「草彅剛、特に後半は凪沙という役が憑依して完全に凪沙としか思えない。見事。映画の内容にはやや既視感があるが、草彅剛の名演とあの新人の女の子の存在感で心に残る映画となった。演出もなかなかよろし。」ミッドナイトスワン もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
草彅剛、特に後半は凪沙という役が憑依して完全に凪沙としか思えない。見事。映画の内容にはやや既視感があるが、草彅剛の名演とあの新人の女の子の存在感で心に残る映画となった。演出もなかなかよろし。
①元SMAPメンバーの中では一番影が薄そうで、でも実は一番色んなことが出来そうなのは草彅剛じゃないか、と思っていたのが当たりました。『まく子』『台風家族』、そして本作と全く違う役なのにどれも違和感がない。何をやっても木村拓哉な木村拓哉とはホントに違う(まあ、それはそれでスターの資質ではあるんですけど。木村拓哉キライなのでファンの人、お許しを)。②海外ではLGBTQ+の役をLGBTQ+でない役者が演じることはいまやご法度みたいになってきているが、日本はまだその土壌ができていないのでシスジェンダーの役者がLGBT+の役をやるのは仕方がない。マイノリティーの人達が抱えているものを描ききれているとはまだ思えないけれども草彅剛というスターが演じることで一歩前に進んだようには感じる。③マイノリティーの人たちと心に傷を抱える人たちとが疑似家族又は家族以上の絆で結ばれるという話は今までも結構作られているので新味は少ないが、草彅剛の名演(特に目の演技がよろしい)とあの新人の女の子の存在感で心に残る映画となった。④助演では、水川あさみは悪くはないが広島弁が板に付いていないので聞き苦しい。佐藤江梨子の成り上がりビッチぶりはなかなかよろしい。根岸季衣は1シーンだけの登場ながら、息子が女の体になっているのを見てヒステリーを起こして地団駄踏むところが実にリアル。さすが。田口トモロヲのママもなかなかよろし。バレエの先生もただ者ではないと思ったけど宝塚の人だったのね。納得。⑤LHBTQ+の問題もテーマの一つだけれども、お金さえ与えておけばよいというりんの佐藤江梨子演じる母親も「あんたのためにこんなことしてるんやないか!」と恩を押し売りする水川あさみの母親もよく似たもの。愛し方が分からず知らずに子供を苦しめる母親像も同じ様に重いテーマだ。⑥ラストのバレエの決めシーンは『愛と喝采の日々』や『ブラックスワン』のバレエシーンに劣らないと言ってしまおう。⑦考えてみれば凪沙が死んだのかどうか映画では明確に描いていないんだよね。そういう曖昧な幕のひきかたも余韻があって宜し。