「岩高水泳部の3年間はフォーエバー・・・なっ!」子供はわかってあげない カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
岩高水泳部の3年間はフォーエバー・・・なっ!
原作未読。
甘酸っぱくもほろ苦くもないが、爽やかでほんの少しだけ青臭い青春とか初恋とか・・・、もどかしさや疑わしさの中にも隠し事のない暖かく確かな親と子の愛情とか信頼とか・・・、ありきたりの表現だがそれらを軽妙かつ軽快なタッチで描いた良作で、空と海とプールの鮮やかな青さ、縁側と風鈴と蚊取り線香と花火といった昭和の夏の風景などに思いっ切り後押しされ気持ち良く泣かされた。
父親らしいことをしてあげたい(してみたい?)が娘との距離の詰め方に慣れておらず言葉少なく不器用な実父と、いつも近くにおりあたたかく見守る理解ある母親とで娘への愛情の注ぎ方はそれぞれだが、しっかりと真っ直ぐに伝わっていることが全体を通して感じ取れることができるようになっている。
トヨエツは行方知れずの実の父親役を別のテレビドラマでも演じていたこの役のベテランだが、さすがにあの海パン一丁姿は同年代のイケメンおじさん俳優達が演じるにはまだまだ時間がかかるだろうと思わせる程に最高にカッコよかった。
たった数日しか一緒にいないくせに娘の男友達に不快感を示すシーンでは血の繋がりだけでなく、別れて暮らしていても片時も忘れる事がなかった事を想像させ、滑稽ではあるがジーンと来てしまう一番好きなシーンだ。
主演の上白石萌歌さんは実年齢は若干設定より上のようだが(撮影は公開の2年前)、見た目が幼く等身大の女の子として高校生役を違和感なく誠実に演じており、終盤に2回ほど泣くシーンがあるが両方とも引き込まれるような気持ちで見入ってしまった。
悪い人が一切出て来ず、重めになりがちなテーマを敢えて薄口仕様にした事で観ているものをふんわりとした幸福感で包み込むような作品であり、この夏必見の映画と言っても良いと思う。
最後にこれだけは言いのだが、
斉藤由貴さんはいつの間にあんなに素敵で存在感のある女優さんになったのだろうか?
本当に力の抜けた自然で素晴らしいお芝居に感動すら覚えるほどであった。