「翼揚」ミッドナイトスワン ryo_maさんの映画レビュー(感想・評価)
翼揚
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性別に対する問題に関心が高まっている現代に投下されたトランスジェンダーの人物を描く映画。素晴らしかったです。胸が痛みました。
現代の日本で取り上げられる問題をうまく物語の中に溶かし込んで、一つの問題に焦点を当てながらも、幾つもの物語に派生させていく展開が非常に面白かったです。物語も無駄のないキレイな124分で非常に見やすく、草彅くんが女性にしか見えなかったです。男性なのに女性にしか見えず圧倒的な演技力を見させていただきました。服部さんも初出演作品ながら孤独な少女を見事に演じきっていました。彼女が楽しい事を見つけて笑うたびに自分もホッとした気持ちになりました。
個人的に気になったのは凛の存在です。物語のキーパーソンだとは思うのですが、突然のキスだったり、ステップを踏みながら軽快に屋上から飛び降りて自殺という急展開に呆気を取られました。バレエのできない苦しさがあったとは思いますが、やはり生きないとなにかを成すことはできないと考えているのでこのシーンは不満でした。「生きていれば」などの言葉は無責任だとは思いますが、やはり物語の中だとしても生きていてほしいと自分は考えています。
ラストシーンで静かに死にゆく凪沙を見て心が痛みました。血の繋がりはないけれど、母親の気持ちを授けてくれた一果の美しい姿を見て息を絶やす彼女の姿はこの映画の全てを持っていきました。ただその後一果がなぜ海に入っていくかはイマイチ分かりませんでした。
全てを見終わった後でも放心状態でした。性問題を描いてきた作品はかなり見てきましたが、その中でもダントツの衝撃作でした。キャスト・製作陣の皆様お疲れ様でした。美しい作品です。
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