない人に暴力を振るうなという教えで育った自分からしたら、カッとなって怒鳴りつけるのも手を出すのも最低。子供を産む決断をした彼女に何の非もない。捨てられるのも当然。
終始彼女の話を全然聞こうともしない。家族に相談しづらかろうと自分の手に負えないことは相談すべきだった。怪我のことを伝えずに一人で抱えたから失敗しているのに、そこから何も学んでいない。
妹と両親が新たな一歩を踏み出していくパートは本当に良かった。だが兄貴が兄貴だしやたらスリラー調な前半を観てきたので、ルークも妹の過去を知っていて陥れようとしている悪いヤツなんじゃないか?という疑いがしばらく抜けなかった。
良い曲がたくさん使われているのだろうけれど、この映画を通して知ったことでどの曲も刺さらなくなってしまった。レディオヘッドは不気味に聴こえてしまい、本当に吐き気がして退席しようか迷った。
でも色々な映画祭で絶賛らしいし良い映画なんだと思う。酒もドラッグもクラブミュージックみたいなのも無縁で、全部を不快に感じてしまった自分に合わなかっただけだと思う。でも、この映画を観て明日の希望になる、というのはかなり無理があるような、、、
自分のように、車の窓から手も顔も出すことが出来ない臆病な人間には早すぎたようだ。
心を通わせる大切さ
とても見応えがありこの作品の世界観に早い段階で入り込み没頭して鑑賞する事ができた。
個人的には序盤のタイラーのような心情描写の経験があり同時に今でもトラウマとして残ってる事もあってか凄く感動した作品となった。
冒頭はタイラーの順風満帆なスクール生活から始まる。
勉強にも熱心で部活もにも精力的に励み父親もとても期待している姿が見受けられる。そして彼女とも愛を育みパーフェクトなスクール生活であろう。
そんな順風満帆な生活を送ってるタイラーだがどことなく不安な様子が見受けられる。それは彼の心の声や真なる気持ちが作中で描かれておらず観客側としても不安が生まれる。
父親も期待するが故にタイラーには厳しく接してしまう事でタイラーもまた期待に応えようと体面を気にし、心の内を隠して生活を送ってしまってるわけだ。
そこで大きな出来事に直面する。それは彼女が妊娠してしまうのだ。タイラーはどうしたら良いか分からない。体面を気にする事で父親にそして家族にも話す事、相談する事もできない。そんな中彼女は出産する事を決め、中々答えを出さないタイラーに見切りをつけ別々の人生を歩む事を決断する。
ただ決してタイラーは出産する事を否定してたわけではない。どうしたら良いかわからず悩みもがいていただけである。その心の声が彼女に届かず、激しい言葉でぶつける事しかできず最後は不意な暴力から彼女を殺害して終身刑となる。
残されたタイラーの家族もこの事件をきっかけに更に互いの心の声を閉ざし、家族の気持ちも距離ができてしまう。
そんな中妹のエミリーに恋人ができ時間を重ねる事で心を開き、真なる気持ち、心の声を届ける事で関係を深め合っていく。
この姿は非常に美しく感じ、同時に心を通わせる事の大切さを強く感じさせてくれるわけだ。
エミリーの恋人ルークは酷い仕打ちを受け、もう何年もあっていない父親が末期である事を知る。最初は強がりいい気味だなんて言ってたがエミリーに本当は会いたい心の気持ちを伝える事で、会いに向かい最高の時間を過ごす事ができた。そしてその現場に居合わせエミリーもその姿の大切さに気づき、父親そして母親に本当の気持ちをメッセージで伝えた所でこの作品は終わるわけだ。
人に素直な気持ちを伝えることはとても勇気がいることである。時には素直な気持ちを否定される事もあるだろう。素直な気持ちほど否定されれば傷つき苦しむ。
それを恐れ人は徐々に素直な気持ちを伝える事を避け自分を守ろうとしてるわけだ。
ただやはり人は1人では生きていけないものだ。自分1人で常に正しい答えに導く事ができる程人生容易ではない。特にタイラーのように憎しみに心が駆られた時程人は正しい判断ができなくなるものである。
ただそういう窮地に立たされた時だけ都合よく人に頼り救われる事もまた難しいだろう。
だからこそ日常的に互いに心を通わせ、信頼関係を築くことが大切になっていくのであろう。
タイラーもそうだが、盲目になってるほど案外簡単な答えほど見えなくなり、人に頼ると案外単純な答えに導いてくれてたりもする。
心を閉ざすと相手もどうしても警戒してしまう。この作品でいえばタイラーの殺害行動の前に周囲が止めるチャンスは各々あった。しかし信頼関係がないと一歩踏み出す事に躊躇う間が生まれてしまうのだろう。
この作品を観てるとちょっとした瞬間、きっかけが人生大きく左右する事が分かる。これはフィックションだからではなく自分の人生振り返っても実感することはいくらかある。
ただ過ぎたことを悔いても前に進まない。間違った道に進まないようにする事が大切である。
ではそれはなにが大切なのか。上でも述べたようにやはり人間関係なんだと思う。困った時に助けてくれるのら周囲の人間である。その時に正しく導いてもらうには、自分のことを知ってもらう必要がある。
だからこそ日常的に素直な気持ちを伝える事が大切なんだとこの作品を通じて実感させられる。
素直な気持ちを伝える事と同時に、周囲が自分に素直な気持ちを伝えられる環境を作る大切さも実感させられた。
個人的に非常に現実味溢れる作品でとても心に残る作品であった。
よかった
映像や達者な演技はすごいし、音楽や演出も新しいものを感じさせるのだけど話はベタで、自然な流れを追っている感じ。妊娠した彼女を一撃で撲殺、高校の部活とは言え格闘家の人間凶器ぶりがすさまじい。妹の彼氏のお父さんを訪ねて臨終に立ち会うくだりは泣けるし、身につまされる。もうちょっと物語に仕掛けがあってもよさそうな気もするがこれがベストな形なのかもしれない。
よく見るアメリカの青春映画は主人公がパーティでいたたまれない気持ちになったり悲惨な目に合うのだけど、珍しくこの映画の主人公はリア充でパーティを満喫するタイプだったけど、彼は彼で難儀な思いをしており、またパーティでしくじるのでやっぱりパーティは恐ろしい。
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