ファーストラヴのレビュー・感想・評価
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少女時代も演じきる北川景子は最強
結構辛辣な作品と聞いていたので、大好きな堤幸彦監督の作品では東野圭吾原作の『人魚の眠る家』を思い浮かべた。キリキリする心理を描くのも定評のある堤監督なので期待をもって鑑賞。
国家資格である“公認心理師”の真壁由紀(北川景子)が、父親殺しの嫌疑をかけられた聖山環菜(芳根京子)を相談対象として取材するのだが由紀も自身に類似のある問題を抱えており、トラウマを抱えているカウンセラーが被疑者の相談ってどうなの?と思ったが、カウンセラーにはその上位レベルのカウンセラーが居るというし現実世界でもよくあるケースなのかも。実際、由紀は久々登場の窪塚洋介演じる夫の血の繋がりのない弟(ややこしや~)で弁護士の庵野迦葉(中村倫也)に指摘される通り(この迦葉の存在もポイントなのだが)、自身の過去に引っ張られ相談の体制に良くも悪くも影響が色濃くみられる展開に。
この映画を観て感じたのは主演の北川景子の全能振り。やはり堤監督は女優の特徴・魅力を引き出すのに他の追随を許さない。素朴に見える少女感の残る学生時代のリアルさに加え、クライマックスでの感情が最大限に揺れ動くシーンを見事に演じきり大いに魅了させられた。
とてもスケールの大きな作品
公認心理師という資格は本作品で初めて知った。まだ新しい制度らしく従来の臨床心理士の多くが公認心理師資格を取得していることから、臨床心理士との違いは殆どないそうだ。日本の行政は、商売になりそうな分野では必ず資格を設けて許認可の権益を得ようとする。公認心理師の資格も、教材会社や資格試験の運営会社などからバックマージンが入り、最終的には役人の天下り先にもなるのだろう。厚労省はそういう役所だ。
それはともかく、日本はいま経済的に下りの時代に入っている。イケイケドンドンの高度成長から成熟期を経て、後退期に入っているのだ。経済が下り坂というのは市場の縮小という意味である。財政ファイナンスそのものであるアベノミクスという詐欺みたいな政策で見かけの株価が上がっていても、実体経済は縮んでいるのだ。少子高齢化で労働力が減少しているということは、消費する人口も減少しているということだ。共同体は常にひずみを生じさせ続けているが、経済が減少すると生じるひずみは大きくなり、貧しい人々から順に自由や権利が蹂躙されていく。
ひずみは次第に富裕層にまで蔓延し、人々は自分よりも弱い人に不満の吐き出し口を求めるようになる。差別やいじめやハラスメントである。老若男女の誰がターゲットになるか分からないが、いじめは弱い人から更に弱い人へと連鎖し、最後に一番無力な子どもに行き着く。子どもは他の子どもをいじめ、最後の子どもは自分を傷つけるしかなくなる。リストカットは絶望ではない。怒りなのだ。
本作品で主演の北川景子が演じた真壁由紀の心情は、子どものころの行き場のない怒りで苦しんだ経験のある人なら、共感できる部分も多いと思う。同じように追い詰められた、芳根京子演じる聖山環菜の気持ちもある程度は推測できる。環菜の父親は社会的に認められた著名人だ。自分の怒りは父親の権威や権力の前に否定されるだろう。怒りを訴えても誰も分かってくれない。分かってくれたのはユウジくんだけだが、父親によって引き離されてしまった。環菜の証言がコロコロと変わるのは、怒りを押し隠していたからだと思う。環菜は最後の最後まで自分の怒りを口にしなかった。
時代は常に子どもたちに犠牲を強いる。いじめの連鎖は断ち切らなければならない。いじめられた子どもが子どもをいじめる大人にならないために、公認心理師がいるのだ。少なくとも主人公真壁由紀はそう信じている。子どもに必要なのは物質的な豊かさではない。好きなだけおもちゃを買い与えても、好きな遊園地に何度連れて行っても、子どもは満たされない。満たされない子どもはいじめる子どもになる。まして下り坂の日本では物質的な不足が心理的な不満を増幅させる。
子供が満たされるのは先ず承認欲求の充足で、次いで達成感だ。承認欲求は人間の成長において比較的早い段階から現れる。自分が何かをして親が笑えば、それを繰り返す。しかし何度も繰り返すと誰も笑わなくなる。子どもは親が自分に飽きたと思って居場所がなくなったように感じる。承認欲求は危険な側面を持っているのだ。
