劇場公開日 2020年9月11日

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「日米両国の視点で描いて欲しかった」ミッドウェイ みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0日米両国の視点で描いて欲しかった

2022年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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興奮

本作は、太平洋戦争の真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦までの戦争物語である。太平洋戦争が終結してから75年が経過しているので、当事国である日米両国の視点をしっかり取り入れた見応えのある作品だと期待していたが、残念ながら、75年経ってもなお、アメリカ視点の作品だった。

2001年公開の、アメリカ映画パールハーバーを観た時は、アメリカ側の視点/解釈に日本人として憤りを感じたが、本作では、あの時に比べ日本軍の存在感が薄くなっていたので、憤りは感じなかった。フィクションを観ているようだった。日米決戦のはずなのに、アメリカ軍の活躍、勇猛果敢さばかりが際立った作品だった。

真珠湾攻撃シーン、ミッドウェイ海戦シーンは、CGを最大活用して迫力満点である。特に急降下爆撃シーンは操縦士目線で描写しているので鳥肌が立つような臨場感がある。アメリカが真珠湾攻撃をどう捉え、どういう想いでミッドウェイ海戦に挑んでいったかは、丁寧に、詳細に描かれている。戦場で戦う兵士、家族も描かれている。アメリカ側は群像劇としては良く出来ている。

一方、日本側は、山本五十六海軍大将が日本の代弁者になっている。日本軍はどういう意図で太平洋戦争に突入していったのか、彼の口から語られるのみである。日本軍のなかでの軋轢、葛藤、戦場で戦う兵士の想い、家族は描かれない。群像劇どころか日本視点は殆どない。

本作は、75年前の太平洋戦争に基づいた作品である以上、当事国である日米双方の視点で捉えないと、客観性を保てなくなる。一方的な視点の作品になってしまう。ラストで、本作で活躍した軍人たちのその後が紹介されるが、アメリカ側が錚々たるメンバーだったのに対し、日本側は山本五十六海軍大将のみであったことが、如実に物語っている。

自国を客観視するのは難しい。他国を理解するのは難しい。それでもなお、日米両国の視点で、太平洋戦争を描き切った作品ができることを期待したい。

みかずき
零式五二型さんのコメント
2022年8月13日

コメントありがとうございます。
そうですね、戦争作品はどうしても主眼側の色が濃くなるのは仕方がないでしょうね。
最近は様々な人当時の日記や日誌が見つかり、史実の裏側や知られざる事が明らかになってきているので、また違った作品が出てくるかもしれませんね。

零式五二型