「ミリヲタ憤慨 (B-25は、日本で民間人に機銃掃射を浴びせてから、中国へ飛んだ)」ミッドウェイ bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
ミリヲタ憤慨 (B-25は、日本で民間人に機銃掃射を浴びせてから、中国へ飛んだ)
ムネアツもあるけど。全体を通じて萎えまくりです。
国民革命軍の兵士と米兵が握手?なんで?この脚本書いた人って何者なの?
もう、萎えて萎えて萎えまくりですってw
結構、憤慨してます。
登場する主な米軍機は以下。
*Douglas SBD Dauntless=ダグラスSBDドーントレス(エド・スクライン他)
*North American B-25 Mitchell =B -25 ミッチェル(アーロン・エッカート)
*Grumman F4F Wildcat= F4F ワイルドキャット
米艦隊で主要な役割を担うのは3隻の空母と潜水艦。
*航空母艦 エンタープライズ
*航空母艦 ホーネット
*航空母艦 ヨークタウン
以降、思いつく順に感想です。
◆ニミッツはミッドウェーが次のターゲットだと考えていた
映画ではレイトンの進言によりミッドウェーが次のターゲットだと考え始めた様に描写されています。実際には、本土攻撃の可能性を懸念するワシントンに対し「上陸部隊を持たずに攻撃して来る事はあり得ない」と退け、ミッドウェーが最も可能性の高い標的であり、続いてハワイと考えており、レイトンに出した指示は「証拠を集めよ」だったと言われています。当時、西海岸では日本軍の潜水艦による艦艇攻撃や、陸上への砲撃が繰り返されており、「狙いは西海岸上陸」と考えるのも無理からぬ状況だったかも知れませんが、上陸攻撃には大部隊が必要です。日本軍と言えども、それだけの兵力を太平洋を越えて派兵することは不可能だと、ニミッツは考えていたと思われます。
ちなみに、当時アメリカは日本軍の上級幹部に通じる諜報に成功しており、あらゆる機密情報は筒抜けであった事も分かっています。
短期決戦を念頭に置いた時、アメリカの太平洋戦争への戦意を喪失させ、米国内世論を「欧州戦線」に差し向ける効果、と言う意味でもミッドウェーを陥落させると同時に、太平洋艦隊を壊滅させることが、日本にとって理想的であったことも間違いなく、ニミッツはそれに気づいていたと考えられます。
◆B-25による日本空襲
いわゆるドーリットル空襲も登場します。空母ホーネットから飛び立ったB-25、16機は、日本各地を空襲した後、15機は中国本土に不時着。1機はロシア領内に到達。当時、中国本土に展開し日本陸軍と戦闘していたのは、コミンテルンが創設に関わった国民革命軍。この空襲は国民軍の協力の元に行われたのは事実ですが。基本的には、米兵は僚友どころか、日本以上の敵国のはずです。敵の敵は味方にならないところが「革命軍」でしょ?現場の兵士にとって米英は悪魔でしょうよ。
◆空母ヨークシャーの復活
珊瑚海はソロモン諸島南部の海域。日本軍と米豪の連合艦隊は、この戦争で初めての海戦を展開したのが珊瑚海海戦です。空母ヨークシャーは日本海軍に多大な損害を与えましたが、被弾した250kg爆弾が飛行甲板を貫通し火災発生。エンジンを損傷の上、至近弾で燃料漏れを起こしています。現地で応急処置を行った後、乾ドッグでの修理を行うために真珠湾に向かいます。この時、日本海軍はヨークシャーがミッドウェーに現れるとは考えていなかったでしょう。勝負を分けた要因の一つがヨークシャー。ヨークシャーは、ミッドウェー海戦に参加するため、出航後も修理を続けていたと言われています。
◆図上演習が行われたのは大和において。やり直しさせたのは宇垣纏連合艦隊参謀長。
ミッドウェー海戦のみならず、ハワイ攻略までを含めた図上演習の結果、日本海軍は大打撃を被り作戦を続行することが不可能となります。「連合艦隊はこうならないように作戦を指導する」と発言したのは宇垣纏参謀長。南雲忠一ではありません。
止まりそうにないのでw、今日はここまで。
---------------------
9/15追記
◆日本側描写が適当
米軍機動部隊への攻撃か、ミッドウェーからの帰還機の収容かを悩むシーン。収容を優先したのは米軍機動部隊の敵位置情報に誤りがあったため時間を見積もり損ねた事。貧相な電探技術だった海軍は、敵急降下爆撃機の接近を察知できず急襲されたこと。等が要因として挙げられますが、描写無しでさらっと流されました。
◆運命の5分間は無かった
マクラスキーやベストは「各空母の甲板には航空機が並んでいた」と証言。所謂、大口の類でしょう。その他の日米両軍関係者の証言がつなぎ合わされ「米軍の攻撃があと5分遅ければ、日本は迎撃に間に合っていた」と言う伝説が生まれますが、生き残った隊員の証言で、「収容がひと段落して休憩に入ろうとしていたところ」であったことが判っています。運命の5分間の日本側証言は、慢心と油断からの失策を隠蔽する意図もあったとの推測もあります。
◆垂直爆撃機だけの編隊攻撃と言う勇気