大人になるにつれて他人からの承認欲求を満たすことよりも、好きなことを追求してひとりで達成感を得るようになる。自信を持つのである。自信があるから他人と関係なく自分で自分を認めることが出来る。しかしいつまでも承認欲求が強い人間は、その自信のなさ故に狭量で不寛容であり、人間としての弱さ故に立場の弱い人をいじめる。世の中はいつも弱い人で溢れている。世界中にいじめや差別が蔓延しているのだ。公認心理師はひとりでも多くの人を「いじめる自分」から解放するのが仕事である。
そのように考えていくととてもスケールの大きな作品だ。原作は未読なので不明だが、少なくとも映画ではスケールの大きさを感じた。堤幸彦監督の世界観の大きさなのかもしれない。北川景子の顔のアップがとても多い作品で、その多くは無言なので、観客はその美しい表情の向こうにある悲しみや迷いや怒りや憎しみなど、公認心理師として決して表情に出せない心の闇を想像する。当方はそれに加えて、世界中の子どもたちの悲しみを背負う悲壮感も感じた。スケールが大きいと思った理由はそこにある。
主人公真壁由紀が公認心理師として被告と向き合う一方、一女性としての真壁由紀を過去から現在に亘って描くことで、主人公の世界観と作品の世界観が徐々に一致していく。言葉で説明しないシーンも多く、立体的で奥行きのある作品である。北川景子は見事な大熱演だった。
北川景子窪塚洋介芳根京子Uru
毎回レビューのたびに言ってごめんなさい!
キャストが豪華!!!!!
北川景子の透き通るような凛とした女性像!
凛とした女性の象徴に引けを取らない
優しさの権化の様な成熟した窪塚洋介!
夫婦をありがたいと思えない個人にも
憧れられる様な素敵な夫婦像!圧巻でした!
芳根京子はドラマコタキ兄弟と四苦八苦で
初めて知りましたが、何かを秘めて
小出しにする演技がびっくりするほど
上手で毎度目を奪われてしまいます!
劇中歌にも一貫されて登用されている
Uruさんの楽曲もグッと涙を誘います!
作品テーマはとても重いもので
家庭と男女本能と行政を複雑に組み合わせたもので
とても考えさせられる作品です!
個人的に個人の適齢期であれば
女の性事情ってこんなに絡まること
無かっただろうになあと思いました!
(あくまで個人的感想です!)
北川景子さんの迫真の演技に注目
トリックシリーズを作った提幸彦監督がミステリー原作を映画にすると知った私は迷うことなく劇場に行きました。しかも主演が北川景子さんと中村倫也さんが出演するとなれば期待せずにはいられなくなりました。
観終わったとき、素直に良い映画だと思いました。精神が不安定の人の本音を聞き出す真壁と被疑者の聖山環菜の弁護を引き受けることになった庵野は、事件の全容を調査するべく聖山の交友関係や母親の事情、画家である父親の生活環境を捜査する。
気になった点は、心理学者と弁護士の二人が事件の具体的な内容を調べるので、警察の調書や刑事への聞き込みがなかった。普通ミステリーだったら警察関係者を映画の中に組み込むはずなんですが、今作は警察の意見がないのが特長でした。
トリックシリーズでもマジシャンと物理学者が超常現象で殺人が行われますが、ポンコツ刑事二人が出てくるだけで、中心は素人が事件に挑む流れになっているので、「素人二人が事件を解決する」という堤監督のスタンスにマッチした演出でした。
聖山の殺人の原因や、真壁と庵野の関係にも注目ですが、個人的には北川景子さんの身体能力が印象的でした。中でも土砂降りの雨の中で雨宿りするシーンで、庵野が真壁にキスしようとする寸前、真壁はそれを拒否して再び雨の中に走って駆け抜ける場面がツボでした。尋常じゃない雨の中全速力で走る北川さんの足の速さが速すぎて思わず笑ってしまいました。
良い映画だな
兄がみんなを救ったのだろうか?
一番の感動シーンは、北川が夫に諭され、渾身の嗚咽をするところでした。彼女の過去が全て浄化された感激の涙でした。泣けます。このドラマはこの夫の存在が鍵です。中村と北川にとって最高の避難所が彼なのです。予告では芳根京子が狂人のようなイメージでしたが、本当は血の繋がっていないセクハラ親父のせいで、彼女は心に傷を負っていたのです。北川も同じように父からのセクハラで心に傷を負っていたのです。しかも、中村も母の愛を知らない傷を持って存在しています。いくつかのどんでん返しを通して、最後には気遣いのある「強い愛」によって皆んな救われて行きます。ラストは画面いっぱいの愛に泣けてしまいます。人間はいろんな傷を負うけれども、最後には乗り越え傷を修復し、幸福という醍醐味を味わうようにできているのでしょう。この作品は、人間の健全な精神を育み育てる愛が必要であるということを、観ている人にしっかりと発信してきていました。そういう世界を、これからも作り続ける人間の一人でありたいと思わせてくれました。秀逸な作品です。
無駄なシーンがないとは思わないが
見応えありました!
