ミッドナイトスワンのレビュー・感想・評価
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今年、この映画を観ないと絶対損します。
弱さを肯定しない、弱さを否定しない、美しい映画
ネタバレなしの前評判を漁るほど映画館で観たい気持ちが募って、今日足を運んで来ました。観ているうちにいつの間にか、静かに、凪沙に心が寄り添っていき、ラストシーン、凪沙が自分に乗り移ってきたかのような思いでスクリーンを見ながら涙を流していました。バレエを踊る一果の姿はどのシーンもとても美しく、スクリーンで観て良かった!と強く思ったところです。
一果と出会うまで、様々なことに踏み切れなかったのだろう弱く優しい凪沙。そんな自分自身に苛立ちながら生きてきた凪沙が、踊る一果に強く心惹かれ、一果を思うことで強くなれることを知った。しかしそれもまた側から見れば依存とも言える凪沙の弱さであるところが、何とも悲しく、美しい。
トランスジェンダーが、というより、人の弱さ、そこから来るどうしようもない運命について、肯定も否定もできないと思ってしまったというのが、観たばかりの今の正直な思いです。不幸だったのか幸せだったのかも決められない、決めてしまってはいけないと思えるところが、この映画の魅力なのかもしれません。
素晴らしい
海へ行くより病院へ
日本版ビリー・エリオット?
現在、赤坂ACTシアターで上演中のミュージカル『ビリー・エリオット リトル・ダンサー』との共通項がいっぱいなのでした。
① バレエの上手な少年少女が主人公。両方とも才能はあるのに経済的な問題がある。
② バレエは超有名作品の『白鳥の湖』が取り上げられている。本作では第2幕のオデットのヴァリエーション。
③ 主人公は同性から好意を持たれる。
④ 祖母役は両方とも根岸季衣。
⑤ バレエの先生は元宝塚歌劇団のトップスター。本作では真飛聖。ミュージカルは柚希礼音と安蘭けい。
主演の草彅剛が素晴らしい演技。新人の服部樹咲がバレエ場面も見事にこなしていました。特に指先が綺麗。最後の場面の指先から爪先までの美しいラインに驚きました。
宝塚歌劇団の元トップスターってみんなバレエの先生が似合うなあ。真飛聖もよかったです。
痛々しさの中に救いがある。
家庭環境に問題を抱えるバレエ少女のシンデレラストーリーと、
トランスジェンダーの男が心身共にズタボロになっていくさまが同時並行するお話。
▼葛藤を抱えるダンス少年が主人公の『リトルダンサー』と、ひたすら主人公がボロボロになっていくダーレン・アロノフスキー監督作品(レスラー、ブラックスワン、レクイエムフォードリームなど)の風合いがマッシュアップされたようなシナリオ
▽トランスジェンダーのなぎさがズタボロになっていくだけの映画だったら、痛々しいだけになっていたかもしれない
▽そこに逆境がありながらもキラキラ感がある少女のシンデレラストーリーがあるから、絶妙な塩梅になってる
▽ダーレン・アロノフスキー監督作品はひたすら主人公がズタボロに追いつめられていくお話が多い。心には残るけど、救いのないほど痛々しくてまた観ようとはあまり思えないことが多い
▽今作はがっつりめな痛々しさはあるものの、ちゃんと救いがあってまた観たいかもという気にさせてくれる
▼シナリオの世界観がきれいに三分割されてる
①絶望感を抱える主人公ふたりが対立する
②バレエによって主人公同士が融和する
③二人の主人公の明暗が天地に分けられ離別する
▽②→③の移行はやや唐突感があったけど、全体的に緩急が大きく、観ていてやはり心が揺さぶられる
▽シチュエーションが、ザ・東京感の新宿、のどかな広島、タイっぽい東南アジア、ニューヨークと、ガラッと変わるのもシナリオのダイナミックさを後押ししてる
▼やや過剰気味で派手めな演出が多い
▽主人公が「なんで私だけ・・・」というような、心の中の葛藤を台詞でしっかりしゃべったり、実家で修羅場むかえて胸が露わになったり
▽演劇のような派手な演出が目立ったが、あえて意図的にそうしたのではと思った
▽主人公ふたりは、どちらもバレエとショーパブというように、舞台の上で華やかに演じるキャラクター
▽この映画自体もまた舞台上の演劇のようなエンターテイメント性を帯びているとするならば、そんな派手めな演出は、全然おかしくない。むしろ効果的。
