オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡のレビュー・感想・評価
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スポーツ大国=ロシアの闇が浮かび上がる
完璧にフープを操ろうとする新体操選手が思わず手を滑らせた途端、練習場に場違いなブランド服で着飾った鬼コーチが現れ、聞くに耐えない罵詈雑言を投げつける。間に挟まれたトレーナーが中間管理職みたいに凍りつく。ロシアの新体操を取り巻く恐怖の実態を克明にリポートするスポーツ・ドキュメントからは、画面には直接姿を現さないスポーツ大国=ロシアの、スポーツを国威掲揚の手段に使ってきた矛盾の本質が、薄らと見えてくる。勝つためなら手段を選ばず、選手自身の尊厳は後回しにする。。。ことは新体操だけで終わらない。長引くドーピング問題、女子フィギュアスケートの目まぐるしい主役交代劇、等々。ここには、スポーツファンが長らく抱えたきた疑問に対する答えが、さりげなく提示されているような気がする。
リオ五輪で金、の映像がないのが物足りない
監督のマルタ・プルスはポーランド出身のまだ30代前半の若い女性。自身が新体操とコンテンポラリーダンスの経験者だそうで、なるほど新体操選手の動きと表現をとらえるカメラワークが的確だ。さらに、日本ならモラハラで親からクレームが付きそうな罵詈雑言を選手に浴びせてスパルタ指導するロシアの強烈なコーチ、イリーナ・ヴィネルから撮影許可を取り付け、さらに彼女の汚い言葉まで映画に収めることを納得させた交渉力、突破力にも感心する。
ただ惜しむらくは――おそらく監督のせいではなく、権利にがめついIOCが試合映像の使用を許可しなかったからだと推測するが――、作品のハイライトとなるべきマムーンのリオ・オリンピックでの演技が欠けている。それまでの国際大会での本番はたびたび映るのに。女王になるカタルシスが映像で提示されないので、マムーンが精神的に追い詰められる苦しさが残り、欝々とした印象で終わった気がした。
【金メダルを取るために、自分(とコーチの罵声)に打ち克つ!イリーナ・ヴィネルコーチの指導(罵声)が、強烈過ぎるドキュメンタリー映画。】
-2016年リオ五輪の新体操個人総合金メダリスト、ロシアのマルガリータ・マムーンの五輪直前の姿を映し出したドキュメンタリー。-
■印象的だった事
・"そこまで言うか!イリーナ・ヴィネルコーチ!”
のお洒落な帽子、原色系の服装、服飾品(ネックレス強烈)を含めた凄さには驚いた。
ーロシアの新体操の総合コーチ何だから、報酬凄いんだろうなあ、と思っていたら、旦那さんも凄かった・・。-
〈イリーナ・ヴィネルコーチの暴言の数々の極一部。〉
・ポンコツ!
・くたばっちまえ!
・ふらふらしてんな!軸がぶれてるんだよ!
果ては、マムーンのガン闘病中の父にまで、言及し、"瀕死の父を思い演じろ!"
である。
-いくら、数々のメダリストを育て上げて来たとはいえ、凄すぎるなあ。パワハラどころじゃないよ・・。
彼女の罵声はマムーンの直接のコーチにまで及ぶ・・。-
■映像では、マムーンの満面の笑顔は、恋人(同じ、アスリート何だね・・)と暫し会った時位しか見られない。
念願の金メダリストになった時も笑顔より、"やっと重圧から解放される・・"という安堵感の方が身体から漂っていた。
ー彼女は、絶対に、ロシアのために何て思っていないと思う。銀メダルに輝いたヤナ選手も、その前の映像では、”ロシアのために・・”と笑顔で言っていたが、表彰式の映像では笑顔がなかったものなあ・・。彼女も、罵声を浴びながら頑張ったんだろうなあ・・。-
<新体操王国ロシアの、威信を掛けて金メダリストを育て上げる姿には、感動よりも何か複雑な気分になってしまった作品。
アレくらい罵声を浴びせられても、やり抜く鋼のメンタルが金メダリストには必要なんだろうなあ。
エンドロールで流れた文章にも納得した作品でもある。>
ロシアスポーツ界のダークサイド
かつて日ソ対抗女子バレーボールで来日したソ連の監督にカルポリという人がいた。
彼は選手たちが失点したりミスしたりしようものなら顔を真っ赤にして選手たちを怒鳴り散らしていた。私はロシア語はわからないが傍目に見ても悪口雑言であることは想像に難くない。でも、それは、80年代、今から40年くらい前の話、そう昭和の話である。
しかしながら、ここに出てくるマムーンのコーチは昭和がタイムスリップしてきたような感じで、
予告編でかなりエグい婆さんだなとは感じていたがこれ程とはね、
マムーンを称賛する一方で国威高揚の部品くらいにしか選手を思っていないロシアのスポーツに対するリスペクトのなさが如実に現れていると思う。
パワハラ。
2017年のリオ五輪新体操で金メダルを獲得したマルガリータ・マルーンのリオまでの裏側を追ったドキュメンタリー。
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最近日本でスポーツ界のパワハラのニュースがよくやってたけど、この映画パワハラどころの騒ぎじゃない。
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ロシア新体操会のトップみたいな化粧ケバケバ、アクセサリーゴツゴツ、派手な服のおばば様がとにかく口が悪い。よくこれ撮影許可出たなと思うレベル。
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さらにその下でマルーンを指導するコーチとそのおばば様がバチバチして、コーチがマルーンにあなたがちゃんとやらないと私が怒られると怒って、さらにマルーンがそれをほかの男のコーチに愚痴るという、なんとも女同士の怖い世界(笑).
