461個のおべんとう : 特集
日常の幸せが“再発見”できる、かけがえのない一作!
心に染みる親子の絆…ずっと見ていられる美味しい実話
幸せな気分に浸れる、“おいしい映画”ができました。高校に通い始めた息子のため、毎日のお弁当を作ることを決意した父親の姿を描く「461個のおべんとう」が、11月6日から全国公開されます。
「これは毎日のお弁当の話だ。それ以上でも、それ以下でもない」。そんな言葉で始まる物語は、特別な派手さはないけれど、だからこそかけがえのない“日常”の愛おしさを教えてくれます。
閉塞感に満ちた昨今、この映画を見れば、きっと日々の幸福を再発見できるはず。本特集では、映画の見どころや、映画監督たちからの本作へのコメント、さまざまな映画を見てきた映画.comスタッフのレビューを紹介します。
【邦画の良さ、再発見】実話から生まれた温かい物語
こんな時代だからこそ、見るべき感動作!
[映画を見る幸せ、再発見]シングルファーザーと思春期の息子 2人はある約束を交わす
物語の主役は、長年連れ添った妻との別れを決意したミュージシャン・鈴本一樹(井ノ原快彦)。15歳の息子・虹輝(道枝駿佑)は、母ではなく一樹と暮らすことを選んでくれたが、どこかギクシャクした関係で過ごしていた。
そんな折り、虹輝が高校受験に失敗。1年遅れて高校に進学したが、“中学時代の後輩たち”と同学年になってしまい、クラスではやや浮いた存在に……。一樹は息子に対し、「3年間毎日、お弁当を作る」と提案。虹輝も「3年間、休まず学校へ行くこと」を約束し、新たな日常が始まった。
しかし一樹の職業はミュージシャン。めちゃくちゃに不規則な生活だ。地方ライブのため早朝に出かける日も、徹夜で飲んだ翌日も、一樹は休む暇なくやってくる“弁当タイム”を時に喜びながら、時に悩みながらも、台所に向かっていく。そんな父の姿に、最初は「すぐに飽きるだろう」と冷ややかだった虹輝も、徐々にその態度を変えていく。
原作は、人気ヒップホップバンド「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美によるエッセイ「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」。渡辺が1人息子の高校生活のため、毎日お弁当を作り続けた実話を映画化しています。
監督を務めたのは、「キセキ あの日のソビト」「泣くな赤鬼」などを手掛け、人の感情の揺れを丁寧にすくい取ってきた兼重淳。お弁当でつながる父と子の絆が心を満たし、おいしそうな料理の数々を見るとお腹がすいてくる――。
息子は、お弁当によって学校でも居場所を見つけ、周囲との関係を改善しながら人としても成長していく。そして、父は息子の変化を感じつつ、忙しい生活のなかで“食”に向き合うことで、感謝とともに“自身が変わっていったこと”に気づく。お弁当という毎日のやり取りで、作っていたのは親子の絆だったのです。
新型コロナウイルスにより、先が見えない状況の今日このごろ。エンドロールが流れたとき、あなたは“お弁当がつないだ親子の絆”から、“当たり前だけどかけがえのない日常の幸福”を感じるはずです。
[芝居の素敵さ、再発見]初共演・井ノ原快彦×道枝駿佑! 豪華キャスト陣も全員イイ!
物語の輝きは、キャストの素敵さによって増幅されています。父・一樹に扮したのは、俳優やMCなどマルチに活躍する井ノ原快彦。「あさイチ」や「出没!アド街ック天国」などのテレビ番組で見せる余裕と安定感はそのままに、子どものようにはしゃぎまわる“自由奔放な父親像”をミックス。今までにない新たな魅力が見られて、鑑賞中、“俳優・井ノ原快彦”への評価や愛着度がぐんぐん上がっていき、一樹に感情移入していくのを感じました。
そして息子・虹輝役には、関西ジャニーズJr.の人気ユニット「なにわ男子」に所属する道枝駿佑を抜擢。真新しい弁当箱にはしゃぐ父親を見て、呆れたようなため息をつく……でも、口元にはどこか嬉しそうな笑みが浮かんでいて。映画出演は2本目ですが、それでも、とても繊細な芝居を軽々とやってのけるあたり、末恐ろしい俳優です。
井ノ原と道枝は初共演ですが、2人は息ピッタリ。まさに“本物の親子”にしか見えず、仲睦まじく会話したり、些細なことで関係がピリピリしたり、それでもともに生き、毎日の食卓を大事にしたり……「親子って、やっぱりいいなあ」と痛感させられます。
井ノ原は、道枝についてこう評しています。「最初の印象からそんなに変わっていないんだけど、変わらないって実はすごいと思うんです。多分ずっと一定なんだと思うんですよ、彼は。だからすごく信頼できて、親子っぽい気持ちになれましたね」。
一方、道枝は井ノ原についてこう語ります。「井ノ原さんは一緒にお芝居の動きを確認してくださるんです。僕が一人でやっていたらそこに来て、一緒に動きをやってくれて。それがすごく嬉しかったですね。監督に『虹輝のところをこんな感じで変えてみるのはどうですか』って提案されていたのが記憶に残ってます。すごいなって、背中で学びました」。どんな人に対しても変わらず気をつかい、コミュニケーションを取る姿勢に感銘を受けたようです。
そんな正反対とも取れる2人が生み出す化学反応が、本作の“温かな感動”を生み出しているのかもしれません。
さらに、共演陣もひたすら素敵。一樹のバンドメンバー役には、カリスマラッパーのKREVAと、お笑い芸人・DJのやついいちろう。あまり芝居のイメージが薄い面々ですが、これがどこまでも自然体で素晴らしいのなんの……!
