劇場公開日 2020年12月25日

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「いっそオリジナルでやった方が良かったのでは?」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) カワズさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0いっそオリジナルでやった方が良かったのでは?

2020年12月31日
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鑑賞方法:映画館

もし、あなたが原作はおろか2003年にやっていた実写版を見ていないのであれば、本作はそれこそレビューサイトにおける星4くらいの、いわゆる普通に面白いアニメーション映画の範疇にとどまると思う。しかし、原作ないしは実写版と比較すれば、この作品はそれこそなんの面白みもない、ありきたりな青春映画であるとの判を押さざるを得ない。原作はジョゼと恒夫のエロティックな関係性と、身体障害者の何ら飾ることのないリアルに焦点を当てた、ねじれた大人のねじれた恋愛を描いた青春小説であった。2003年に封を切られた犬童一心版もまた、改変こそあれ、それは妻夫木聡演じる恒夫の性への杜撰さだとか、ラストのジョゼなどを通して田辺聖子の世界観をよく描いていたと思う。
では、翻って本作はどうか。身体障害者であるジョゼが出てくるところは一緒だが、それ以外はまるで別物である。まあこれに関してで言えば、数十ページしかない短編小説を1時間とちょっとの映画に風呂敷を広げるという都合もあるだろうし、まだ目は瞑っていられる。けれど、けれどだ。二人はいろんな障害を乗り越えて最後は幸せなキスして終了って、20代が、ましてや文学作品がやる恋愛じゃあないだろ。あれ、これ原作ラノベでしたっけ? 角川スニーカー文庫から出版されたんか? あと、ことあるごとにメタファーと呼ぶにも明喩的過ぎる海の描写が挟まれるが、あれは普通に発想としてありきたりだし、なにより演出としてくどい。
もしこれが原作のない完全オリジナル、ないしはラノベ原作の映画であれば、それこそこんなぼろくそになじりはしないが、なんというか、cmで主題歌を聞いたあたりから薄々感づいてはいたけれど、原作を見たことはおろか、そもそも原作があるのかさえ知らないような、マーケティングのメイン層である10代以外を完全に切り捨ててる構成といい、全体的に監督やプロモーター側から原作へのリスペクトを感じられない内容だった。と、思うとります。

カワズ
おとらさんのコメント
2023年1月26日

貴方のレビューこそ、この映画のすべてです!
原作者への敬意を欠いた製作陣には嫌悪しかありません。

おとら
talismanさんのコメント
2021年2月1日

なるほどー!田辺聖子がこういうの書くのか??と思っていただけに。原作読みます。ありがとうございます。

talisman