「映像の色彩で主人公達の心情を語る繊細で凄惨な青春譚」WAVES ウェイブス よねさんの映画レビュー(感想・評価)
映像の色彩で主人公達の心情を語る繊細で凄惨な青春譚
裕福な家庭で育ったフロリダの高校生、レスリング部のスター選手タイラーと妹エミリーの物語。厳格な父の期待を一心に背負うタイラーは成績も優秀で毎日何不自由ない生活を謳歌していたが厳しいトレーニング中に肩を負傷したをきっかけに成功の階段から足を踏み外してしまう。一方のエミリーは兄の挫折をきっかけにして自分を見失い心を閉ざすが、そんな彼女に優しい手を差し伸べる影があった。
タイラーを見つめる物語とエミリーに寄り添う物語の語り部になるのが豊かな色彩。ため息が出るほど美しい映像の翳りが主人公の心情を饒舌に語るかのように胸に響きます。暖かいはずの家族の中で孤独感を募らせるエミリーの姿には『はちどり』の主人公ウニと同じような悲哀が滲んでいて、一つ屋根の下にも断絶が蔓延るという現実を突きつけられてうなだれましたが、それだけでは終わらない希望がしっかりと刻まれている結末に救われました。
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