「壮絶に愛と夢を貫く人間ドラマ」ミッドナイトスワン みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
壮絶に愛と夢を貫く人間ドラマ
凄いという言葉では物足りない。とんでもない衝撃作である。傑作である。不遇な環境のなかで、極めてリアルな人生を生きながら絆を深めていく母娘の物語と、彼女達のバレエへの夢追い物語が見事にシンクロした悲哀溢れる人間ドラマである。
主人公を始めとして登場人物達の人生を容赦なく赤裸々に表現している。人生の壮絶さが心に突き刺さってくる。それでもなお、それでもなお、愛と夢を貫く物語に圧倒される。涙が溢れて止まらない。
本作の主人公は、新宿のニューハーフクラブで働く、トランスジェンダーの凪沙(草なぎ剛)。彼は、育児放棄された親戚の少女・一果(服部樹咲)を預かることになる。最初は反目していた二人だったが、次第に心が通うようになり、凪沙は一果への母性が芽生えてくる。そして、凪沙は、バレリーナになるという一果の夢を支えていくが・・・。
主人公を演じる草なぎ剛と少女役の服部樹咲が本作のキーパーソンである。様々な想いを内に秘めながら弱みを見せず気丈に生きようとする凪沙を草なぎ剛が完璧に演じている。凪沙になり切っている。一果との絆が深まるプロセスを、時に粗野に、時に母性を感じさせる演技で、巧みに演じている。今まで色々な役柄を演じてきた草なぎ剛だが、凪沙役は彼の最適役である。本作は彼の代表作になるだろう。
少女役を演じる服部樹咲は、親に見放され自暴自棄になった時の近寄りがたい雰囲気、凪沙との不器用な交流、バレエに打ち込む時の懸命さ、バレエを踊る時の艶やかさ等、不遇で多感な夢を追いかける少女という難役を見事に熟している。特に、有り触れた場所で地味な普段着でバレエを踊るシーンは、それまでの彼女の想いが体現され美しく切ない。熱いものが込み上げてくる。
ラストは希望を未来に託して終わる。壮絶な愛と夢の物語は希望で結実する。観終わって充足感で心が満たされる。
本作は、愛すること、夢を追いかけることの意味と壮絶さを我々に強烈に提示している。
こちらこそありがとうございます。ストーリーの流れはリトル・ダンサーなんですが、イギリス人にはない日本人特有の優しさがあふれた映画だと思います。これだけ人の死に納得出来た話はあまりないですね。
今後ともよろしくお願いいたします。