劇場公開日 2021年7月8日

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「フローレンス・ピューのヤバすぎるカッコよさが炸裂!」ブラック・ウィドウ 盟吉津堂さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5フローレンス・ピューのヤバすぎるカッコよさが炸裂!

2025年5月11日
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鑑賞方法:VOD

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『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降、MCUはスパイダーマンくらいしか追っかけなくなってしまった。
しかし『サンダーボルツ*』の予告編を見てフローレンス・ピュー演じるエレーナがどうしても気になってしまい(笑)、これはもう『サンダーボルツ*』を観なくては!と奮い立ったのだけれど、その前に予習が必要だと思い本作を視聴。

フローレンス・ピューを初めて観たのは『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のエイミー役だった。
女性向けの映画ということもあり、観た当時は芝居の上手い若手女優というくらいの認識しかなかったのであるが、次に観たホラー映画『ミッドサマー』で度肝を抜かれた。
この映画でフローレンス・ピューが演じた女子大生ダニーはかなりヤバい女性キャラだったのだが、そのヤバさは観るもの(特に女性観客)にカタルシスを与える一種の神々しさを持ったヤバさだった。
ダニーの女神の如き凄まじいヤバさに圧倒された自分の中で、フローレンス・ピューはヤバい女優(もちろんいい意味で)として頭に刻み込まれることになったのである。

そして、この『ブラック・ウィドウ』である。
フローレンス・ピューが演じるのは、ロシアのスパイ組織レッドルームに所属するエージェントであり、幼い頃から暗殺技術を叩き込まれた凄腕の女殺し屋エレーナだ。
かつてブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフと偽装工作で姉妹を演じていたこともある彼女は、自分を置き去りにしてアメリカに亡命してアベンジャーズの一員になったナターシャに複雑な感情を抱いている。

このエレーナのキャラクターがすごくイイ!もうヤバすぎるカッコよさが炸裂しているのである。
凶暴にしてキュート。
戦闘能力はブラック・ウィドウに一歩も引けを取らない。
幼い頃からレッドルームによって殺人マシーンとして育てられたという壮絶な過去を背負っているためヤサグレ感を漂わせているが、心の奥底では家族愛を激しく求める純情さを秘めている。
なんだか『キック・アス』のヒットガールが成長した姿を見るかのようで、刺さる人間にはブッ刺さるキャラクターなのだ。自分はイチコロだった(笑)。

子供の頃に偽装工作で姉妹のフリをしていた経緯から、本作でのエレーナは奔放な妹キャラ、一方ナターシャの方はしっかり者のお姉さんキャラという役回りになっている。

本来MCUで最もヤバい女性キャラといっても過言ではないブラック・ウィドウもエレーナのヤバさにすっかりお株を奪われた感じなのだが、そこはさすがにスカーレット・ヨハンソンである。
アベンジャーズの紅一点を長年演じてきたその存在感は圧倒的であり、悲しい過去を背負いながらも涙をこぼさず歯を食いしばって戦う孤高の女戦士の姿はMCU新参のフローレンス・ピューにはない風格を漂わせている。

スカーレット・ヨハンソンもフローレンス・ピューも、異なるタイプの女性ヒーローを見事に演じていて、女性ヒーロー映画としては自分は大満足だった。
レッドルームによる洗脳を解除する方法がチョーお手軽!といった御都合主義的な展開はやや気になるけれど、それを言ったらアメコミヒーローという存在自体が御都合主義的な存在なので、そこは目をつぶる(笑)。

ただ、男目線で敢えて欲を言わせてもらえれば、レッド・ガーディアンにも、もうちょっと活躍してほしかった。
常人より何倍も新陳代謝が活性化しているはずなのに中年太りでお腹がポッコリしているポンコツ・スーパーソルジャーのレッド・ガーディアン。
あまりのポンコツぶりに、ついつい、もうちょっと頑張れよ!と声援を送りたくなってしまうような愛すべきキャラなのだが、一種の女性映画である本作においては活躍の場を与えられずいまいちパッとしなかった。

とは言え、これは『サンダーボルツ*』への伏線だと思いたい!
『サンダーボルツ*』では再びエレーナの勇姿が拝めるのはもちろんのこと、本作でいまいち活躍できなかったレッド・ガーディアンも大活躍してくれるはずだ!

『サンダーボルツ*』は観に行く!
だが、配信ドラマを観なければストーリーについていけなくなるぞ、と脅して何がなんでもDisney+に加入させようとするような、そんな銀河帝国のごときディズニー帝国の暴挙に対してはレジスタンスとなってでも断固抵抗し続ける(笑)!
ドラマはドラマ、映画は映画、それぞれ単体で楽しめるものであるべきだと思う!

「MCU疲れ」などと世間で言われるようになってしまったが、ヒーロー映画を愛する身としてはあんまり大風呂敷を広げたり敷居を高くしたりしないで、一見さんに優しい作品作りをしてほしいとマーヴェルとディズニーに願ってやまない。

盟吉津堂