「【”何故、私だけが・・”と言う思いを抱えて生きている二人の”女性”が出会い、関係性を深めていく美しくも切ない物語。】」ミッドナイトスワン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”何故、私だけが・・”と言う思いを抱えて生きている二人の”女性”が出会い、関係性を深めていく美しくも切ない物語。】
ー性同一障害に幼き頃から悩みながら生きてきた凪沙(草彅剛)と、酒浸りの母親(水川あさみ)のネグレクトの環境下、必死に生きてきた少女一果(服部樹咲)がある理由から一緒に暮らし始める所から物語は始まる。
◆このレビューでは、凪沙を”彼女”と表現します。-
■印象的なシーン
・”新宿駅東口”の近くで、初めて会った凪沙と一果のそっけない遣り取り。そして、その状態は凪沙が一果を家に連れて行く時も、家についてからも続く・・。
”あたしは子供が嫌いなの・・”
”風呂はあたしがいない間に使う事”
”部屋を綺麗にしておきなさい・・”
一言も発せず聞き流す一果の姿。
ー 二人とも、辛い生き方を続けてきたため、気持ちが荒んでいることが分かる。が、凪沙はストレスが限界を超えると自分の腕を噛む一果の姿を見て、そして一果は酒に酔い”何で私だけが・・”と涙を流す凪沙の姿を見て、お互いの境遇を知り、徐々に距離を縮めて行く過程が自然に描かれる。とても、印象的な序盤で作品への期待が膨らむ・・。-
・東広島から越して来た一果は、学校に東京の学校に転入するが、中々馴染めない。ある日、ふと覗いたバレー教室で踊る少女の姿をこっそり見つめる一果。その少女りん(上野鈴華)は有名なバレリーナの子供で裕福な家庭で育っていたが、いつの間にか仲良くなる。
ーその理由は、りんの家庭が裕福ではあるが、父親に二人の愛人がいたり、その反動で母親がりんに過度にバレリーナとして大成することを期待するという歪んだ家庭にある事が、上手く語られるし、二人がバレー教室の費用を稼ぐために”アルバイト”を行う理由も良くわかる。
そして、屋上での二人の唇が触れ合うかどうかの震えるキスシーン。心寂しき二人の少女の姿が良く表れているシーンである。-
・一果の想いを知った凪沙が彼女のバレリーナとして体力をつけるために作った”ハニージンジャーソテー”を美味しそうに食べる一果の姿。
”野菜も食べなさい”
”いただきますは?”
ー実の母親にしっかりと育てられてこなかった一果を、実の母以上の愛情を込めて一果の想いを叶えようとする凪沙の姿が、心に沁みる・・。彼女には、矢張り強い”母性”があるのだ・・。-
・一果のバレリーナの素質を見抜いたバレー教室の先生(真飛聖)は一果を期待を込めて厳しく指導する・・。一方、りんにはある足の不具合が見つかり・・。
ーそれでも、りんは一果を応援し彼女に自分の果たせなかった夢を託しながら、自らも愚かしき両親の前で”新たな世界”へ飛翔する・・。実に、実に切ない・・。ー
・大舞台で結果を出せない一果の前に”改心した”母親(水川あさみ:他の作品でも出演されているが、良い女優さんである・・。何か大きな転機があったのだろう・・。)が現れ、一果を観衆の前で強く抱きしめる。その姿を見て凪沙はある重大な決意をする・・。
ータイは性転換手術の先進国であるが、衛生状態は大丈夫だったのだろうか・・-
・高校を卒業した一果は凪沙と再び暮らし始めるが、凪沙の手術が上手く行かなかった事が描かれる。そして、凪沙は一果に海に連れて行ってくれと頼む。
ーこの一番大切なラストに向かう辺りから、物語の進行がやや粗くなってしまう・・。実に勿体ない・・。-
<草彅さんの演技は勿論凄いのだが、りんを演じた上野鈴華さんと、何と言っても一果を演じた服部樹咲さんの姿には、驚いた。本当に新人さんなんですか? 新たな素晴らしき若手女優誕生ではないだろうか?
物語としては、序盤から中盤はとても良かったが、終盤がやや勿体ないなあ、と思った作品。
けれど、心の傷ついていた三人の女性たちの”魂の再生”の物語としては、秀逸な作品である。>
今晩は
どのような作品でも、客電が灯るまでは”絶対に”席を立たないNOBUです。
”久々にエンドロールでいい余韻に浸れました。” 同感でした。殆どお客さんが居ない金曜日の夜のレイトショーで、余韻に浸れる僥倖感は一週間の疲れを癒すものであります。
”余韻に浸れない映画の場合は寝てます。” ”・・・。”
では、又。
NOBUさんへ。
空いてる時間を選んだのに、まぁまぁの観客数。
しかも元スマップファンと思われる女性たちばかりで埋め尽くされて、男は俺一人でした・・・
いやはや、それでも良かったです♪