「ジョーカーに通じる暗さ」ミッドナイトスワン ヨッシーさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョーカーに通じる暗さ
ミッドナイトスワンを見るのを少し躊躇していた。
評判の良さは耳にしていたもののポスターや予告からジョーカーのような暗さを感じたからである。
なので見るのがかなり怖かった。(もちろんどういった話かという大体のあらすじは知っていたが)
冒頭からかなり暗い。
新宿という繁華街の裏で生きている主人公。
ゴッサムシティの裏でピエロとして生きているジョーカーと少し重なる。
勿論、話はスリラー映画では無いし監督もそんなところを意識してはいないのだろうが。
主人公はトランスジェンダー。あそこもまだついているが心は女性でショーパブで働いている。
とある事情で親戚の娘一果を預かることになる。
やがて一果はバレエと出会い、その才能を開花させていくのだが、この作品で注目したのが対比である。
一果とりん。
そして、凪咲と早織
一果とりんから見ていこう。
二人はバレエを通じて交流を深めていくが、一果のバレエ人生が上り坂であるならりんのバレエ人生は下り坂である。
お金もなく、人とコミュニケーションをとることが困難な人見知りの少女がバレエを通して世界へと羽ばたいていくのに対し
りんは、裕福で幼い頃からバレエを習ってきたが怪我が原因でバレエをすることが出来なくなり、最後は悲劇的な結末を迎える。
次に凪咲と早織。
この2人のテーマ?は母親の愛
早織は血の繋がってる母親
凪咲は血の繋がってない母親
そして、早織は最初どうしようもなく未熟だった母親だったが更生し、バレエのコンテストで一果が緊張で動けなくなってしまった時に舞台に上がって抱きしめたりとしっかりと一果の心の拠り所になっていく。
対して凪咲は実の母よりも深い愛情を注ぎ一果との関係を深めていくがバレエコンテストでの早織と一果を見て身体も本当の母親になろうと手術を受けてしまう。そしてあの最期が待っているのである。
このような二つの対比がとても興味深く、バレエの美しさもあって叙情的でありながらずっしりと心に響いた。