「うーん・・・ スタイリッシュなだけかな…」WAVES ウェイブス Marikoさんの映画レビュー(感想・評価)
うーん・・・ スタイリッシュなだけかな…
辛口です。※ネタバレです
話題になるだけあって、映像も音楽もイケてます。さまざまな楽曲が登場人物たちの気持ちや場面にリンクする。
あぁ、斬新な見せ方だな、と感心はしました。
ですが、冷静に考えるとストーリーはありがちなもの。
やたらとハングリーで独善的な父親に押し付けらた理想像に追いつけず息苦しくなってたところに、致命的なケガ、レスリング選手としてドクターストップがかかった上にタイミング悪く恋人の予期せぬ妊娠にパニクる高校生。
彼、優等生だったのに。
あれよあれよと言う間に最悪な方向に急降下する展開が少し思考に追いつかない。
主人公がゲスすぎる。
すぐキレる、彼女に暴言・暴力。挙げ句の果てには殴り殺す。
最低やな、こいつ。
誰も相談できる人もいない。そしてどんどん自分を追い詰めていく。
一見幸せそうな中流家庭なのにね。
後半は「殺人犯の妹」の立場のお話。
家族の再生?まで。
救いは妹の彼氏かな… さすがルーカスくん、ごく自然に演じてて、好感持てた。
メッキの剥がれた家庭の姿。意外と脆かった、という・・・
人を殺めるという最悪の事態は避けられたはず。
自分に自信満々で人に理想を押し付けていた父親、なんだか私の父に少し似てて、胸がチクリ。
被害者の遺族に対してもっとお詫びの気持ちはないのだろうか?
加害者側としての自分たちの苦しみは、罪のない娘を無残に殺された彼らの悲しみに比べようもない。
私が遺族なら、この高校生を殺す。
その辺りをもう少し描いて欲しかった。
もうひとつこの家族の気持ちに入り込めなかった。
人間、傲るべからず。
子供をコントロールできてるなんて思い込まない方がいい。
あれだけ一緒に過ごして、実際は子供の心の悩みなどに一切気づけていない鈍感な父親だったし、結局は自らの厳しい子育てのせいで子供を追い詰めていた。
自信喪失し、世間からも非難され、すっかり肩を落とし娘に詫びて涙を流す父親の方が人間らしい姿で、ようやくその悲しみに心寄り添えました。
何かとスタイリッシュに演出された映画ですが、内容にはあまり期待しない方が良いかと。