「戦争のアレコレ」ミッドウェイ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
戦争のアレコレ
荘厳な作りではあるものの…突出したドラマは語られない。いや、敢えて語らなかったのかも。
目を見張るのは戦闘シーンの凄まじさ。
エゲツない。
そこに無いものを顕現させるCGの恩恵たるや…その精度も含めて素晴らしいのである。
劇中、フォード監督が登場する。
空襲の最中、カメラを回せと叫ぶ。
狂気の沙汰ではあるけれど、CGの無い時代…とても気持ちは良く分かる。これ以上にないリアリズムを背負って被写体が飛んでくるわけだ。
こんな好機はまたとないって事なのだ。
とりとめのないシーンではあるけれど、立場による戦争というものの捉え方を語っているようだ。
極端な例ではあるけれど。
鑑賞中に思うのは、今までの戦争映画との対比だ。
あの作品ではどお描かれてたかな?
あれ、こんな感じだったけ?
それまでの作品の誇張表現が思い出される。
物語は淡々と進む。
盛り上がりに欠けると言われればそれまでなのだけど、敢えて敵意を描かない事には意義もある。
始まってしまえば止まらないのだ。
大勢の人間がその渦に飲み込まれる。
枯葉よりも脆く命は消費されていくのである。
大極を描くとでも言うのだろうか、敢えて第3者的な目線を強いられたような気もする。
戦争を美化も批判もしてないように思える。
ある種の先入観を排除したような作り。
ただ、それ故に…眠くもなった。
豪雨のような弾幕に突っ込んでいく戦闘機を見ていながらも、だ。
ミリタリーマニアには極上の作品かもしれない。
抑揚の少ない作品でありながらも、豊川氏演じる山本五十六が、唯一憎悪なのか覚悟なのか…後に狂気と表現されるかもしれない感情を顕にしたカットがあり、ゾクッとした。
■追記
そうなのだ。
「職業・軍人」って言葉が浅野氏の芝居から読み取れるような感じもするのだ。
自軍の艦が沈められたとする。
だが、そこには顕著な憤りはないように見える。
自軍の鉄壁な布陣を掻い潜り、弾幕の嵐を抜けて、艦を沈めたパイロットをリスペクトするのだ。
「やりよるな」とかそんな台詞だったと思う。
覚悟が備わってるのかと思う。
侍の矜恃をも彷彿とさせる。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」
誰がいつ言ったのか、フィクションなのかドキュメントかも分からないけれど、「刀を握ったその日から、いずれは死ぬ」という事なのだと思う。
武器を携えその場に立ち続ける限り、死が訪れるのは遅いか早いかの違いだけだ、と。
ただ、強制的に徴用された者はたまったもんじゃない。そんな覚悟もないままに、命に未練があるままに、理不尽に戦場に駆り出され、その死に意義も見いだせないまま殺される。
そういう側面をこの作品は敢えて描かなかったかのように思う。