「晴れやかな空のすばらしき世界は全然よくない」すばらしき世界 abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)
晴れやかな空のすばらしき世界は全然よくない
笑いとシリアスな部分の緩急が絶妙でした。
社会福祉的な支援は存在しているはずなのに、そこからこぼれ落ちてしまう様子が見事に描かれていてすごい。また誰しもが、自分のできる範囲でやっているにも関わらず摩擦が生じたりするのがとても悲しいが、現実なのである。みんな社会システムに組み込まれて、疎外されてしまうのである。
あと思ったのが、ちゃんと三上を映画的に殺すこと。元妻と“デート”の約束を交わすシーンで終わってもいいと思った。だが、嵐が吹いて洗濯物を急いでしまうがために持病が重症化して亡くなるまで描く、つまり三上の社会復帰を絶やすことと支援の届かなさをちゃんとみせるのは映画として素晴らしいと思った。
嵐が起こるからコスモスなどの花を気遣う人がいる。誰の責任でもない嵐の中、些細な出来事で死ぬ人がいる。そんな人々を蔑み、笑い、いなかったことにする人また気づいても支援が届かなかった人は生きる。映像として消費する人は快適に生活する。そんな晴れやかな空のすばらしき世界に私たちがいることを暗示しているように思えてならない。
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