▼メインテーマのピアノの音楽が、がっつり坂本龍一「戦場のメリークリスマス」の中間部を意識して作られてるなぁ
▽音楽からもダイナミックレンジの大きい演出を意識的に狙ってるのが伝わる
▼いちかの親友や、ショーパブのオカマたちや、実家で修羅場中に奥のベッドに腰掛けるおばあちゃんなどの細かいキャラたちにも、自然としっかり記憶に残るような特徴を持たせていてすごい
▽★脇役でも衣装だったり、台詞だったり、小道具や、意外性のある主人公への動作で、印象に残すキャラクターにできる
▼女全開の草彅くん、女9:男1の草彅くん、女2:男8の草彅くんの、3つのフレーバーを楽しめる
▽本当に難しい役柄をやりきった草彅くんの勇気と努力とチャレンジ精神がすごすぎる。
▼勉強になったこと。東南アジアで性転換手術しちゃだめね。
▼なぎさが息絶えた海が、どうみても東京じゃない。
▽体調悪いのに東京からものすごい遠出したなぁ。そりゃ死んじゃうよ。。
名作
汚れた水槽
観てくれとしか・・・・
良い映画だった~!と簡単にお勧めできない。
胸打たれた場面を言葉で説明すると、実際より確実に安く浅くなるから
言葉にしたくない。観てくれとしか・・。
議論になっている部分もあるようですが、でも、役者の芝居と
映画とした構築されたあの世界を観て感じたものが全てだと思う。
トランスジェンダーがどうとか虐待がどうとか大事なのはそこではなかった。
とにかく、唇がわなわなと震えて観終わってからも何日も余韻が消えず
凪沙の言葉、あのピアノの音が目に浮かぶ。耳に残る。
母と弟が私の次に観に行ったが
感想を聞くと目を潤ませていた。
そして「言葉にすると安くなる・・」と話してくれなかった(笑)
もう少しユーモアとたくましさも欲しかった
心にズーンと重く響く映画でした。
昨日、テレビで「ミッドナイトスワン」の紹介コーナーを観て、早速昨夜レイトショーで観ました。
さほど大きくないスクリーンでしたが、半分くらいの入りで、久方ぶりに隣の席に人が座っている状態での映画鑑賞でした。
改めて草なぎさんはすごい俳優だと感じました。
「JOKER」でホアキン・フェニックスがアーサーそのものだったように、スクリーンの中では草なぎさんは凪沙さんでした。
トランス・ジェンダーについて無知で、こんなに苦しい想いを抱えて過ごす人がいることを初めて知りました。
凪沙の母親が、息子なのに女性の姿の凪沙に「病院に行って治してもらって来ておくれ」と泣いて頼むシーンは、どちらの気持ちも分かり、しんどかったです。
常識を当たり前と押し付けない。
例え親子でも、相手の尊厳を尊重する。
弱い立場の人が、強くないからという理由で虐げられることなく、弱いまま尊重される世の中にしたいと強く思いました。
「しんどい」「助けて」と声を発することができるから、今より生きやすい気がします。
一果のバレエの先生の、凪沙への接し方が好きでした。
「おかあさん」と呼ばれて嬉しそうな凪沙の顔、忘れられません。
新人さん素敵!
演技は素晴らしいが、脚本にリアリティーがない
簡単に語れない
この繊細なテーマを出来の悪い脚本と演出が台無しにしている。
前回観た映画は「パラサイト」。よく出来た映画だった。重いテーマを扱いながらテンポの良さと優れた脚本でいい映画だったと誰もがそう思う作品だった。
本作「ミッドナイトスワン」はそう言う意味では最低の映画だった。多分出演者自体はその選び方は別として、がんばっていたと思う。
邦画にありがちな無能な監督と脚本と演出がそれを台無しにしてしまっていた。不要で説明不足の登場人物の死や不幸、古くさい演出とセリフ、LGBTという繊細で、その存在をどう扱うかで観る人に光と影が強く印象づけられてしまうテーマを、こうもガサツで惨めなだけのものにしてしまっていることが、この作品の絶対的な罪だと言えると思う。
表現の自由はあると思うが、こうも稚拙な制作者には決して扱って欲しくないテーマだった。久しぶりに観た後に不快感だけが残る作品で、高評価をしているLGBTをあまり理解していない方たちに警鐘を鳴らしたい。
誰よりも一果の母だった
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