「これからは我儘に生きたい」老後の資金がありません! bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
これからは我儘に生きたい
『老後の資金がありません』の題名の通り、今、置かれた自分の生活と重なり、気になっていた作品。公開から少し遅れて鑑賞。
自分も定年退職を迎え、現在は、再雇用で働いてはいるが、いつまで働けるのかわからず、この作品のタイトル通りの現状。古くなった家のリフォーム、子供の結婚、親の葬儀など、支出は次から次へとあり、自分も老後を考える年代となり、内容的には身につまされるシーンが数多くあった。(笑)存分、働いてきたのだから、これからは自分の為に我が儘に生きたいとも思う。
夫は家計に無頓着で、頼りなく、妻は、欲しいブランドバックも我慢して生活費を捻出している、どこにでもありそう一般的な50代の夫婦が主人公。しかし、この夫の父親の葬儀を機に、生活は暗転。高額な葬儀費用を負担したと思ったら、夫の会社が倒産。妻も派遣を解雇され、娘は地方の御曹司との結婚で、高額な結婚式を計画。そこに、金使いの荒い姑姑が転がり込んで、てんやわんやの一家。
人生、お金が全てではないが、これから老後設計を考える身としては、やはりお金は大切。主人公に共感するシーンも本当に数多くあり、クスっと笑いながらも、切実感も伝わってきた。しかし、決して暗い展開ではなく、むしろ明るいホームコメディー風に仕上げているのは、前田哲監督の演出とも言える。
主人公の妻役の天海祐希は、キャリアウーマンから、こうした主婦役を演じても安定感ある演技であることは、言うまでもない。松重豊は、老年に片足突っ込んで、頼りない夫役にはピッタリの配役。そして、今回の作品の中で、ひと際異彩を放っているのが、80歳を超えてもまだまだ女優として突き進む、草笛光子。ヨガシーンでの体の柔軟性にはビックリ!
但し、脇役においては、ピークを過ぎた芸人や役者じゃないタレントの下手な演技を見せられて、そこは物足りなさは感じた。そして、最後のワザとらしく歌って踊りながら、「みんなハッピー」というラストシーンは、あまりに短絡的。まあ、ストーリーやコメディーとしての面白さはあるが、ビデオでも十分かなと思える作品。