「偽善者がいない世界」すばらしき世界 Kさんの映画レビュー(感想・評価)
偽善者がいない世界
ポスターに描かれているコスモスのように監督自身の優しさが映像の隅々に満ちているように感じた。現実の厳しさをリアルに描きつつも、酷さを煽るようなことはせず、きれいごとで済ませることもなく、ほんの少しの人の温かさを丁寧に掬い取って描いている。登場人物には偽善者がいないし、主人公を全否定する人もいない。それをすばらしい世界と呼ぶのだと思う。
主人公は堅気になると誓い、世知辛さや屈辱にも耐えようとしているが、喧嘩の仲裁などの場面で昔の癖が発露して生き生きとすることがあり、そのような様子を見ていると、その人のこれまでの人生を全否定してその人らしさを奪うことが更生ではないと感じた。その人らしさを残しながら世間の感覚と乖離しないようにコントロールするのが本当の社会復帰なのだろう。
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