劇場公開日 2020年9月25日

「演技はいいが脚本が残念」ミッドナイトスワン 無名さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0演技はいいが脚本が残念

2022年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

草彅剛の演技はとてもよかったです。ニューハーフを演じるのに話し方は(きのう何食べたの内野聖陽のように)無理に作った感じもないし、佇まいや所作もとても自然で役になりきってたように思います。
そこが本当に素晴らしかったので手放しに賞賛してしまいがちですが、冷静にふりかえると映画の出来としてはエンタメ映画の域を出ないレベルだなと。

まず全編を通しLGBTである事に皆とても苦しんでるような表現をしていてなんだかなーって思いました。
例えば周囲もLGBTへ気遣いはあるんだけど、どこかで誰かの何気ない発言や行動で人知れず少し心を痛めるといった表現であれば「あ、ほんとは孤独なんだな」と伝わるのですが、そういう悪気の無い不理解ではなくわざとらしい悪意が多くて、露骨にセンセーショナルによせすぎていました。

イチカの前で泣き崩れ「私気持ちわるい?」「なんで私だけ…私だけ」と言って大泣きするシーンも説明すぎというか無理やりねじ込んだ感が強かったです。その世界で生きてる人ってこういつまでも割り切れずに発作的に感情が高ぶるものなのでしょうか?
どこかノンケの人間が共通して抱きそうなテンプレ的なLGBT像をなぞっている気がしてリアリティに欠けてる印象です。気づきがないんですよね。あ、実はそう感じていたんだ。って言う。
化け物だとか気持ち悪いなんて100万回言われたろうし、その感情に折り合いをつけて自分をさらけ出して長年生きて来たんだろうから、もっとその先の感情を見せて欲しかった気がします。
そういう意味で脚本が浅い気がしました。

あと、ケガをしてバレエが出来なくなったリンが他人の披露宴の最中に踊り狂ったあげくに飛び降りてしまいましたが、障害を負った人達があまりに人生に絶望し悲壮感を持ちすぎた表現をし過ぎている気がします。
まだ人生始まったばかりの中学生がケガをして、バレエが出来なくなったから死ななければいけないって程彼女はバレエに盲目に生きていたのでしょうか?あの歳で地下アイドルまがいの事をして男を金づるにする事もいとわなかったし、イチカとキスをするほど性に対しては奔放で、他人に嫉妬して成功を妨害しようするほど自分がかわいいのに、あんなに綺麗な死に方をするでしょうか?もっと柔軟性をもって泥臭く生きていけそうな子だと思いましたが。

終盤からエンディングにかけての凪沙に対する身内の不理解さや身体の悪化もそうだし、イチカの成功を際立たせるために他の事象を悲運に描きすぎてわざとらしさやあざとさを感じました。

脚本の稚拙さを特に感じたのは母親3名(イチカの実母、リンの母、ナギサの母)で、露骨な不理解さや失礼な態度がほんと漫画的というか、この作品の薄っぺらさを象徴する存在であったと思います。

無名