キーワードは「見る目」
島本理生の第159回直木三十五賞受賞作「ファーストラヴ」の映画化であるが、2020年にもNHKの2時間ドラマとして一度映像化されている。
ドラマ版の主人公を演じていたのは、真木よう子で今回は北川景子という、「セリフ読んでます感」全開の女優繋がりではあるのが、今作に関しては、その北川景子の棒読み感、セリフ感が良い方向に機能しているといっていいだろう。
というのも主人公の公認心理師・真壁由紀というキャラクターは、自分の過去やトラウマから身を守るために、常にバリアを張っているようなキャラクターだからである。
セリフを呼んでいるだけのような、いつもの北川景子の演技が、「普段、冷静に振舞っている人もこんなに取り乱すことがあるんだ」という風にリンクすることによって、今回は凄く馴染んでいるし、事件の真相を探ることで、自分の過去とも向き合っていき、次第に心の傷を吐き出すようになっていく過程を上手く表現できているのだ。
キャラクター性を理解した上では、ドラマ版で真木よう子がキャスティングされた理由も何となくわかってくるのだが、普段は北川景子の演技をそう思ってるのかな…という、キャスティングした人の無意識な悪意も感じられなくない。
若手注目株女優の芳根京子も最近では、土屋太鳳とダブル主演の『累』や先日放送されたドラマ『君と世界が終わる日に』など、2面性のあるキャラクターが得意になってきたこともあって、見事な熱演だ。
これは社会の構造や概念が自然にそうさせている部分があるのかもしれないが、男性が女性をみる目線というものの、根本的な食い違いにメスを入れていて、その中でも被写体や道具のようにしか思っていない男もいる。
環奈がアナウンサー試験を受けたときの目線というのが、面接としてではなく、女性を見る男の視線だったという指摘が、今日のアイドルのような選出のされ方をしている大手放送局アナのあり方を捉えているようでもあった。
環奈の起こした事件をきっかけに、まだまだ蔓延る男性社会の抱える問題点を浮き彫りにしていく。
その中で心理的損傷を負ってしまう女性がいるということ、初めて信じた人、恋した人にも人間同士としてではなく、あくまで異性として意識した目線で見られてしまったということ、それを受け入れて「男なんてそんなもの」だと割り切って生きていくしかないこと…これも問題で、逆に男性差別にもつながっていったりもするのだが、そこはあえて、出来過ぎなぐらいの懐の広い我聞というキャラクターや過去には過ちを犯したが今は違った観方ができている迦葉や小泉を配置することで不毛な問題にも光を与えているようにも感じられた。
テーマとしているものとしては、全く違うが、事態が二転三転する法廷劇という点では福山雅治主演の『三度目の殺人』という作品があり、その作品では更に四転させることでミステリー要素を際立たせてみせたが、今作はそういったミステリー作品と比べれば、実にストレートなメッセージ性を持った作品である。
時には男女の恋愛や性欲といったものへの感覚の違いをコメディの題材として扱ったりすることも多いが、一方では、そういった感覚のズレによって、トラウマとなり、一生の傷になる人もいるということを忘れてはいけないのだ。
感情とは別に動物的でオスとメスのような潜在意識によるものもあったりして、一筋縄ではいかないことではあるのだが、人間であるが故に、割り切っていいのかという意識も働いたりして、つくづく厄介な生き物であると感じずにはいられない。
環奈と由紀の過去に触れ、心が抉られていくことで、社会や男女間意識構造の闇に触れていくようで、常に2人の投げかける言葉が心に突き刺さる作品だ。
全体として満足感あり、ただ。。。
原作読んでませんが、ストーリーがかなり練れていて、読んでも面白いのではないかと想像させる映画でした。
芳根京子は、以前から感じていましたがどこか危ない感じがする役者さんで、今回もそれがすごく良い面で出ていて感心しました。
一方、北川さんは好きな役者さんなんですが、ちょっと演技過剰な気がします。
ただ、それは演出上の問題なのかもしれませんが、邦画を見ているとそういう気分になることが結構あります。(泣き方とか騒ぎ方とか)
久しぶりに見かけた窪塚さんがたいへん素敵でした。
全体のストーリーは良かったんですが、ディテールではちょっと動機として弱いと感じる部分とか、そこは説明してくれないんだ、という部分がありました。
