「2人は別人格、当たり前ですが」花束みたいな恋をした マツドンさんの映画レビュー(感想・評価)
2人は別人格、当たり前ですが
イヤホンのLとRを、恋人2人で片方ずつ聞くのは別の音楽を聴くのと同じ。同じ時、同じものを2人で体験しているつもりでも、2人は別の体験をしている。だから、2人のモノローグの内容のずれが、2人の物語を紡いでいく。
でも、こういう物語を書くには、2人の人格をきちんと描き分け、生きた人物像を作る必要があるのだと思う。だから、脚本の書き手はかなりの手練れでなければ、破綻してしまうのでは、多分。なるほど、東京ラブストーリーの脚本家さんなら納得(見ていないのですが)。でも、繊細で文学的な言語表現、腹を決めた強い女性の描き方。見ている間は女性の筆とばかり思っていました。50越えの男性であれば、こうした作品が書ける人がいるんだ、と感心です。いや、年齢ではなく人なのかな。
恋人と夫婦、違いは何?と、未婚の友人に聞かれたことがあります。「妥協の数と程度」だと答えました。恋人のずれは別れの結末につながるけど、夫婦のずれはどれだけ積み重なっても、それを越えて生活を作っていくしかない。もちろん、離婚という選択肢もあるけれど、2人の生活を継続していくということは、相手を受け入れ続けるということ。長い時間の共有でしか、見えてこないものもある。
でも、LとRで同じ音楽を共有している、と錯覚していた時代にか見えていなかった景色もある。そんな甘酸っぱさに、懐かしく、いとおしく、こころが揺り動かられてしまいした。年甲斐もなく、です。
コメントする