「やっぱりそうだよなと思ってしまう」花束みたいな恋をした はなさんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりそうだよなと思ってしまう
知人に勧められて今更ながら鑑賞。
出会ってから偶然に偶然が重なり、二人は付き合った。
こんな風に好きなものが悉く同じなことなんて現実にはないだろうなと思ってしまう
一部は現実と比較して、一部はこんな風になりたかったな、と願望をのせて観ていた
付き合い初めは写真に映えるようなキラキラとした瞬間の連続
楽しかった思い出がフィルムのようにどんどんと残されていく
二人が好きなものを一つずつ持ち寄って、花の束を作っていくように二人の世界ができて、二人の生活が続いていく
二人は二人の生活を続けるために、人生の分岐点で選択をした
絹は趣味を楽しみながら、自分ができることで暮らしていくこと、
麦は生活のためにお金を稼ぎ、責任を持ち、社会に同調して生きること、
をそれぞれに選んだように見えた
当然のことだが、学生から社会に出ることで生活は一変し、ずれが生まれた
二人の生活を楽しむ時間と体力、仕事にかかる責任、スケジュールの調整、所属するコミュニティの違い、これらの差にぶつかり合うことは必然であり、映画の中の二人もそうだった
わかっていた展開だが、なんとはなくこうなってほしくなかった
作品中は実名、作品名がかなり登場する
"素敵な二人の物語"ではなく
きっと"どこにでもいる、誰かの物語"
でもあるのかというくらいリアリティに富んでいた
数年一緒にいることでマンネリズムも避けては通れない
家族のようになれることに良い面と悪い面があり、麦はそれを肯定的に捉え結婚という選択肢を提示したが、絹はそうではなかった
この作品は、綺麗な思い出の描写の方が多い。
すれ違い、何度も何度も耐え忍び、別れる決断に至るまで
どれほどの葛藤と悩みがあったかは計り知れず
それらを想像することで胸が苦しくなった
男女の考え方の違い、現代の恋愛観もよく表されていて、同じような世代を過ごした自分にとってはかなり共感できる部分があった
最後のファミレスのシーンでは、絹の主張が少ない。
前のシーンまでのセリフで心情を考えるしかなかった。
あの頃は良かったなぁ、は誰でも思うことであり、もう少し言葉を聞きたかった、
物語の中で何を思っているか、よりも
何を伝えたかを見たかった