劇場公開日 2020年9月11日

「アニメーション映画の新たな形を模索している作品。沖縄の温かく優しく包み込むような空気感も表現できています。」海辺のエトランゼ 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アニメーション映画の新たな形を模索している作品。沖縄の温かく優しく包み込むような空気感も表現できています。

2020年9月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

「おっさんずラブ」という作品が社会現象的な大ヒットしたことによって「BL作品」が一つのジャンルとして確立しつつあるように思えます。
時代の変化と共に世の中の目も変わっていることを意味していて、私はこの流れはとても良い傾向だと思っています。
ただ、まだマーケットが読めない面があるため公開規模を小規模公開と増やせない一方で、映画として作品のクオリティーは上げなければならない、という狭間で制作者の苦悩も感じられます。
そんな中で出された答えの一つが本作のように1時間という上映時間で、最大限作品のクオリティーを上げて勝負する、という試みだと思います。
本作ではその試みは成功していて、作画のクオリティーも高く、沖縄を舞台に、ちょっと切ない「小説家の卵と少年の初々しい恋愛」を丁寧にしっかりと描けていました。
好きになった人がたまたま同性であっただけで、何ら特別なことではない恋愛映画でした。
むしろ通常の恋愛映画は当たり前のように増えすぎているので、このような変化球的な作品が出てきた方が映画業界も活性化していく気がします。
本作は原作コミックでは「春風のエトランゼ」という続編もあるようなので、本作がヒットして続編映画ができたらいいな、と思える作品でした。
「海辺のエトランゼ」は沖縄を舞台にしているだけあって、あの温かく優しく包み込むような時間と空気感も見事に表現されていて、本作はそこも見どころだと思います。

細野真宏