井ノ原含む3人による、レコーディングスタジオでのやり取りは必見。実際は初対面に近い状態でしたが、物語の設定どおり“20周年を迎えたバンド”のような雰囲気が醸し出されています。
また、虹輝と仲良くなるクラスメイト役には、大ブレイク中の若手女優・森七菜と、蜷川幸雄の舞台作品をはじめドラマ・映画と幅広く活躍する実力派・若林時英。2人はドラマ「3年A組 今から皆さんは、人質です」でも共演していましたね。
バンドメンバー、学生メンバーはそれぞれ、台本にはないアドリブの応酬を繰り広げました。撮影現場を賑わせた、即興のやり取りは要注目です。
[音楽の心地よさ、再発見]耳が美味しい映画――すべての音に、想いが込もる
本作は親子の絆を描くヒューマンドラマであると同時に、ライブやレコーディングシーンもふんだんに盛り込まれた“音楽映画”でもあるんです。要所要所で、井ノ原が爽やかにギターボーカルを務め、KREVAが本領発揮とばかりにラップをぶちかますライブシーンが用意されていて、ググッとハートをつかまれます。
撮影の合間にいつも2人で口ずさんでいたという、エンディングシーンでの井ノ原と道枝のデュエット。2人が奏でるハーモニーが心地よく、歌にこもる親子の絆が随所に感じられます。
井ノ原は「この曲に出合えたことを幸せに思います。渡辺俊美さんとのレコーディングは楽しくも、緊張感があり、充実した時間でした。エンディングシーンは、道枝くんと親子の絆を感じられた瞬間です。ぜひ40代と10代の、切なくも温かい親子のハーモニーを堪能してください」と語っています。
すべての音が心地よく、料理することや会話することが愛おしくなる。耳でも「おいしい」と感じられて、ずっと見ていたいと思う。本作は、そんな映画なのです。
【レビュー】「日本版『シェフ』」(映画.com)
さらに…映画監督たちは“こう見た”!
この項目では、さまざまな映画を見てきた映画.com男性スタッフのレビューをご紹介。二児のパパさんであり、「普段、料理はしない」というこの男性は、本作をどのように見たのでしょうか。
■「本当に“お弁当を作るだけ”の映画」──だけど“そこ”から広がる感動が、とにかくイイんです
映画.com男性スタッフ:この映画のメインには、“お弁当を作ること”それ以上はいらない。なぜならば、この映画をよくよく見ると、良作と呼ぶにふさわしい要素が、幕の内弁当のように詰め込まれているからです。
音楽、音、空気感、そして主演の井ノ原や道枝、その周りを囲む役者たち……。最近、トリッキーなギミックや、凝りに凝った映像手法など、何かと詰め込みすぎの映画をたくさん見てきました。しかし本作を目の当たりにしたとき、スッと「いま、私たちが求めていた作品は、本作みたいに温かく、シンプルな映画だったのかも」と感じられたんです。
また本作を見ている間、ジョン・ファブローによる究極のハッピー映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」とよく似た“温かい気持ち”になれました。父親と息子が料理を通じて絆を深めていくドラマや、疾走感をともなった爽快な物語運び、悪人が1人も出てこないことなど、日本版「シェフ」と言っても過言ではないくらい共通点が多いです。
そして、痛感したのは「とにかくお弁当を作る全ての方、食べる方に推奨したい映画」ということです。描かれる“料理を通じた親子の絆”は、翻って自分と子どもとの関係性を考えさせてくれます。
特筆すべきは、料理シーンです。包丁が小松菜の束を切り、まな板に当たる「ズァクッ、トン」。スライサーがニンジンの皮を剥く「シャッ、サッ」。炊飯器のフタを開け、白米の香りを含んだ湯気が顔に当たる「パカッホワッ」。溶き卵がよく熱した卵焼き器に落ちる「ジュワ~ッ」。
私も主人公の一樹に影響されて、卵焼き専用のフライパンが猛烈に欲しくなりました。これを買って、私も毎日、子どものために卵焼きを作ってみようかな。
■映画監督やトップクリエイターたちは、どう感じた?
日々、トップレベルの映画製作の現場で生きる人々にも、本作は好評を博しています。「釣りバカ日誌」シリーズや「超高速!参勤交代」「空飛ぶタイヤ」の本木克英監督と、「婚前特急」「夫婦フーフー日記」の前田弘二監督、さらに人気ボーカルグループ「GReeeeN」のプロデューサー・JINが、コメントを寄せてくれました。
本木克英(映画監督)
「母のいない寂しさをお弁当で埋めていく父親と息子に、丁寧に優しく寄り添う演出に引き込まれた。井ノ原、道枝のリアルな造型も素晴らしい」
前田弘二(映画監督)
「息子のお弁当作りに奮闘する父のお話かと思いきや、お弁当を作ることが楽しくなり、どんなことも前向きに突っ走ってしまう愉快な父のお話でした。そんな井ノ原氏演じる父の人間力に、心温まります」
JIN(GReeeeNプロデューサー)
「お弁当って楽しい! 『心』にも栄養を与えてくれる気がします。お弁当と同じく、真心こもったこの映画がご覧になられた方の栄養になって行くでしょう! 是非!」
こんな時代だからこそ、見れば必ず“心に染みる”。必見の感動作です。