「映画向きではない題材。」ブレイブ 群青戦記 よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
映画向きではない題材。
原作既読。
脚本の方を見ると亜人と同じ脚本家らしい。
なるほど、映画向きではない原作を2時間でみれる映画作品として一応仕立てたのは素晴らしい手腕だなと思う限り。
特に、タイムスリップする時代を大きく改変して信長包囲網の時期から桶狭間まで巻き戻したのは勲章物。
桶狭間前後の数日だからこそ2時間の尺でまとめられた。
が、まとめたのと話の深みは別の話。
これは脚本家云々、監督云々の話ではなくそもそも企画段階からダメだった、どうしようもなかったと感じる。
そんなどうしようもないなか、ここまでの作品に仕立てたのは素直にすごい。
まず、“原作よりも良かった点”
冒頭の襲撃シーン。
人が人を殺すのが当たり前の世の中で突如襲いかかってくる不条理な死の残酷さというのが原作よりも実感をもって描かれていた。(実写だから当たり前じゃんと思われるかもしれないが、それすらできない作品も又数多ある。)
この戦国の残酷さと言うのは全編通して漂っていて原作前半最大のテーマがしっかり伝わったのは良かった。
が、冒頭の野武士がまぁゾンビのよう。
特に、蒼たちが少し話している時に窓ガラスにバン!!と現れるのはあまりにもゾンビ映画すぎて思わず笑ってしまった。
が、そんなものは映画を見ていくうちに忘れていくので良いとして、時間がない故なのか、蒼が家康になると言う原作でもなかなかの超展開が全く突飛なものに思えてしまう事。
まあこれ自体はもう如何ともし難いのだろうが。
原作でもこの展開を何十巻かけてじっくりじっくり説得した展開は2時間では流石にどうにもならなかった。
その上で損な役回りをしているのが松木。
原作では数々の人物が命を落として死んでいくが、物語上重要な死は二つある。
それが松木の死と家康の死だ。
この松木の死が原作だとかなり印象に残るように描かれているのだが、この映画だと全く印象が薄い。
もう少し印象に残るドラマチックなアクションの展開を作れなかったのかと思ってしまった。
この映画ではあまりにも多くの人が死ぬ。
それは原作でも同じだから良いのだが、死のメリハリがついてない。
死のメリハリというととても不謹慎だが、どれもこれも同じ単調な死に見えて、蒼が覚醒するまでに重要な死とそれ以外の死の区別がついてない気がする。
人の命、人の死はどれも等しく同じ重さという裏テーマがあるのならなるほどとも思うが。
亜人チームをもってしてもこの原作の前にはどうにもならなかったと言う事だろう。