「どういう筋で評価するのかで評価は極端に分かれそう…。」老後の資金がありません! yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
どういう筋で評価するのかで評価は極端に分かれそう…。
今年154本目(合計218本目)。
今日最後の映画はこちら。
内容的にコメディドタバタものとみるか、「多少は」学術的な内容も含む問題提起型の映画と観るのか…によってかなり評価は分かれるんじゃないか…と思います。
前者の前提で見るとそれほど傷はないし、まぁ2000万円問題をどう取るかにもよりますが、リアルな現実を(もっとも、今後の年金政策がどうなるかなんて、それこそ明日(10/31のこと)の選挙次第のこと)コメディで見せるという点では、まぁツッコミどころもありますが、笑える点は結構多いです。
一方で、一応にも社会的問題を扱っている内容でもあり、それを前提に見ると、一部配慮が足りていない部分があるので、どちらの筋で見るのか…というのがわかりづらいです。
また、この映画自体、「どういうターゲット層」を想定しているのかも微妙です。20代の子に今から老後の心配をしろというのも酷だし、60~70代の実際に受給している方は、いまさら増やす方法は原則ないので(高齢者でも働ける会社で働くくらい?未納年金の納められる金額にも限度はあるし、いまさらNISAだの何だのやってる状況ではない)、消去法的に考えて「社会的問題の提起型の映画」とみる場合、40~50代くらいの方が見る内容ではないか…と思うのですが、描写はどうみても20~30代の方向けで(未成年の方も、内容を見て面白いかは別にして、描写としては面白い)、正直、どの軸(コメディものか、多少にも社会問題提起とみるか)で判断はかなり別れそうな気がします。
ただ、お話の内容自体はかなり誇張も多いし、実際に「2000万円」問題をどうとらえるのかにもよると思いますが(50年後くらいしたら、年金制度が破綻するか、生活保護が続出しそう…)、一応趣旨は理解できるし、現在ホットな話題で(まぁ、元になったリアル発言自体も、一応理解はできる)、「笑いながらオレオレ詐欺とかには気を付けてね」という趣旨というように解釈するのが妥当かなと思います。
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(減点1.0/すべてまとめて)
このことは「満塁本塁打」さんも指摘されていましたが、倒産であっても退職金という制度がもともとあり、それを積み立てている以上、何らかの救済制度はあります(国による8割補填など)。
ほか、このようなケースでも、先取特権(民法306条)を活用して回収を図る手もあります(優先順位も高めに設定されている/条文上は「賃金」としか書いていないが、「退職金に対しても類推適用される」というのが判例(昭和43))。もっとも、倒産処理後の残ったお金の清算で、複数の従業員が(かなりの大手企業と思える描写)、それを主張した場合は取れる金額が減りますが、1円ももらえないというのも超レアケースです(完全に清算等終わって0円状態の会社ってあるの?)。
かつ、先取特権は「法定担保物権」と呼ばれるもので、証拠(この場合、タイムカード等)があれば「法律上、当然に」認められる権利です(相手側の言い訳は一切考慮されない)。この「相手方の言い訳が一切通用しない」のが法定担保物権の強みで、本人訴訟でも何ら問題がないパターンです(弁護士か、訴額が140万円を超えないなら司法書士(簡裁のみ)でも扱えるが、被害者の落ち度は低いことから、成功報酬もかなり低めに設定されています。そもそも、その場合でも代わりに証拠出して払ってねといえば、相手の言い分など存在せず成立するので、受け持った案件としてもやりやすいため。なお、これを業をもって行政書士がやるとアウトなので注意です)。
また、あのケースは倒産ですので、いわゆる「特定受給資格者」(理由が倒産にあたるケース)で、映画内でも「入社から一つの会社一筋でやっていた」と言っていること+旦那さんが55歳くらいっぽいことを考えると、給付期間はかなり手厚くなっています(2022年3月までの時限措置。おそらくこの政策はコロナ事情もあるのでそのまま?)。すると、「すぐに職業を探す必要はない」んです。
にもかかわらず、行政がやっているハローワークの言い分も無茶苦茶で「55歳を超えて仕事の選択肢もないんだから肉体作業をしろ」といっても、そもそも無理なのはわかりきった話です。もちろん、ハローワーク(職業安定所)は最終最後は「安定した職業にはやくついてもらう」ことが目標になりますが、「無理なものは無理」です。それを半ば投げていること(窓口を民間に委託していても、最終最後は行政が責任を取る事案)、またそれを真に受けてすぐに工事現場(?)で仕事をしているあたり、結局、「長期的に得をするか、短期的にお金を稼ぐか」という点の判断がかけていて(15歳ならまだしも、55歳近くの方が、そういう損得関係ができないというのは、ちょっと不自然すぎる)、全般的に「お金を描く映画なのに、それらに関する諸法律の描写が適当すぎる」というのがかなりの痛手となるところです(本当に老後の資金に困ってるのかどうなのか、わからなくなってしまう)。
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