「トラウマに向き合う」幸せへのまわり道 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
トラウマに向き合う
血を分けた家族だからこそ許せないことはあるが、恨みに支配されることは人生を暗く染め上げてしまうのかもしれない。
本作はそんなトラウマを有した大人である記者のロイド・ボーゲルを、子供番組の司会者フレッド・ロジャースがセラピーで癒す話だ。
(映画の主人公は記者の方)
許すとは、自分を誤魔化したり感情を殺すことではなく、自身の感情に正面から向き合い、苦しみに耐えた時間も自分を形成した一部と感謝することであり、怒る感情を抱くほどに相手を愛していることを認めることである。
そんな気付きをさせてくれて、非常に良い話なのだが、あまり事前知識のない日本人である私には、わからなくて残念なことがいくつか。
まず、映画の基になったロイドの記事の詳しい内容が、映画では語られないこと。
アメリカでは知らない者がいないほどの有名な記事らしく、この映画を観るくらいなら知っているでしょ?もしくはネットでアーカイブを読んでね!って突き放し方でした。わかんないよ!
そりゃ、ロイドのここまでの心の変わりようを見て、映画から察しろよ、ということなのかもしれないが、冒頭の一節だけでも読み上げてくれたら、すっきりするのに…
そして次に、実はフレッド・ロジャースって、リタイヤ後すぐ胃癌が見つかり、手術が成功せず2年の闘病の後に亡くなるらしいのだが(映画の後に検索したところによればだ)。
時折腰を押さえながら動きが鈍くなるというトム・ハンクスの演技が、一見すると腰痛など加齢による身体の痛みに思えるが、実は転移で背中や腰に痛みが走る状態なのかもしれない、ってあたりが細か過ぎて、本当の意図がどうなのかわかんない!
んで、ラスト。
徐々に暗くなるスタジオで一人ピアノを弾くシーンで終わる。
これが、彼がこの後亡くなることを暗示しているのかもしれなかったが、そこまでの予備知識がないと、すぐにはわかんないよ!
と、あれこれ不親切な部分を感じてしまいました。