「俳優たちの存在が巧みに機能し合っている」21ブリッジ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
俳優たちの存在が巧みに機能し合っている
100分弱という小世界の中を、無駄のないピッチで走りきる良作である。完全封鎖されたマンハッタンの街並みは、闇夜に両手を広げる怪物のごとくギラギラと凄み漂う。そこで巻き起こる一筋縄ではいかない人間模様とサスペンスも、プロットとして予測可能とはいえ、熟練の役者陣が魂を注ぎ込むことで深みが増している。すなわち、本作の原動力となるのは脚本や設定よりもまず、確実に”俳優”の存在なのだ。彼らが内面をさらけ出す場面は驚くほど少ないが、むしろその少ないチャンスに向けてしっかりとグリップを握り、照準を定め、絶対外さない。チームワークというか相乗効果というか、この映画にはそうやって「人」が動かしている部分がある。そして何と言ってもチャドウィック・ボーズマン。彼が生きていれば、ジャンル映画の中でも複雑な内面や役どころを体現できる、デンゼル・ワシントンのような巨大な存在になれたはず。改めてその早すぎる死を悼んだ。
コメントする