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圧倒的な権力を持つトップと中間管理職のコーチ、厳しい指導を受けるマルーン、この関係を見てるだけで面白い。とにかくこの3人が強烈すぎて、他のサポートメンバーの男性(彼氏も含め)がもう空気のように存在が薄い。
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アスリートはここまで自分を追い込まないとダメなのかと、納得しかけた時、ふとロシアのドーピング問題について思い出した。ロシアって国の偉大さ=スポーツでの勝利みたいな所あるから厳しいロシアのスポーツ界の闇。
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最後オリンピックの映像が見られなかったのだけ残念。
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本作を観てロシア新体操界を志す人がいるとしたら、その人こそ真の強者。
本作の主人公、マルガリータ・マムーンはロシアの新体操選手として数多くの実績を残していますが、2016年のリオ五輪の直後に引退しているため、新体操に関心のある人を除いて、彼女の名前を記憶している人はそう多くはないかも知れません。そんな彼女のドキュメンタリー映画をなぜ今公開なのか?という疑問を持ちつつの鑑賞でしたが、冒頭からそんな考えは吹き飛んでしまいました。
20歳にも達していない彼女が練習や競技の直後からコーチから受けるのは、激励や労いの言葉ではなく、罵倒の嵐(もちろん編集に当たってその部分を重点的に盛り込んでいるのでしょうが)。マムーンに、文字通りの「パワーワード」を浴びせかけます。
「あなたは人じゃない、アスリートよ。感情はいらない」
「まさに負け犬。本当に愚か」
などなど。
ロシア語の罵倒語を知りたい人にとっては語彙を増やす好機かも知れませんが、通常の観客は、マムーンでなくとも思わず耳を塞ぎたくなるでしょう。
本作では特に、ロシア新体操界の伝説な指導者イリーナ・ヴィネルの存在感がすさまじく、映像に自分のどのような言動が映されているのか、まったく意に介していない様子。70歳近い御年なのに、マムーンを置いて颯爽と歩き去る彼女が履いていたのは赤くいピンヒール。「そこも隙なしかよ!」と危うく声に出しそうに。
時折挿入されるマムーンの見事な動きには目をみはりますが、制作者の意図なのか、割とあっさり見せ場を切り落としています。新体操の女王としてのマムーンを観たい人には相当フラストレーションが溜まるでしょうね。
これも製作上の意図なのか、本作には登場人物の説明やナレーション、独白などがほとんど含まれていないため、マムーンとコーチの関係はおろか、マムーン自身が何を考えて、どうして苛烈なしごきに耐えているのかがほとんど読み取れないようになっています。
画面に映える衣裳はきらびやかなのに、人物の感情や表情が全く掴めない…。ある米批評誌は本作を「ホラー」と評しましたが、その気持ちも分かる!
新体操を楽しむきっかけに
本来は当初の公開日の4月に鑑賞し今夏の五輪の観戦への弾みに繋がればなと思ってたが、五輪も来年に延期され(開催されるのかも危ういが…)本来の鑑賞目的とは多少ズレは生じてるが、それでも非常に見応えのある作品であった。
僕自身も長年スポーツをやっていた事もあってこのタイプのドキュメンタリー作品は勝手ながら自己投影しながら観たりして非常に楽しめる事もある。
特に僕も個人スポーツをやっていた事もあって、今作のような個人スポーツ、そして採点式のスポーツの苦悩さは団体スポーツとはまた違った苦しさ、辛さがあり、リタの心情を非常に共感しながら観る事ができる。
今作ではリタの経歴や歴史を深く追求したり、新体操というスポーツに対して深く追求したりする作品ではない為その辺りを期待すると若干物足りなさは感じてしまうかもしれない。
特にリオで金メダルを獲得した描写はほとんど描かれていない為、この作品はリオで金メダルを獲得が最終地点の作品ではなく、あくまでリオで金メダルを獲得するまでの過程の苦悩さにスポットを浴びた作品だということを理解して観るとより深く楽しめるのではないか。
近年のスポーツはより効率的の良い練習、取り組みなんかにスポットを当て新しいスポーツを取り上げる事が多い中、この作品で描かれているような具体的な技術指導はさておき、精神論を唱え叱責する監督、コーチと選手との姿には何か昔を思い出しながら、そしてリタを心から応援する気持ちになりながら楽しませてもらった。
強国ロシアは罵詈雑言で創られる
あくまでもメインの被写体は、新体操選手のマルガリータ・マムーン(リタ)…のはずなのに、観終わって一番インパクトを残すのが、彼女のヘッドコーチのイリーナ・ヴィネル。
とにかくリタへの怒涛の罵詈雑言が、笑っちゃうぐらいヒドい。いや、ヒドいを通り越して、よくもまぁこんなに湯水が湧き出るように出てくるなと感心するほど。
宣伝文句では『セッション』や『ブラックスワン』と比較されているが、どちらかといえば『アイ・トーニャ』での、トーニャ・ハーディングの鬼母の関係に近いかも。「あんたはスケーターじゃなくてファイター」という、あの母親のセリフに近い言葉も実際に飛び出す。
当初こそ、イリーナは密着撮影に難色を示していたらしいが、いざ完成してラッシュ映像を観たら満足し、ロシアの映画祭で上映してほしいと頼んだとか。
これこそが強国ロシアの実態。怒られまくり、叱られまくりのリタが観てて気の毒になるが、国の威信がかかっている以上、勝利以外は許されない。
そりゃ他国が勝てないワケだ。
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