「いろんな事を連想させながらも煙に巻く、モノクロの映像が濃霧の様にまとわりつく作品です。」ライトハウス 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
いろんな事を連想させながらも煙に巻く、モノクロの映像が濃霧の様にまとわりつく作品です。
ポスタービジュアルで俄然興味が沸いた作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと…すんごく変。
いや〜久々に観たな〜頭がおかしい感じの作品w
でも、物凄く後味の残る様に余韻があるんですよね。
モノクロのポスタービジュアルから昨年公開された「異端の鳥」や「サタンタンゴ」を連想させ、どんな変な感じかにワクワクw
「ウィッチ」のロバート・エガース監督に「TENET」のロバート・パティンソンと「スパイダーマン」のグリーン・ゴブリン役のウィレム・デフォー。
この二人が実話をベースにした外界と遮断された孤島の灯台守を舞台とするある意味密室劇的なストーリーにモノクロの映像。
制作会社は「攻める」事で目が離せない「A24」で日本の配給担当は良い意味で節操のない感じのトランスフォーマーw
鑑賞した有楽町の「TOHOシネマズ シャンテ」は満員。
シャンテって、なんとなくシャレオツで芸術的なイメージがある劇場なんですが、ラインナップはこういうちょっと変な作品を上映するんですよね。「異端の鳥」もシャンテで観たしw
もうこれだけで怪しい感じがプンプンw 舞台が整って、役者が揃ったって感じがしますw
4週間に渡って、灯台と孤島の管理を任された2人。
ベテラン灯台守で傲慢なトーマス・ウェイクと無口な新人灯台守のイーフレム・ウィンズロウ。
最初からお互いに反りが合わず、細かな衝突を繰り返し、徐々に関係も悪化していく。
そんな中、大嵐のせいで2人は島で孤立状態になってしまい、島を取り巻く環境も二人の関係も不穏な空気が急速に濃くなっていく…と言うのが大まかなあらすじ。
もう、最初の所から怪しい雰囲気がプンプンw
登場人物の二人の人相も怪しければ、環境の不協和音も怪しいw
やたら鳴り響く霧笛に灯台の機械音とかもめの泣き声。
普通に静かに眠るなんて到底無理な環境。
それに重労働な仕事ばかりを押し付けてくるトーマスにコミュニケーションを取ろうとしないウィンズロウ。どう考えてもこの二人の組み合わせって無理じゃね?って感じで明かに配置ミスw
同じ灯台守をテーマにした作品「喜びも悲しみも幾歳月」みたいにはならんわなw
とにかく話が進むにつれ、全体的に暗く重く、不快な違和感と嫌悪感が漂っていくんですが、途中からそれが真実なのか、幻想なのかが分からなくなる。
この辺りは多分明らかにならないので、観る側の判断に委ねると言う事なんだろうけど、A24はこの手が好きだなあ〜と思ってしまうw
また、ギリシャ神話をプロメテウスの件を元にしているらしいんですが、こういったのもホントA24っぽい。
だけど、なんと言ってもあの、悪臭感が漂う様な二人のやり取りの真実が何処にあるかがキモだと思うんですよね。
劇中のセリフでも幻想や空想の中の様なのが多分にあって、観る側は疑心暗鬼に陥ってしまう。
いろんな考察・解釈がされるけど、ウィンズロウが「本当の名前はトーマス・ハワードで、本物のウィンズロウは既に不慮の事故で亡くなっている」と打ち明けるシーンがあったけど、あれが本当にキモ。
本当にトーマスはトーマスなんだろうか? ウィンズロウはウィンズロウなのか?
もしくはウィンズロウがトーマスでトーマスがウィンズロウ?
でも、これに必要以上に食いついてしまうと振り回されてしまう。
他にも様々な幻想や衒学的な映像描写もあり、モノクロの映像が怪しさを醸し出しながら、朝なのか夜なのか? 朝焼けなのか夕暮れなのかが分からなくなり、観る側に芸術性を醸し出しながらも何処か彼岸の地へいつの間にか誘われた様な錯覚を出させる。
この辺りの真実は濃霧の様にまとわりついて、奥深く隠された感じ。
この作品の面白いところは、そんな妖しくも幻想的でありながら、二人が酒を飲むと途端にバカになる所。そのバカさ加減は酔っ払いの極み。
本当は酒でなく、何か薬をやっているのでは?と思ってしまうぐらいのドランカーならぬジャンキー状態w
この酔っ払ったシーンで「サタンタンゴ」の酔っ払ってパンを頭の上に乗っけるシーンを思い出しましたw
作品的には幻想かつ文学的でやたらめったらと小難しくした感じがしますが、この作品をやたらと気持ち悪く感じる事も、全てを意味あり気に落としこむ事も何処か製作サイドの暗黒面に落とされた感じがしますw
ただ、様々な所でヒントと言うか、伏線的な描写が散りばめられていて、意味ありげな感じで実は超重要だったり。
でも、全てを目を凝らして意味を見出そうとするととても疲れる。
この辺りもサタンタンゴで評論家が「超長いけど無駄なシーンは1秒もない」的な事を言ってたりしてますが、個人的にはとてもそう思えない。
7時間18分の作品に1つも無駄が無いと言うのは明らかに製作サイドの暗黒面に取り込まれてますわw
話がサタンタンゴにソレましたがw、この作品もセリフと描写的にリンクしながらも少しだけ手招きするのが上手いんですよね。
また様々な部分でモノクロ映像の良さをふんだんかつ、うまく使われており、また情緒不安定感を醸し出している。
クライマックスの狂乱からラストの後味の悪さも素敵w
劇中でトーマスが「謎めいて見えるように無口を貫いているが、お前に謎なんてない」と言うセリフはこの作品の本質を突きながら、観る側を巧みにスカす様にも感じます。
文学的に語れそうでそうではない。
また、スリラーとカテゴリーされてますが、一概にスリラーとも言い難い。
いろんな事で観る側を煙に巻く感じで、ここまで考察と後味が残って、気持ち悪さが残るのも珍しい作品。
ロバート・パティンソンは2021年公開のDCコミックスの新作「ザ・バットマン」のブルース・ウェインが決定しているとか。
間接的にDCコミックス=バットマンとマーベルコミック=スパイダーマンがリンクしているのも面白い。
面白い・面白くないで言えば、多分に面白くない寄りw
観る人を選ぶ作品ですが観た後に語れる作品。
とにもかくにも観ない事に分からない怪しさを秘めている作品で変な作品好きでグロいのにも大丈夫な方にはよろしければ是非是非な作品ですw
今晩は
レビュー、拝読させて頂きました。観賞された印象が私と似ていらっしゃると思いまして。私は徐々に狂気に駆られて行く二人の姿(仰る様に、クスリを服用しているかの様な酒を呑むシーン。)が、印象的でした。あのラストも。これからも宜しくお願いいたします。