前者は私が男性だからかもしれません。
後者については、わざとかもしれません。
しかし、こういう映画にありがちな後味の悪さもなく、エンターテインメントとして仕上げているところに監督の手腕を感じました。
そこそこ長い上映時間でしたが、100分くらいでまとめられたら、更に良いなと思います。
初めての愛
予告から、サイコパスによる犯罪かと思ったら違いました。あの「動機はそちらで見つけてください」という何度も聞いたセリフが、そういうシチュエーションで出てきた言葉だったとは…。まんまと予告に乗せられました。
とはいえ、なかなか引き込まれる作品で、見応えがありました。サスペンスものなので、ネタバレを避けるために多くは語れませんが、現実にも似たような事件が起こりうるのではないかと思いました。少なくとも、この事件の背景にあるような親子関係や男女関係で悩んでいる人は確実にいます。本作で描きたかったのは父親殺しではなく、むしろそちらのほうだったのだと思います。それゆえ、最終的には事件の真相が明らかになるのですが、最後まで胸くその悪さが残ります。
この胸くその悪さは、観客に突きつけられた課題であり、その答えのヒントは、証言台に立った小泉や由紀の夫の我聞にあるように思います。全体的に、環奈や由紀のサイドから描かれるので、見方が一方的になっている気もしますが、今の社会に一石投じるという点では、意味のある作品になっていると思います。
タイトルのファーストラヴは「初恋」ではなく、「初めての愛」だと感じました。それは異性に寄せる恋愛といった類のものではなく、自分を受け止めてくれる無償の愛であり、環奈が由紀から、由紀が我聞から感じたものがそれだったのではないかと思いました。
主要キャストは、北川景子さん、芳根京子さん、中村倫也さん、窪塚洋介さん、木村佳乃さんと、なかなかの顔ぶれです。特に芳根京子さんと窪塚洋介さんの演技が秀逸で、涙を誘います。一方、北川景子さんは、決して悪くはないのですが、「真壁由紀」より「北川景子」が前面に出て、なんとなく作品に溶け込んでないように感じてしまったのは残念なところです。
緊張感ある序盤が良かっただけに…メッセージが弱く端的なのが残念
『望み』のような緊張感が漂っていたこともあり、期待をしていたが、少し半端なメッセージになったという印象。テーマがテーマだけに、もう少しナイーブに扱うべきだったように思える。
公認心理師の真壁由紀が調べることにした女の子は、自分と似た顔をしていた…。そんな記憶と感覚を覚えたまでは凄く芯があって見ごたえを感じる。しかし、彼女たちが全て被る罪と記憶なのかと言われると、それは違うのでは?むしろ、そこを端的に表現していることに爪の甘さを覚える。ファーストラヴによって繋がれた事件を、性で簡単にまとめるには早計だった。そこが残念。
緊張感や人間の言葉で対峙するような描き方がしっくり来るようになってきた堤監督。それだけに、もう少し踏み込んだ答えを出してほしかった。トータル、可もなく不可もなく…という作品。
これは 良質 だれが主演かわからなくなる ひとりひとり 背負うもの...
男として真摯に向き合わないと
原作未読。父親を殺害した罪で逮捕された女子大学生。彼女を取材することになった公認心理師と担当弁護士は彼女の心を開かすことができるのか?
法廷劇のような体裁なんだが、話の本筋は男からのトラウマからの克服だった。このトラウマの描き方が秀逸。少女に向けられる男の目。性の対象として見つめられる怖さがじっとりと描かれていた。観ていてつらくなる。気づかないうちに自分もそんな目線を送っていたのかもしれない、なんてことを考えさせられる。
主人公の由紀は、夫の弟(そして今回の事件の担当弁護士)と学生時代に少し恋愛関係にあった。しかもそれを夫に隠しているってところも舞台設定として素晴らしい。
後半は法廷でのやり取りが多くなるが、やはりメインではない。ただ、そこでの証人たちの発言が見せ場ってことになる。ラストはハッピーなものではないが、よかったねと声をかけたくなるもの。
芳根京子の演技がよかった。幅が広くなってきた。これからも注目の女優さんだ。そして堤幸彦監督。最近はシリアスな路線の作品が続いているがどれもいい。大御所って感じの風格さえ感じる。
好物の社会派推理物ではありませんでした。
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