「スパイ流ホームドラマ」ブラック・ウィドウ サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
スパイ流ホームドラマ
待ちに待ったブラック・ウィドウの単独主役映画。エイジ・オブ・ウルトロンで明かされた彼女の暗い過去に迫る…と思いきや、ナターシャの家族との交流を描くホームドラマの趣が強かった。もちろんブラック・ウィドウの過去話もあったのだが、ホームドラマに集中したほうが楽しめるだろう。
話は過去、ナターシャの子供時代に偽装家族として過ごしていたところから始まり、シビルウォー以後その家族たちと再開、共に暗殺組織をぶち壊すことが話の根幹となる。
ナターシャのアクションのキレは健在。キャプテン・アメリカともブラックパンサーとも違う、アクロバティックだが力強いアクションが今作でも楽しめる。さらにナターシャの妹であるエレーナも同等のアクションを披露し、そこに父親のレッドガーディアンの力任せな戦闘も入るのだかもう大変。画面はカッコいい&楽しいの嵐だ。母親のメリーナも、アクションこそないが、余裕のある老獪さで魅せて映画に華を持たせている。
これぞブラック・ウィドウ流ホームドラマ。アントマンでも親子愛に夫婦愛、エンドゲームでは姉妹愛を描いたマーベルの新境地。家族愛で楽しませる異質のヒーロー映画と言えるだろう。
だが、その反動か、今回の悪役組織であるレッドルームの描写は非常におざなりだった。
ヒドラやウルトロン、サノスにはあったバックボーンとなる思想も技術もひたすら見えない。絵本から飛び出てきたような、とってつけたような悪役。
最後に突然ボロを出すし、AOUでちらりと見せた冷酷な影はなんだったのか。
とにかくナターシャが好きな人は楽しめると思う。彼女の新たな魅力に気づくことができるのだから。だが、これまでのマーベル映画と比べると、悪役で少々見劣りするか。