TBFアベンジャー、B-26マローダー、SBDドーントレスなどなど。いずれも鈍足ですし、ペイロードが大きく、小回りが利きません。ゆえに、護衛戦闘機に守られながら攻撃対象の元に向かいます。ミッドウェーでは、南雲の機動部隊に対する攻撃は、護衛機が付いていなかったのは事実ですが、毎回毎回、SBDだけで飛び立つのっておかしいです。
◆至近距離の水平爆撃では航空母艦は撃沈できない
SBDドーントレスの爆弾槽に実装でできる最大の爆弾は1,600lbs。映画の見た目からは、現在のMk.82相当の500lbsと思われます。空母赤城に命中させた場面は、ほぼ水平爆撃と言って良い入射角。甲板を突き抜けるには運動エネルギーが足りません。爆発しても、甲板に穴を空けるだけで、甲板下の爆薬を連鎖的に爆発させ、沈没させることは困難と思われます。
◆強力なダウンフォースが働く空母後方から近付き、充分な推進力も無く甲板上面に浮上することは不可能。
これは、映画的演出って事で。でも。無茶ですよw
◆サシの勝負でゼロ戦をやっつける急降下爆撃機
そもそも、ドーントレスの機銃は何で後ろ向きに装備されてるのかと言う。バック取られるから、なんですよね。赤城の艦載機は零戦二一型 (A6M2b)で、機銃は、翼内に九九式20mm、機首に九七式7.7mm。二機がかりで小回りの利かない鈍足のSBDドーントレスを取り逃がすのも、どうかと思いますが、こちらも演出って事で。下(ドーントレスの死角)から近付いて爆弾槽に7.7mmを撃ち込めば終わりなのに、真後ろから追いかけるなんて。ドジだねw
「史実を徹底的に調べ上げて」、この内容ってのは、いけがみ(あ)的悪質さを感じます。
結局、普通の戦争エンタメですやん。やっぱり、エメリッヒだったぁw
--------------------
9/17追記
◆民間人に対する機銃掃射を行ったドーリットル隊15番機
非戦闘員・民間人に対する攻撃は国際法上、禁止されています。ドーリットル空襲には16機のB-25が投入されましたが、15番機は日本各所で民間人に対する機銃掃射を行い、死傷者も出ています。人に対する攻撃を行たのは、ドーリットル隊だし、空襲と原爆で30万人の非戦闘員・民間人を殺害した人たちに、こんな映画を作って欲しくないわい、ってのが一番の憤慨ポイントでした。握手、以前に。
史実の一部を意図的に隠すのは印象操作の常套手段ですよぉ。
日米両軍兵士に捧ぐ、なんてメッセージで締めくくられてもねぇ...
この内容じゃねぇ。
シラケるって。
ーーーーーー
9/24
第二次世界大戦が終わった時。「大英帝国の世界」は、「米ソ対立の世界」に変貌していました。日米開戦によって、ドイツとイタリアは「日独伊三国同盟」の取り決めに従い、アメリカとの戦争に自動参戦することになり、これはアメリカが欧州戦線に参加する根拠にもなりました。
ナチス・ドイツを壊滅させたのはソビエトだと言っていいでしょう。アメリカの参戦は、ドイツをソビエトに占領させないため。そして、ソビエトは、日本をアメリカに占領させないため、不可侵条約を破って北海道上陸を目指しました。
言いたいことは。
どれだけの命が失われても、それは大国の覇権争いの流れの中での「一幕」にもならない細事。だから、全ての戦争映画は「反戦映画であってほしい」し、更に言うなら「戦闘の場にヒーローなんか、居てはならない」。利用されるからね。いや、ヒーローは居ても良いけど。例えば、沈没した敵国戦艦乗組員を救助した帝国海軍指揮官とかね。
鎮魂は良いんですけどね。過剰演出と杜撰な史実・戦闘場面描写連続のヒーロー映画なんか、要らないです。
bloodtrailさん、コメントありがとうございます😊
確かにミリタリーマニアや戦記物好きの人からすると腹が立つ描写が多いのかもしれませんね😅
20年のリサーチというのは流石にちょっと盛ってるだろ〜エメリッヒ〜、とか思っちゃいますが、戦争知識0の立場からすると「なるほど、よく調べてあるなぁ」と感心してしまいました!
アクション映画になってるのは破壊王のご愛嬌、ということで(笑)
bloodtrailさん、コメントありがとうございます😊
自分はミリタリー関連のことに対する知識がほぼ0なので、戦闘のリアリティとかそういうことはよくわからなかったのですが、やっぱり戦争映画≠アクション映画という図式は必要だと思うのです。
その点では、本作はあまりに英雄を描きすぎていて、観ていて「うーん、戦争ってそういうことなの?」と思ってしまいました😫
msmniaさんへ
コメント、ありがとうございました!
SFとして見れば、及第点ですかねぇ。SFならバトルシップくらい、ぶっ飛んで欲しかったですけどw
この映画は見方によって如何様にも取れる映画です。私は先入観としてエメリッヒ節とCマネーの合体である種の映画を期待しておりましたが、後半は良い意味で裏切られました。まぁ、戦争映画版インデペンデンス・デイといった趣で。SF映画にカテゴライスしたほうが良いかなと思いました。
おはようございます。
そして、有難うございます。
スペシャリストから観ると、イロイロ瑕疵がある訳ですね。
帰宅後、お願いした戦艦名を含めて勉強します。
重ねて、有難うございました。