星の子 : 特集
6年ぶりの待望の主演作!
芦田愛菜が繊細な少女の“揺れ”を熱演する
心揺さぶる感動作『星の子』
大森立嗣が脚本・監督を手掛けた最新作『星の子』が、10月9日(金)に公開されます。本記事では、公開に先立ち開催された最速試写会に参加したファンの感想とともに、本作の見どころを紹介します。
林ちひろ(芦田愛菜)は、高校受験を控えた中学3年生。未熟児として生まれ病弱だったちひろの体調が改善したことをきっかけに、両親(永瀬正敏、原田知世)は“特別な生命力を宿した水”を販売している新興宗教に心酔し、今では家中がその宗教の祭壇やグッズで溢れ返っていた。転居を繰り返し生活も貧窮していく林家を、周囲は好奇の目で眺めていた。そんな家庭に愛想を尽かした5歳年上の姉は家を出ていったが、ちひろは愛情深い両親との生活を大切にしていた。ある日、新しく赴任してきた数学の教師・南(岡田将生)に恋をしたことがきっかけで、ちひろにも変化が生まれ始める──。
「人間」を見つめ続ける、大森立嗣監督が描く“優しさ”
新興宗教にハマってしまった両親を深く愛しながらも、自らの人生を踏み出そうとする15歳の少女の揺れ動く感情を繊細に描いた『星の子』。注目の芥川賞作家・今村夏子の同名小説を映画化したのは、『日日是好日』(18年)で第43回報知映画賞監督賞を受賞した大森立嗣。
長編監督デビュー作『ゲルマニウムの夜』(05年)から、長澤まさみが毒母を演じ話題となった『MOTHER マザー』(20年)まで人間を見つめてきた大森監督が、包むような眼差しで少女の"ゆらぎ"を捉えました。
実力派女優に成長した芦田愛菜の新たなる代表作
周囲の人に好奇の目で見られながらも、自分を大切に育ててくれた大好きな父と母に対する気持ちは決して揺るがない。けれど、多感な思春期に入ったちひろには、友人との関係や淡い初恋を通して、自我が芽生え始めます。大人への一歩を踏み出した少女の繊細さを、芦田は圧倒的な共感をもって体現しました。
子どもから大人へ、思春期の少女を等身大に演じた芦田愛菜は、撮影当時、ちひろと同じ中学3年生でした。『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(14年)以来6年ぶりの主演実写映画となる本作で、不遇な環境にもかかわらず健気に精一杯生きようとするちひろを体現した芦田の演技に絶賛の声が集まっています。
観客に委ねられる“結末” あなたの心が試される──
無邪気な子ども時代は、父や母からの愛さえあれば幸せだったちひろ。けれど、友だちができ、恋を知った15歳のちひろは、“他者からの目”を初めて意識します。自分自身や家族のことを俯瞰して見たとき、その視線の残酷さにちひろは傷ついていきます。
外の世界を知った少女は、いったいどんな決断をするのか。人によって解釈が分かれる“結末”は、大きな余韻となって心に波紋を残します。
豪華な共演俳優たちの珠玉の演技にも注目
卓越した演出力でも定評のある大森監督の下、脇を固める俳優陣も豪華な顔ぶれが揃いました。ちひろが心から愛する父と母を演じたのは、永瀬正敏と原田知世。共に1983年にスクリーンデビューした二人が夫婦役で共演したのは、『紙屋悦子の青春』(06年)以来約14年ぶり。
新興宗教に夢中の両親と暮すちひろを心配する叔父を大友康平、ちひろが恋をする新任の数学教師役を岡田将生、新興宗教団体「ひかりの星」の幹部役を若手実力派の代表ともいえる高良健吾と黒木華が演じ、脇役ながら印象に残るパフォーマンスを見せ、作品に奥行きを与えています。
ちひろの感情のうねりを表現する世武裕子の音楽
『星の子』の音楽を担当したのは、数々の映画作品を手掛ける世武裕子。『日日是好日』でも組んだ大森監督の絶大な信頼を得て、本作でも再コラボが実現しました。セリフでは語られることのないちひろの“ゆらぎ”を、世武ワールドが豊かに描き出しています。